こんにちは。俣野成敏(またのなるとし)です。

 

「上司が嫌いだ」という人は結構います。私もご多分に洩れず、サラリーマン時代は嫌いな上司が何人かいました。

 これに対して、「他人を悪く言ってはいけない」とか、「上司だって人の子なんだし、家族だっているんだから」と自分に言い聞かせたところで、効果は限定的なものにとどまるでしょう。

 相手が嫌いだと思えば、当然、関係も険悪になります。そうなった後でクヨクヨしたり、落ち込んだりするのを、性懲りもなく繰り返しているのが人間です。

 

 思うに、上司と仲が悪くなってしまう一因は、お互いをライバル視しているからではないでしょうか。「あんな上司」「オレのほうが仕事ができる」…といったように、です。

 私が、ビジネスパーソン向けのセミナーを開催すると、メンタルコントロールについての質問を受けることが、しばしばあります。

 そもそも、感情とは理性よりも先に芽生えた心の動きですから、それを理性で抑え込もうなど、土台無理な話です。

 試しにインターネットを検索してみると、「怒りをコントロールする方法」という見出しがズラッと表示されます。それだけ悩んでいる人が多い、ということなのでしょう。

 

 そこで、私がオススメするのは「上司をライバルと見なすのではなく、仲間と見なす」方法です。相手を「自分の獲物を横取りしようとする敵」だと見なすのではなく、「上司は自分のリソース(資産)」だと思えば、そもそも敵ではないわけですから、腹を立てることもなくなります。

 ここで言うリソースとは、「切り札」とか「奥の手」といった意味になりますが、具体的に言うと、上司の権限のことです。自分が言っても聞いてもらえないような意見でも、上司から話してもらうことで、通る場合があります。

 上司を上手く使うことで、自分の希望が叶いやすくなることがあるのです。

 

 事例をお話ししましょう。私はサラリーマンの時に、社内ベンチャー制度に応募し、採用されて時計のアウトレット流通を社内創業しました。

 もちろん、事業が最初から上手くいくわけはありませんでしたが、私はそんなことはおくびにも出しませんでした。親会社である本社には、良い情報だけを流して、上手くいっていないことに関しては、口にしませんでした。

 本社からは毎月、月次決算の数字を求められます。私は、会社に求められていないことでも積極的に発信し、さらにメールのCC機能を使い、かつての上司を含めて、関係者と思われる人全員に対して状況を報告していました。

 すると、「俣野の事業は上手くいっているらしいぞ」と社内で噂になるに従い、「おい俣野。あの役員が小売について知っていて、手伝ってもいいと言ってくれているぞ」といった、耳寄りな情報を教えてくれるようになったのです。

 

 ビジネスの市場は一見、広いように見えますが、実際は人間関係で成り立っています。「こんな上司、離れれば関係ない」と思っても、いつまたどこで一緒に仕事をすることにならないとも限りません。

 上司も、自分にとっては大事な人脈だということです。

 

 もともと、怒りの感情とは瞬間的に湧き上がりますから、気づいた時にはすでに遅いのが普通です。たとえ事前に気づけたとしても、感情を抑えつけることが良いことだとも思えません。

 それよりは、見方を変えるほうが精神的にも良いのではないでしょうか。

「上司の力を借りることで、何ができるか?」「どうすれば、味方になってもらえるのか?」を、ぜひ一度、考えてみていただければと思います。


 

 ありがとうございました。


 

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