こんにちは。俣野成敏(またのなるとし)です。

 

 人は誰しも、「自分の思うままに行動できたら、どんなにいいか」と思うものです。とはいえ、人間が社会性の動物である以上、そうもいかないのが現実でしょう。特に仕事は、相手があっての話です。

 組織で動いていれば、そこには必ず軋轢が生まれます。けれど、それを避けようとすることは、繁栄につながるどころか、逆に衰退を招いてしまうことすらあるのです。

 

 何年か前に、ベストセラーになった『ドキュメント パナソニック人事抗争史』という本があります。日本を代表する電機メーカー・パナソニックが業績不振に陥った原因を考察したドキュメントです。

 かつて、商売の神様と呼ばれた松下幸之助氏は、一代で松下電器を世界的な企業にまで育てあげた方でした。

 

 書籍には、幸之助氏が、娘婿の松下正治(まさはる)氏には社長の器がないと感じながらも、家族への気兼ねから、二代目社長に指名した、とあります。

 同社の三代目社長である山下俊彦氏を推したのは、二代目の正治氏です。山下氏は、末席の取締役から22人抜きで社長に大抜擢されました。

 もともと幸之助氏には、他に意中の人がいたようですが、正治氏に押し切られた格好になりました。

 

 山下氏は、正治氏の期待に応えて、幸之助氏の頃からの古参社員を次々と退任させていきます。それは、社内の若返りを図るためでした。当然、幸之助氏は面白くありませんが、どうしようもありません。

 古参社員が去り、正治氏が社内で伸び伸びとできるようになったのもつかの間、山下氏はさらに社内改革のスピードを早めるために、「会長の正治氏は常務会に参加しなくてよい」とします。

 この一件に疎外感を覚えた正治氏は、鬱屈した思いを抱え、後に引退勧告を受けた際に、激しい復讐心を燃え上がらせることにつながったのだそうです。

 

 このような感じで、社内では熾烈な権力闘争が繰り広げられるのですが、これをもっとマクロ的な目線から見てみると、要は生存競争をしているわけです。

 お互いが生存を賭けて争っているところへ、一方の数が急激に減らされようものなら、減らされた方は、必死になって巻き返しを図るのは当然でしょう。

 

 たとえ競争相手がすべていなくなったとしても、それで生き残れるとは限りません。なぜなら、会社の生存を決めるのは自分たちではなく、市場だからです。

 社内で争いごとが起きれば、当然、その分だけ本業への力が削がれます。方向性の定まらなくなったパナソニックは、見る間に凋落していきました。

 

 ここから、私たちが学べることとは何でしょうか。

 私がサラリーマン時代に意識していたのは、「誰も反対しようのない提案をする」ことです。

 自分たちにだけメリットのある提案では、必ず他部署からの反対を受けます。そうなってしまえば、お互い自説に固執することとなり、どっちの案が通ってもシコリが残ることになるでしょう。

 ですから、全員賛成とまではいかなくても、少なくとも関係者から強硬な反対が出なくなるまで、自説を磨き上げることが大切です。

 

 もう1つは、「自分が苦手としている人を排除しない」ということです。

 どんなマネジャーでも、「馬が合わない」「意見してくる」「扱いにくい」といった理由で、苦手とする部下はいるものです。そういう人を遠ざけようとするのではなく、逆に近くに置くことをオススメします。

 そうすることで、自分のマネジメントの質の向上につながります。「どうしたら相手が動いてくれるか?」と試行錯誤する環境に身を置くことによって、自分の能力の幅が広がるのです。


 

ありがとうございました。


 

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