こんにちは。俣野成敏(またのなるとし)です。

 

サラリーマンの方にとって、上司との関係は、毎日、顔を付き合わせる間柄だけに、やはり気になるところでしょう。中には、「自分の人事権を握られている」と考えるだけで、緊張してしまう人もいるかもしれません。

 

その昔、人間が集団で狩りをしていた頃、威嚇や怒りを表現することは、集団内のルールを徹底させる上で不可欠の要素だったと言います(『人は感情によって進化した 人類を生き残らせた心の仕組み』石川幹人著、2013年、ディスカヴァー携書)。

 

とはいえ、これだけ社会が発達し、法律なども整っている今の世の中では、怒りの感情はかえって邪魔だという意見もあります。ところで、交渉の場で威嚇や怒りの表現を上手く使いこなしていたとされるのがアップルの創業者、スティーブ・ジョブズ氏です。しかし結局、それが元で自分が創業した会社から追い出されるという、屈辱を味わうハメにもなりましたが。

 

野に下ったジョブズ氏は1985年、コンピューター会社のNeXT(ネクスト)社を設立。翌年、CGアニメーション会社のPixar(ピクサー)を設立します。このピクサー社の前身となったのは、映画『スター・ウォーズ』シリーズで名高い映画監督、ジョージ・ルーカス氏の映画制作会社・ルーカスフィルムの中で生まれたCG技術でした。ところが、ルーカス氏が離婚することになり、その慰謝料を捻出するために、コンピューター部門が売りに出されます。それを買収したのがジョブズ氏でした。

 

当時、CG部門の責任者として働いていたエド・キャットムル氏は、思いがけずジョブズ氏と一緒に働くことになります。ジョブズ氏は人との接し方において、会議などでよく「こんなチャートは当てにならない!」とか「クソみたいな取引だ!」などと、最初に相手を逆なでするような発言をして、相手の出方を伺います。そこで反論する勇気のある者は、一目置かれることになりました(『ピクサー流 創造するちから』エド・キャットムル著、2014年、ダイヤモンド社)。

 

特に若い頃は、素行の悪いことで有名なジョブズ氏でしたが、誰も買い手のいなかったピクサーの価値を理解し、庇護者のようになって、ルーカスフィルムから分離独立させるために尽力します。同社は後に、世界初の長編フルCGアニメ映画『トイ・ストーリー』をヒットさせ、アカデミー賞を獲得したのは、ご存じの通りです。

 

さて。世の中には多くのパワハラ上司がいますが、彼らがそうした行動を取るのはほとんどの場合、個人攻撃というよりは習慣です。つまり必ずしも「相手があなただからやっている」ということではない、ということです。ジョブズ氏のように、それを人心コントロール術として行なっている人もいれば、ただ単に惰性で続けている人もいるでしょう。いずれにせよ、相手はほとんど無意識にやっていることですから、それに過敏に反応しても仕方がないということです。

 

それでは、運悪くそうしたパワハラ上司に当たってしまった人は、どのように対処したらいいのかというと、なるべく早くその上司から離れることができるように行動することです。つまり仕事で頑張って成果を出すことです。

 

中には「自分の出した成果が、パワハラ上司の成績になるのはイヤだ」という人がいますが、それで上司が出世して自分の目の前からいなくなってくれるのであれば、こんな良いことはないのではないでしょうか。もしくは、それを見た別の部署の上司が、自分を引き抜いてくれるかもしれません。

 

結局のところ、お互い第一目的として、生計のために仕事をしているわけですから、上手くやろうと考える必要はありません。とにかく1日も早く離れられるよう、努力してみてください。


 

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ありがとうございました。