こんにちは。俣野成敏(またのなるとし)です。

 

毎日、会社で仕事をしていると、何かしらジャマが入って、「思った通りに仕事が進まない」とか、「やりたいことができない」ということが多いのではないでしょうか。そこで本日は、以前、私のセミナーを受講された方から寄せられた質問を、ここであなたと共有しようと思います。それは、以下のような内容です。

 

「私はある中小企業で、契約書をチェックしている仕事をしています。毎朝、『今日はこれとこれをやろう』と決め、それに沿って仕事を進めていますが、たいてい電話がかかってきて、『こっちの仕事を先にやってくれませんか?』と催促されます。言われるままにやると、どれも中途半端になってしまい、自分でも何をしているのかがわからなくなる時があります。頭では『選択と集中が大事だ』とわかっているのですが、それが許されない状況です」

 

おそらく、この方と似たような状況に置かれている人は多いでしょう。昨今のサラリーマンは、マルチタスクを求められがちです。反面、中小企業であればあるほど、選択と集中が他社との差別化になるのも事実でしょう。世界的な経営学者のP・F・ドラッカー博士は、その著書『マネジメント』の中で、このように書いています。

 

「集中の決定は基本中の基本ともいうべき重大な意思決定である。集中の決定があって初めて、「我々の事業は何か」との問いに対する答えも、意味のある行動に換えることができる。目的とミッションのために働くことが可能となる。集中こそ戦略の基盤である」(P・F・ドラッカー『マネジメント』)

 

博士はこの言葉の後、「我々は、成功を収めている企業はすべて、集中の決定に関して徹底的に検討していることを知っている」として、IBMとコントロール・データ社の事例を挙げています。けれど、この2社は現在、どちらも当時とは様変わりしています。コントロール・データ・コーポレーションは、もとはスーパーコンピュータで有名な会社でしたが、やがて分割され、他社に吸収合併されました。

 

IBMも、90年代のパソコンブームに乗りきれず、ハード事業からソフト・サービス事業への転換を図りました。現在はクラウド事業、ITコンサルティング事業などを中心に事業を行なっています。

 

変化の激しい業界にあって、ともあれ2社がそれぞれ一時代を築くことができたのは、やはり「選択と集中」の結果です。とはいえ、そこにはドラッカー博士が述べていない、ある注意事項が潜んでいます。それは、「私たちはともすると『集中することに意義がある』という考え方に陥りやすい」、ということです。

 

「集中する」というのは、時間とお金と資源を投じる行為です。一極に集中して賭けるからには、それなりの勝算がなくてはなりません。万一、現在の事業に見込みがないのであれば、ひょっとしたら撤退するのが最良な場合もあり得ます。「ダメなら撤退する」という選択肢も含めて考慮する、ということです。

 

ですから、大事なのは

1、そもそも「今ある選択肢に集中すべきなのか?」を考える

特に、1がNOである人は、

2、選択肢を増やす努力をする

3、増えた選択肢の中から、より良いものを選択し、それに集中する

…という順番で進めます。

 

仮に今、正しい選択肢を持っていない人は、まずは自分よりも良い選択肢を持っている人から教えを請うことではないでしょうか。その人は、どれが良いのかがわかっているからこそ、良い選択肢を引いているわけです。良い選択肢を持っている人とは、「成功者」「その道のプロ」などでしょうが、社内なら、まずは上司でしょう。地位が高いのは、それだけ良い選択肢を持っている証しですから。


 

ありがとうございました。


 

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