こんにちは。俣野成敏(なるとし)です。

 

「また、同じミスを繰り返して」「この間、言ったはずなのに」…仕事をしていると、しばしばこうした場面に出くわすことがあると思います。こちらの意図が、なかなか部下や後輩に伝わらないと、分かっていても、ついイライラしてしまうものです。時には思わず声を荒げてしまい、後で「言いすぎた」と後悔するハメに。この負の連鎖を断ち切る方法はないものでしょうか?

 

結局のところ、心の中で「こいつはまったくオレの話を聞こうともしない。けしからんやつだ」と考え、事実その通りのことを口にしていては、相手がこちらの話を聞かないのもムリはありません。なぜなら人は、基本的に自分では「これが正しい」と思った方法を選択しているからです。

 

自分の行動が正しいと思って行動している相手に対して、それを否定してもいいことは1つもありません。よく、中には「オレは相手のために、イヤなことをあえて口にしているんだ」などと言う人がいますが、損をするのは自分です。ただ、たとえ心の中でそうは思っていなくても、立場上、やむなく部下を叱らないといけない人もいるでしょう。

 

もし、相手に「自分の話を聞いてもらいたい」と思ったなら、まずは相手の心の中に、自分の話を受け入れてもらえるよう、“ベース”をつくらなければなりません。つまり心を開いてもらわないと、自分の言葉はすべて門前払いされてしまいます。相手が心を開いてこそ、初めて会話が成立するのです。

 

人をマネジメントする上で、私がいつも意識しているのが「インタレスト」と「リスペクト」の2つです。インタレストとは、相手に関心を持つこと。その根っこにあるのは好奇心です。「この人はどのような価値観を持った人なのか?」「この人は何に重きを置いて仕事をしているのか?」といったことに関心を寄せ、相手の話を聞きます。対するリスペクトとは、相手に敬意を払うことです。

 

誤解しないでいただきたいのですが、それは決して「相手に合わせなさい」という意味ではありません。時々、機嫌を取ろうと相手をおだてる人がいますが、ただ単に賛同すればいい、というものでもありません。大事なことは、「相手には相手の考え方がある」ということを認めて、相手を否定しないことです。「そういう考え方があるんだね」「君からはそう見えているんだね」といった感じです。

 

事例をお話しましょう。以前、こんなことがありました。私の出版仲間には、人を褒める達人がいます。ある企画で、この褒める達人と、芸能人で褒め上手を自認している人との“褒め対決”に同席させていただきました。その日は「地方の特産品を褒め合う」という企画でしたが、当然ながら、何が出てきても褒めなければなりません。すると、2人はわざとクセのある特産品を試食させられました。

 

その時、その芸能人は何とコメントしたのでしょうか?答えは、「好きな人にはたまんないでしょうね」。自分は賛同していないけれど、褒めていることには違いありません。これが、相手へのリスペクトであり、インタレストです。たとえ自分の口には合わなかったとしても、好きな人がいることは認める。こうすることによって、相手は心のガードを外すのです。

 

この状態になって、ようやく「これは私のために言ってくれている」と相手は感じてくれるようになります。これが「叱る」ための“ベース”です。この叱り方を身につければ、もうお互い不愉快な思いはしなくて済みます。もし、これをお読みの方の中で、「なぜか相手を敵に回してしまう」とか「立場上、反感を持たれやすい」という人は、ぜひ意識してみていただければと思います。


 

ありがとうございました。


 

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