こんにちは。俣野成敏です。

 

(2017年)5月12日に世界で起こった大規模サイバー攻撃に関し、米マイクロソフト社の上級副社長ブラッド・スミス氏は14日、「NSA(米国家安全保障局)から漏洩したソフトの欠陥情報が、世界中にいる顧客の脅威となっている」と米政府に苦言を呈しました。

 

マイクロソフト サイバー攻撃で米政府を非難

http://www.excite.co.jp/News/it_g/20170515/Itmedia_news_20170515078.html

 

スミス氏は、NSAがWindowsのバグを知りながらそれを報告することなく、かえってその脆弱性を情報収集に利用していたことを指摘。日経新聞の報道によると、ことの発端は1990年代前半、マイクロソフトや米AOLなどが暗号技術の規制緩和を求めてロビー活動を展開し、政府が規制緩和を認めたことが一因になっているということです。

 

規制緩和されたことによって、IT業界はクレジットカード情報などの暗号化を進め、それがインターネットの利用普及に大きく貢献したのは事実です。しかし民間によって暗号技術が強化された結果、米捜査機関による捜査はより難しいものとなりました。2016年、米アップル社がFBI(米連邦捜査局)のiphoneセキュリティ解除要請に応じなかった事件は、記憶に新しいところでしょう。

 

このため、米政府が代わって考えついたのが、「IT企業によって世界中に広まったソフトのバグを利用した情報収集」だと言うのです。

 

 

一般に何かを変えるということは、必ず変化は一方向だけに限らず、「影響は他にも及ぶ」ということを考慮しなければなりません。もちろんIT企業にとって、こうなることは予想だにしなかったことでしょうが。

 

結局、ものごととは「一方向からだけを見ていてはいけない」ということを物語っているように思います。プラスとマイナスはたいていセットで訪れます。基本的には「イイトコ取りというのはありえない」ということです。

 

これをもっと身近な例に置き換えて考えてみましょう。

 

これはまだ私がサラリーマンだった頃の話ですが、かつて社内改革が行われた際に、「年収600万円社員」という制度がつくられたことがあります。会社がこの制度を導入したのは、おそらく「最初から優秀な人材を採用すれば、幹部候補として育てやすい」とか「実力主義の社風にしたい」といった意図からなのだと思います。

 

その制度の内容とは、「新入社員に特別待遇で年収600万円を出す」「その代わり退職金は出さない」「正社員扱いはしない」「その後は実力に応じて年俸制にする」というものでした。ところが、当時としても破格の待遇だったにもかかわらず、結局、全員辞めてしまいました。

 

確かに、この制度によって抜群に優秀な人材が採れました。とはいえ、所詮は学生上がりの新卒です。ポテンシャルは高くても、社内で活かし切れませんでした。それどころか特別扱いが裏目に出てしまい、先輩社員から嫉妬を受けて、誰も新人に仕事を教えようとしませんでした。

 

「この制度から会社を変えていこう」という意気込み自体は賞賛すべきもので、「社風に染まっていない人から変えていく」という発想もよかったのですが、そうすることによる周りの反応までは考慮していませんでした。

 

この制度の一番の問題点とは、「プラスばかりを取ろうとした」ことにあります。プラスばかりを取ろうとしたら、確かにマイナスは減るかもしれません。けれどその分、プラスも減ることになります。

 

むしろ大事なのは、「プラスとマイナスを両方取った上で、プラスを増幅させるためにはどうすればいいだろうか?」と考えることです。そもそも「プラスだけを取る」とか「マイナスを取らない」ということはできません。ですから、最初から両方取ることを前提にし、かつ「それでもプラスが上回るものを選択する」ことが大切なのです。

 

よかったら本日のお話を、ぜひあなたのお仕事にも応用してみてくださいね。


 

ありがとうございました。


 

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