今日は。俣野成敏です。

皆さんはフィリップ・コトラーという名前を聞いたことがありますか?マーケティングの分野では世界的な第一人者と言われている人物です。

コトラーは、

イノベーション+マーケティング=企業にとっての勝利の方程式

…だと述べています。




日本人はイノベーションとは「無から有を生み出すような、画期的な技術」を指していると考えがちですが、実際はそのようなアイデアはほぼ無いと言っていいでしょう。今まで世の中を変えてきたアイデアというのは、ほとんどがどこかからの借り物、つまり既存のものの組み合わせや平凡なアイデアを一ひねりした工夫の中から生まれてきた、ということです。

さて、そうした「工夫」の一つとして、本日は僕から皆さんに一つのご提案をしたいと思います。それは「業界の常識を疑え」ということです。

ここで一つのエピソードを披露しましょう。

皆さんご存知、スーパーのイトーヨーカドー。創業以来90年に及ぶ長い歴史の中で、空前の大ヒットとなったセールがあります。それが何か知っていますか?

「大ヒットと言うからには、きっとすごい割引率だったんじゃない?」

「ひょっとして50%?」「80%だったりして?」

いえいえ、どちらも違います。割引率で言うなら、たったの5%です。

正解は、「消費税5%還元セール」。
1997年4月、消費税が3%から5%に上がったことにより消費が低迷する中で、鈴木敏文氏は翌98年にイトーヨーカドーで「消費税分5%還元セール」を提案しました。顧客がイトーヨーカドーでお買い物をした際に、レシートから消費税分をキャッシュバックするという仕組みです。

その時、社内の多くの人たちは反対したそうです。その理由は「10%引きや20%引きのセールでもなかなか売れないのに、たった5%では効果が見込めない」と。

そこでまずは北海道に限定して実施したところ、前年比で40%から60%くらい売上げが伸びた。「これはいける」というので翌週には全国に拡大すると、ニュースなどでも大きく取り上げられ一大ブームのようになり、影響は他の小売業にも波及し、この現象が半年くらい続いたということです。

なぜ、普段は10%引きや20%引きでも見向きもしなかった顧客が、たった5%の還元セールに熱狂したのか?これはなにを意味するのでしょうか?

答えは“共通の敵を見つけましょう”ということです。

そのころ、消費者は税金が上がることに神経質になっていました。そんな時に消費税を無きものに(還元)してくれるスーパーが現れた。

「増税は、顧客と小売店、双方にとっての共通の敵」。消費者の目にはそのように映った。まさに、イトーヨーカドーは困っている人々の前に現れた「正義の味方」だと感じたのです。

「5%などという、小さい数字では上手くいくわけがない」という業界の常識を覆した好例です。

その後、ブームが社会現象にまで発展したことから、政府は「消費税還元セール」という触れ込みを禁止する事態にまで至りました。国が小売りの販促活動に口出しするくらい、大きな影響力があったということです。

いかがでしたか?これだけの反響を巻き起こしたセールも、実際は決して突飛なアイデアではなかったことがお分かりいただけましたか?

このように、一見、何でもないように見える日常の中に、明日のビジネスの常識を覆すヒントが転がっている、ということなのです。

「それに気付けたのは、鈴木敏文氏だからだよ」とお思いですか?それこそ、思い込みというものです!ビジネスセンスは意識して鍛えれば、誰でも身に付けられます。何を隠そう、僕自身がかつて平社員だった時は、まったくそれを持ち合わせていなかったのです。そんな僕が今では他人のビジネスのお手伝いをするまでになったのですから、断言できます。「あなたにも、できる」と。

ちなみに、この後イトーヨーカドー騒動はどういう結末を迎えたと思いますか?詳しくは、拙著『一流の人は上手にパクる』をご覧ください。


俣野のビジネスセンスを磨く技を一挙公開!

『一流の人は上手にパクる~仕事のアイデアがわいてくる大人のカンニング』
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ありがとうございました。