日本マクドナルドホールディングス株式会社の原田泳幸氏の話を聴く機会がありました。

原田氏といえば、Mac(マッキントッシュ)からマック(マクドナルド)への移籍で話題になった人物で、現在の役職は、代表取締役会長兼社長兼最高経営責任者とギネス級に長いお方です(笑)。

マクドナルドは、多額の広告宣伝費を使ってまで、同業他社のみならず異業態のカフェの中核商品である
コーヒーを100円という低価格で提供しています。

みなさんは、この理由をどういうふうに受け止めていらっしゃいますか?
 

なぜマクドナルドが100円コーヒーを売るのか?

なぜマクドナルドが100円コーヒーを売るのか?

 

ビジネスですから、「ただなんとなく」ということはありえませんよね。
少なくとも、マクドナルドのような世界的な大企業では・・

100円でコーヒーを売る2つの理由

私がその理由を突き止められた理由は、講演会に臨む前から仮説を持っていたからです。
実は、原田氏がそこの部分を講演会でサラッと解説してくれましたが、参加者の多くは、あまりのサラッと加減に真意を掴みかねたと思います。

そこで、このコラムでは、僕なりの解説をつけてみたいと思います。
あくまでも数少ない原田氏の言葉から類推する僕の解説という位置付けでご理解ください。

ここでのポイントは、2つあります。

コーヒーに利益はいらない

原田会長は、

「はじめてのお客をお招きするためです。コモディティ×プレミアムですよ」

というようなことをおっしゃいました。

実は、ここに1つめの戦略が隠されています。

「コモディティ」とは、日用品のこと。つまり、マクドナルドでなくてもどこでも入手可能な代替可能なものです。【ビジネスは差別化なり】というのが戦略の基本ですから、一見すると、これは差別化と真逆の方向に行っているふうに思えませんか?

ところが、マクドナルドはそれをあえてやっている。
理由は、「コーヒーで儲けなくてもいい」と思っているからです。

正確には、もちろん損をするつもりはないと思います。
しかし、プレミアムなコーヒーを100円で売ることは、コーヒーが中核商品のカフェ産業には到底マネができないことです。

「マクドナルドでは100円で○○コーヒーより美味しい(或いはそん色ない)コーヒーが飲める」

という認知をして貰おうとしているのです。

そうすることで、カフェの中核商品をコモディティ化してしまおうというわけです。
言葉を換えると、コーヒーというプレミアム商品をコモディティ化して社会的な相対価値を下げることで、ハンバーガー以下の相対価値を上げようということです。

そうすることで、マクドナルドを利用しようとも思わなかった客層を

「こんなにコーヒーでお得感を得たので、ハンバーガーも食べてみようかしら」

と思って貰える可能性が高まります。

コーヒーにかかる人件費はゼロ

そして、2つ目は、

「バーチャルな人件費はゼロですからね」

という言葉に隠されています。

先に説明した1つ目の戦略において、他社の中核商品の相対価値を下げることに見事成功したとしても、売れば売るほど損をするのではたまったものではありません。

しかし、それを払拭するのが、先の「バーチャルな人件費はゼロ」という言葉です。

つまり、中核商品のハンバーガーでしっかり利益が出せる体制がとれていれば、同じマクドナルドのスタッフがハンバーガーと共に(ついでに)提供するコーヒーに新たな人件費は発生しない
という考え方です。

そもそも、ファーストフードはスピードがサービスですから、コーヒーという提供物が増えることで増える時間数も知れているということなのでしょう。

 

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