株式市場は、いま「期待値」で膨張し続けています。
その象徴が、株価時価総額世界一企業のNVIDIAでしょう。
エヌビディアのPBR(株価純資産倍率)は、AI・データセンター需要を背景に極めて高水準で推移し、2025年1月時点で約44〜58倍、過去5年平均でも30倍超。
PBRとは「企業価値が純資産の何倍で評価されているか」を示す指標です。
つまり、NVIDIAは、帳簿上の資産価値の数十倍にも匹敵する株式を”期待値”として市場から買われている企業だということ。
株式投資とは、究極的には「期待値に賭ける行為」です。
成長ストーリーが信じられる限り、企業価値は膨張する。
しかし、期待が剥落した瞬間、市場価値は急落する。
この構造は、どれだけ優れた企業でも変わりません。
そこで注目され始めているのが、「トレジャリーカンパニー」という発想です。
トレジャリーカンパニーとは、内部留保を単なる現金として眠らせず、株式・債券・不動産・ローン債権などに積極的に投資し、企業自体が資産運用主体になる会社のこと。
ビジネスの期待値とは別に、企業が保有する“実資産”を増やし続ける経営モデルです。
これは「夢」ではなく「実体」を積み上げる経営。
将来の期待ではなく、今日の保有資産が企業価値の裏付けになります。
企業のバランスシートそのものが、「第二の事業」になるイメージです。
投資家の目線も変わりつつあります。
かつては「売上成長率」「ユーザー数」「ストーリー」が重視されました。
しかし、金利上昇と市場成熟により、「実際に何を持っているか」「どれだけキャッシュを生むか」が再評価される時代に入りつつあります。
いわば“夢の企業”から“金を生む企業”への評価軸シフトです。
企業経営においても、個人の資産形成においても、本質は同じです。
期待値に賭ける資産と、実保有を積み上げる資産は、まったく異なる性質を持ちます。
前者は爆発力、後者は耐久力。どちらが人生に効くかは、フェーズ次第です。
トレジャリーカンパニーとは、企業版の「資産収入モデル」と言ってよいでしょう。
ビジネスの成功に賭けるだけでなく、資産そのものを成長させる。
この二階建て構造こそ、次の時代の企業価値の源泉です。
加えて重要なのは、トレジャリー戦略は「守り」ではなく「攻め」でもあるという点です。
実保有資産が増えれば、企業は新規事業やM&A、研究開発においても自由度が増し、意思決定のスピードが飛躍的に高まります。資産は、企業に“戦略的な選択肢”というレバレッジを与えるのです。
期待値経営から、実保有経営へ。
株式市場が膨張を続けるほど、「何を持っているか」の資産性が効いてきます。
そしてこれは、企業だけでなく、私たち個人にもそのまま当てはまる時代に入っています。
