そうして、山本蓮之介が
身を整え直して
その場から去ろうとした時、
背後から初老の男が
手を叩きながら声をかけてきた。

「いやあ、相変わらずの
身のこなし、ですな。
山本蓮之介様」

その声に山本蓮之介が
振り向くと、
体格の良い、初老の男が
満面の笑みで、そこに居た。

山本蓮之介には
見知らぬ顔であった。
「お主は?」
怪訝な顔で訊ねる。

「これは失敬。まずは
名乗るのが礼儀でしたな」
相変わらずの満面の笑みのままで、
初老の男は続けた。
「私は、紀伊國屋門左衞門。
しがない着物問屋の隠居です」
そう言って、
軽くお辞儀をした。


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