編笠蓮之介 第8話 | 成瀬友葵の書斎
そうして、山本蓮之介が
身を整え直して
その場から去ろうとした時、
背後から初老の男が
手を叩きながら声をかけてきた。
「いやあ、相変わらずの
身のこなし、ですな。
山本蓮之介様」
その声に山本蓮之介が
振り向くと、
体格の良い、初老の男が
満面の笑みで、そこに居た。
山本蓮之介には
見知らぬ顔であった。
「お主は?」
怪訝な顔で訊ねる。
「これは失敬。まずは
名乗るのが礼儀でしたな」
相変わらずの満面の笑みのままで、
初老の男は続けた。
「私は、紀伊國屋門左衞門。
しがない着物問屋の隠居です」
そう言って、
軽くお辞儀をした。
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