僕のファイターズ大航海日誌 #5
きつかった。いや、ここ数日の作曲の締め切りが、だ。
自分の曲だけなら楽しいし、余裕もある。でも、僕は作家事務所の代表でもある。だから、作家や研修生たちの楽曲をジャッジして、ブラッシュアップするのが仕事。
どんな駆け出しの作家だって、自分のメロディは可愛いもの。
だから、こちらの修正案を素直に受け止めてくれないこともある。「はい、わかりました」と言いながら、内心では納得していないのも、まあ、わかる。
でも、コンペに出すということは、僕の大切な恩人である「先生」に、弊社作家の曲をプレゼンするということ。半端なものは出せない。だから、僕が「これは大丈夫」と思えたものしか出さない。そこまでやっている作家事務所、そんなに多くはないはずだ。
そして、社長の僕自身も曲を書いて出す。
これ、イチローさんの気持ちと似ていると思う。高校生や女子チーム相手に自分のプレーを見せることで、思いを伝える。僕も、僕のやり方を見せることで、「超えてほしい」と願う。たかが僕を超えられないようじゃ、この戦場では生き残れない。
で、僕もいまだに挑戦者だ。打席に立ち続ける。マウンドで吠え続ける。「もうこれでいいか」なんて、一度も思ったことはない。
昨日、エスコンフィールドでオープン戦を観てきた。読売ジャイアンツ戦。雪が残る北海道。でも、球場は熱かった。
先発・山﨑福也。5回1失点。安定感抜群。今年もローテーションの柱になってくれるだろう。
そして古林。ライトスタンドから見ていても、球のうなりが聞こえた。まるで西武時代の郭泰源。速球の威力。さらに、カーブなのかスライダーなのか、えげつないブレーキングボールを持っている。「台湾ナンバーワンのピッチャー」という触れ込み、伊達じゃない。
打撃陣。心配はいらない。去年52試合現地で観た僕が断言する。去年の今頃とは、まるで別のチーム。昨年、2位という結果を出して、自信をつけた。そして、チーム内のレギュラー争いが熾烈すぎる。これほど選手の実力が拮抗したチーム、見たことがない。
昨日の圧巻シーン。5回、水谷、野村、清宮の3連発ホームラン。7回、代打マルティネスもホームラン。マルティネスと清宮は、エスコンで行われたオープン戦5試合でそれぞれ2本ずつ打っている。打線の爆発力、ヤバいことになってきた。僕たちは彼らのホームランを観に球場へ行く。そして、ちゃんと魅せてくれる。
でも、ただの豪快なだけの野球じゃない。昨日の攻撃の起点は7番・今川。2回、センターへの犠牲フライで打点を挙げる。4回、フォアボールで出た郡司を、バントで送る。さらに次の打席では、センターオーバーの2ベース。守備でも躍動していたし、開幕スタメンもありそうだ。野手のポジション争い、これ、本当に厳しくなってきた。
新庄監督の腕の見せどころ。
僕も、作曲家として、作家事務所の代表として、打席に立ち続ける。今年のミッションは、「乃木坂46の表題曲獲得」。僕たちの世界でいう「優勝」。険しい道のり。でも、狙えるところまで来た。
ファイターズと同じく、僕も僕のチーム「BINGO!」を3年かけて育ててきた。素晴らしいエース作家たちもFAで加わった。(なんでも野球に例えるな、って? でも、本当にそうなんだ)
僕自身も、打席に立つ。フルスイングする。僕たちは、いわば「育成ドラフト」からの叩き上げ。ドラフト1位のエリート作曲家たちに挑むには、相応の覚悟が必要だ。「絶対に負けない」という強い覚悟が。
競争の世界。ファイターズの選手たちも、どれだけ楽しそうにプレーしていても、結果が出なければ試合に出られない。ポジションの数は決まっている。僕たちの世界も、同じこと。
だからこそ、自由に表現してほしい。その自由を手にするための鍛錬を、怠らずに。
今日も、エスコンフィールドへ行ってくる。僕の大航海、まだまだ続く。