エスコンフィールドに行く方法はいくつかある。
シャトルバスは新札幌駅と北広島駅から出ている。僕はいつも新札幌駅から乗っているが、シーズンが始まると30分から1時間待つことも普通にある。そんなに待つくらいなら、JRで二駅の北広島まで行って、そこから歩いたほうが早い。雪さえなければ、北広島駅からエスコンまでは気持ちの良い道を歩いて25分くらいで着く。そう、雪さえなければ。この季節は歩くのは現実的ではないだろう。
しかしながら、オープン戦の期間中はシャトルバス、ほとんど並ばずに乗れた。昨日もスムーズに乗車し、エスコンフィールドへ一直線。バスにさえ乗ってしまえば20〜30分で球場に到着する。全国の球場を巡ってきた僕としても、「バスに乗れさえすれば」エスコンはとても便利な球場だと思う。
さて、昨日の試合は中日ドラゴンズ戦。ファイターズの先発は北山。初回からストレートがズバズバ決まり、先頭の岡林を三球三振。続く2人もセンターフライに抑えて、完璧な立ち上がり。結果は4回を投げて2安打無失点。他のチームならエース級の安定感。今年も期待できそうだ。
対する中日のメヒアもいいピッチングを見せた。ファイターズが取った唯一の得点は、五十幡がフォアボールで出塁→盗塁→吉田の進塁打(ナイスセカンドゴロ!)→マルティネスの内野ゴロの間に五十幡がホームイン、という理想的な形。五十幡といえば、守備でも初回にセンター前に落ちそうなライナーをスライディングキャッチ! 守備範囲の広さと安定したプレーはすでに一級品。あとはバッティングがもう少し良くなれば、レギュラーだってつかめるはず。かつての阪神の赤星みたいなリードオフマンになれるポテンシャルはある。
伊藤大海。4月1日のエスコン開幕戦で先発が予告されているエースが6回から登板。三振、ファーストフライ、三振。完璧なピッチングだった。7回からはキャッチャーが郡司に交代。このバッテリー、なかなか面白い。伊藤は郡司とのサインが合わず、マウンドを2回外す場面があった。でも、実はこれ、伊藤がいろいろ試したかっただけだったらしい。
ストレートのサインでカットボールを投げたり、普段とは違うピッチングを試していたようだ。伊藤と郡司は同い年。だからこそ、「郡司ならどんなボールでも捕ってくれるだろう」と信頼して投げたのかもしれない。彼らはふたりだけの時間を楽しんでいるように見え、そのやりとりがなんとも微笑ましかった。
ファイターズのポジション争いは、僕が数十年野球を見てきた中でも一番激しいものだと断言できる。昨年、三塁手としてオールスターにも出場し、規定打席にも達した郡司ですら、内野のレギュラーをつかむのはかなり厳しい道だ。清宮、野村、マルティネスがひしめき合っている。ここに新たに吉田が猛アピール。郡司は捕手や内野を兼任する「打てるユーティリティ」という非常に珍しい貴重なポジションになる。
その吉田。彼が6回にフェンス直撃の素晴らしい二塁打さえ打たなければ、昨日の試合、ファイターズはノーヒットで勝っていたのだ。これはファイターズ公式戦でも過去に一例しかないものだそう。ノーヒットノーランならぬ「ノーヒットありラン」で勝利という大記録を破ってしまった吉田。「何してくれてんねん!!」というのはもちろん冗談。がんばれ吉田! チャンスをしっかりつかむその姿、かっこいいです。
昨日の試合で、一番心に残ったのは誰か?と聞かれたら、僕は迷わずこう答える。
「プレーボール宣言をした小学生の男の子」
試合前、彼は元気いっぱいに叫んだ。
「プレーボール最高!」
場内が「お?」という雰囲気になった瞬間、彼はハッとして言い直した。
「あ、間違った! ファイターズ最高!」
場内はおだやかな笑いに包まれた。でもさ、「プレーボール最高!」ってすごく良くないですか? 野球は、プレーボールの瞬間からすべてが動き出す。どんな展開になるのか、どんな名場面が生まれるのか、予測できないドラマがそこにはある。その一瞬一瞬を目の当たりにできることこそが、野球の醍醐味だ。だから、僕は彼の言葉を全力で支持したい。
プレーボール最高!
ところで、僕のメインの仕事は「作曲家」ということになる。昨日もエスコンの僕の席で作曲作業をしていた。
作曲家の仕事の行程は
1. 曲を思いつく
2. パソコンに打ち込んだり録音する
3. 細かい調整(ボーカルの編集、曲の長さを変える、アレンジの調整)
この3番目以降は「作業」なので、パソコンがあればどこでもできる。だから昨日も、膝の上にラップトップを乗せてカタカタと作業していた。
野球の試合を観ながら作曲するのは意外といい。というのも
1. 頭の中で曲を鳴らす
野球はプレーとプレーの間に時間があるので、考え事をするのにぴったり。試合を観ながら、何度も頭の中でメロディを再生する。
2. 一度曲を(完全に)忘れる
野球に没頭するのはもちろん、応援歌や球場の音を聴いて、世界に入りこむ。そして2、3イニング後にもう一度聴き直すと、その曲の違和感や問題点がわかる。
エスコンフィールドは僕にとって最高の作業場になっているのだ。
そんなことを思いながら、球場を後にした。行きは晴れてたのにな、帰りは思いっきり吹雪いてた。まだまだ春は遠いけど、僕の心はポカポカである。
そして最後にもう一度言おう。
『プレーボール最高!』
#大航海は続く