作曲家の成瀬英樹です。

 

ソングライターズ・ホーム」の研修作曲家たちとZoomにて作曲セッションを行なったり、オンラインコミュニティ「Song Garden」内でほぼ毎日、作曲にまつわるブログを書き、作業工程を生配信しています。

 

ぼくがこのような「作曲すること」そして「作曲コンペに提出すること」に特化した発信を続けているのは、「コンペに挑戦したいがどうすればいいかわからない」「曲は作れるが、打ち込みが苦手だ」「いったいどのくらいのクオリティのデモを作ればいいのか」といった情報を、必要としている人に届けたいからです。

 

ぼくが「楽曲コンペ」の存在を知り、参加し始めたのが2001年。初採用が2006年です。

5年間、出せども出せども採用のない孤独な日々を過ごしました

 

誰もその種の情報は教えてくれませんでしたので、毎回自分であらゆるアイデアを実践しては失敗を繰り返しました。苦しい日々でした。

 

もし、あの頃のぼくのように、お一人で孤独に戦っておられる作曲家の方がいらっしゃったら、ぼくたちの「ソングライターズ・ホーム」のドアを叩いてください。

 

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9月13日(火)

 

13:30  Lさん(主婦・シンガーソングライター) Zoomセッション

 

Lさん、今回のセッションは、MPさんと一緒に受けたいとのこと。

 

MPさんはLさんより一足先に半年の研修期間を終え、ぼくが主宰する作曲家事務所「合同会社BINGO!」 の作曲家として新たな道を歩み始めています。

 

LさんとMPさんは曲によってはソングライティングチームを組んでおり、今回の作品はそのチームでチャレンジしたい、とのこと。

 

主にMPさんが作ったデモを聴きながら、ぼくを含めた3人でざっくばらんに方向性を話し合う。イントロのキャッチーなフレーズ、Aメロ、Bメロ、サビ、とどのパーツもいい感じなのだが、組み合わせるとどうも「キラッ」と光らない。

 

そこで、Aメロ終わりのブレークから直接サビにつなげることを提案。Bメロは後ろに回していわゆる「大サビ」と呼ばれる「Dメロ」扱いにするのはどうだろう? と。

 

お二方ともに「すっきり、腑に落ちました!」とのこと!

 

ひとまずその構成で作ってみていただき、サビはもう少し「大きく捉える」ように提案。最初の二小節のフレーズを展開させるアイデアをお伝え。

 

さあ、次回どのようになっているか。とても楽しみです。

 

 

 

15:00   Yさん(19歳 学生)Zoomセッション

 

Yさんの才能にはいつも驚かされます。ライターズに入って2ヶ月半、すでに2曲の素晴らしい曲でコンペに挑戦し、芳しい成果をあげています。「BINGO!」内の社内コンペでも初参加の曲で1位を獲るなど、先輩作家に与えたインパクトも大きいです。

 

ぼくが彼にできるアドバイスは、1曲につきひとつくらいでしょうか。

 

それも「強いて言うなら」といったものですが、Yさんは謙虚に受け入れ、楽曲をよりブラッシュアップされる。

 

本格的に音楽の勉強をされてきたYさんには、はじめこそ歌詞の書き方を二つ三つアドバイスしましたが、もう3曲目となった今作は歌詞も大変素晴らしく、何も言うことがありません。早く完成形が聴きたい。

 

Yさんのように、「音楽を作ることは出来る」にもかかわらず、実際のコンペに提出するノウハウを持っていない方もいらっしゃる思うのです。仮歌さんの手配のやり方、仮歌詞の書き方、そしてミックスダウンの仕上げ方など、意外とその種の具体的な情報はネットには落ちていないものですからね。

 

ぼくは基本的にライターズのみんなには「対象に寄せないこと」を提案しています。自分の音楽の軸が定まっていないのに、例えば「乃木坂46」のスタイルだけを真似てもうまくは行かない、と。

 

しかしながらYさんのように音楽の本質をあっという間に掴める方は、逆にどんどんチャレンジすればいいと思います。J-POPの王道曲で勝負しても、Yさんなら勝機があるんじゃないかと。

 

今後が本当に楽しみです!

 

 

 

18:00  Sさん(ジャズピアニスト)  Zoomセッション

 

SさんはCDも出していらっしゃるジャズピアニスト。25年前に渡米し、今もNYを拠点に活動されてます。そんなSさんから半年前にご連絡いただき、「J-POPの世界でも勝負をしたい」と仰っていただきました。

 

しかも、Sさん、これまではずっと「アナログ一辺倒」で、Macを購入していただくところから始まりましたが、不断の努力を続けられ、半年で彼女独自のスタイルの方向が見えて来ました。ぼくとのコライトも含めると3曲コンペに参加されて、結果も出ています。

 

この半年で、ぼくはSさんに「良質な楽曲を量産できる作家」になっていただきたいと考えています。

 

昨日は、あるジャズスタンダードのコード進行をもとに、メロディをつけていきます。「J-POP化」するのに少し苦労されていたご様子だったので、その場でABCの展開のイメージをぼくが作ってお聴きいただきました。この際作ったメロディをぼく自身が気に入ったので、ボイスメモに録音。

 

このぼくが作ったモチーフを展開させてもいいのですが、やはりここはSさんの単独作を期待したく考え、全体の構成感だけをお伝えする。原曲はあくまで「ネタ」であり、重要なのは「キャッチーなフレーズ」をもったメロディであることをご理解いただけていたら嬉しい。

 

歌詞について、大変苦労されているご様子なので、「Song Garden」のメンバーで素晴らしい歌詞を量産できる方の作品を使っての「詞先」をご提案。面白そう!と乗っていただき、すぐにその方からあずかった歌詞を数篇送る。気に入っていただけた。

 

ぼくはここ2年ほど、音楽家ではない一般の方達と、30曲以上楽曲を作って来ました。そのほとんどが、みなさんの歌詞に曲をつける「詞先」。これが実に新鮮で、今では「詞先」の方が得意なのではないか、と自分で考えるほどです。

 

言葉の意味と響きを大切にしながらメロディをつけていく。言葉を伸び縮みさせたり、不思議な箇所で切ったり。一度「意味」から離れて「サウンド」としてメロディをつけるのが、詞先をポップスとして成立させる1番のポイントである、とぼくは実践から学びました。

 

Sさんはジャズの世界で一流になられた方。きっとご自身のペースで、素晴らしい「歌もの」の楽曲をものにされるでしょう。

 

たとえば、日本の「It's Only a Paper Moon」や「Moon River」それらの令和版のようなスタンダードを。まるで中村八大さんの作品のような。

 

 

 

 

 

今週ぼくは、故郷の神戸に出張です。関西在住の作家たちと会って、これからのこと、たくさん話したり、曲を作ったりしてきますね。