ダイハードなシアトル・マリナーズファン(byMOBY)の成瀬英樹です。作曲家やってます。2001年にシアトル・マリナーズファンになるまでは、ずっと近鉄バファローズファン、やってました。
どちらのチームにも共通することが一つ。それは、「チャンピオンになったことがない」ということ。近鉄は結局、一度も(12球団唯一)チャンピオンになることなく、消滅しました。シアトルマリナーズは「一次予選突破」すらこの21年間出来ておらず。
先日、ふと気がついたのです。ぼくはこの人生で一度も、自分が愛したチームが勝って喜んだことがないことに。
それってすごくないですか?
わざわざ弱いチームを選んで好きになっているのではなく、宿命的にその弱さに惹かれているのだと思います。そもそもヤンキースや読売巨人軍のようなタイプのチームを好きになるメンタリティは持ち合わせていない。
ぼくは常勝チームに勝負を挑むのが好きなのでしょう。どんなに負け続けたとしても。
そのシアトル・マリナーズ。今年は21年ぶりにプレーオフに進出する勢いでがんばってます。「一次予選突破」しそうなのです。昨日は昨年のチャンピオンであるアトランタ・ブレーブスに劇的勝利を収めました。9回表ツーアウトから4点差を逆転された裏に、ホームラン2本で逆転し返してのサヨナラ勝利。大いに泣きました。
昨年も「あと2勝」足りなくて涙を飲みました。ぼくはそれを現地シアトルで観ました。大谷翔平の46号により、シアトルの夢が打ち砕かれた動画はこちらです。
今年こそ。
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作曲家チームである「合同会社BINGO!」を設立して1年。
ぼくたちは「I ではなくWeで挑む」を合言葉に、日々切磋琢磨しています。
採用経験がある作家はまだ一人もいません。年齢も19歳から59歳と幅広いですが、ほとんどが40代以上の「ベテラン」です。それでも、本当に個性的で素晴らしい作品を書く作家たちばかりです。
それぞれにバンド活動や、会社員として働きながら、いつか「逆転ホームラン」を打つことを本気で狙っている。
その「BINGO!」のいわばファーム組織として「ソングライターズ・ホーム」を立ち上げました。「強いチーム」は育成がしっかりしている。これはぼくがベースボールのチームマネージメントから学んだこと。
「ソングライターズ・ホーム」では経歴や年齢など一切問いません。作品の完成度もまったく必要ない。ただ、「グッドメロディ」が書ける、ハングリー精神のある作家をプロアマ問わず求めています。一緒にいつか、ヤンキースを倒そうよ。
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9月12日(月)18:00 Oさん(50代男性 会社員)Zoomセッション
「ソングライターズ・ホーム」2期目となったOさん。一度卒業されたのですが、現在のライターズ研修生たちの勢いに危機感を感じられたのか、再度ライターズのドアを叩いてくださいました。
彼はぼくより歳上で、他社で作家としてずっとコンペに出されていましたが、結果は出ず。デモを聴かせていただくと、その理由は明白でした。サビが弱いのです。
しかしながら1期目のライターズ研修期、ぼくはOさんの楽曲に強くコミットすることはありませんでした。
最初のセッションで、Oさんの楽曲のメロディを直すことをご提案すると、彼は笑顔で「えーーーーー?」と違を唱えられたから。
「結果が出ていない」ということは「原因」があるということに、ご自身がお気づきになるまでは、こちらからは特に何も伝えないでおこうと思ったのです。幸いというか、彼は作家のご経験がおありなので、一見及第点の作品を作ることは出来ます。Oさんのやりたいようにやっていただき、ぼくはその結果を待つことにしました。
そして半年で、Oさんに「結果」は届きませんでした。
昨日聴かせていただいた作品も実にまとまっていて、名作アルバムのB面の3曲目あたりに入っていたらピッタリのおしゃれな曲でした。
ぼくはOさんに訊きました。「これ、ヒットすると思いますか?」
「いえ、思いません」とOさんは爽やかに答えました。
ぼくから言えるのは「せめて、作者である自分だけは、その曲を愛してあげてほしい」ということ。精鋭のプロたちは「絶対この曲で世界を変えてやる!」というところまで楽曲を練りに練って、コンペに挑むものです。
まだ世に出ていない作家に求められるのは、「いまだかつてなかったオリジナリティ」です。Oさんには、本気でヒットを狙ってください、売れる曲を書いてきてください、とシンプルにアドバイスをして終了。次回を待ちます。もうぼくも、妥協はしません。
そして具体的なデモ作りのことをいくつか。これは今は企業秘密とさせていただきます。Oさんがヒットを書いた暁に発表させていただきます。
なんとか、結果が出せるように、Oさんと力を合わせて、ベストを尽くします。
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そして22時から、現在のBINGO作家とライターズメンバーで「社内コンペ」。研修生もベテラン作家も、そしてぼくの作品も同じ条件で、誰の作品と告げずに聴いて、それぞれが一票を投じます。なぜその作品を選んだのか? をしっかり言語化してもらいます。
結局、作曲とは「作る」ことより「選ぶ」作業なのです。自分から出てきたメロディのどこをどう組み合わせるかの。他の作家の作品を聴くこと、それを責任を持って「選ぶ」こと。この「社内コンペ」がぼくたちのチームを今、強くしつつあります。
1年前、たった4人でこの「社内コンペ」を始めたときには近い未来にここまで盛り上がる展開は想像だにしませんでした。
ぼくはミュージシャンとしてメジャーデビューして「派手にコケた」人間です。一瞬にして誰からも相手にされなくなった、あまりにも苦い経験を30代でしております。しかしこの「楽曲コンペ」という厳しくも「公平」なシステムに音楽家としての人生を救われました。
作曲家には、年齢や経験など一切問われません。素晴らしい作品があれば、世に出るチャンスがあるのです。ぼくはそのチャンスを共有することが、ぼくを選んでくださったみなさんへの恩返しであると心から思っています。あの頃のぼくのような人、あきらめることなく、次の球を本気でホームランすることを狙っている人と、これからも出会いたいと思ってます。