成瀬英樹、53歳。作曲家です。ビートルズとベースボールがあれば生きていけます。
友人のMOBYが「ベースボール・イズ・ミュージック! 音楽からはじまるメジャーリーグ入門」を発表(この本の場合は「発表」と呼ぶのがふさわしい)しましたが、なんとその中にぼくも少し登場します。
「ダイハードなシアトル・マリナーズファン」という注釈でご紹介をいただいて。
ぼくのキャッチフレーズとして、今までで一番嬉しい呼ばれ方です。
「ダイハードなシアトル・マリナーズファン!」の成瀬です。
嬉しい。ありがとう、MOBY
もちろん、MOBYはご機嫌なドラマーであります!
そんなぼくは、毎日ソングライターズ・ホームのみんなとワイワイやりながら、Zoomミーティングで研修生と対面で楽曲を作っています。
メンバーは19歳の大学生から、59歳の社会人まで。初心者も経験者も関係ありません。うちで一番伸びた作家は、半年前まで「普通の音楽好きの主婦」でした。
「自分のイメージ」をメロディと歌詞にして、ヒット曲を目指すことができる。そのことに喜びを感じる仲間たちに、ぼくはチャンスを共有したいと思いソングライターズ・ホームを始めました。
9月10日(土)17:00 Kさん(30代 男性 会社員)
Kさんはぼくたちの仲間になってまだ間がない方。今作が最初のコンペチャレンジ。ソングライターズ・ホームの「ディレクター」であるぼくが、しっかりサポートします。
いわゆる「昭和」の歌謡曲をこよなく愛する彼の曲は、メロの足腰がしっかりしているので、あとはアレンジの技術をあげていけば、十分戦えるレベルになるとぼくは見ています。
音楽への愛がないトラックはバレてしまいます。「コンペ作家」であっても、自分の音楽性の軸はしっかりと持っていてほしい。Kさんには「軸」があります。
Kさんが作ったトラックにはギターも打ち込んであったので、ぼくがガットとアコギを入れて差し上げます。「サビで成瀬のコーラスがほしい」と言ってくれたKさんのために、はりきって三声のコーラスをダブルで。サビ頭には「字ハモ」も。
ミックスダウンはご自身でやられるとのこと。さあ、どんな仕上がりになるか、とても楽しみです。「演歌」と呼んでもいいくらいにそっちに振り切れてます。
20:00 Eさん(20代 男性)
Eさんは新曲を聴かせてくれました。
一聴して、あまりにも複雑な楽曲にぼくは戸惑いました。なぜ今、このような曲を書くのですか? とEさんに問いかけました。この作品は誰のために書いたのか、ということを。
この曲は歌詞も曲も「日記」なのではないか。いや、Eさんはとても素晴らしいセンスをお持ちなので「日記」でもいい感じの作品ではあるんです。ただ、ディレクターはリスナーと作家をつなぐ仕事。この作品は難しすぎる、と感じたのです。
しかしながら、メロディもコード展開も実にユニークで素晴らしいのです。色々考えましたが、Eさんの「今」をこのまま作品にして、コンペに挑戦する方法を取ることにしました。
そのためには、まず「歌詞」の書き方をお伝えしようと思った次第です。
ぼくは作家たちに「コンペ用の曲」を書いてほしくないのです。そうではなく、今、作家が出せるベストでチャレンジしてほしい。そうなると「歌詞」も重要です。いや、何も最高傑作を書け、なんて思っていません。
ただ、「誰に何を伝えたいか」と「その伝えたいことを、一言で表現するワードを見つける」ことをしないと「歌」になりませんものね。
Eさんとの次回のセッションも楽しみです。
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そのあと22:00から、ソングライターズ・ホームのみんなと、ぼくのサロンSong Gardenの有志たちと、総勢15名ほどで「ビートルズクイズ大会」をしました。課題として「エイト・デイズ・ア・ウィーク」を観ていただいて、その内容にまつわる問題を20問ほど。例えばこんな問題です。
1966年アルバム「Revolver」で「テープ逆回転」を初めて使用したとされる曲は?
1. 抱きしめたい
2. イノセント・ワールド
3. シーソー・ゲーム
4. Tomorrow Never Knows
さあ、あなたに正解はわかりますか? この問題の正答率は90パーセントでした!嬉しい!
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9月12日(月)Tさん(30代 焼肉店勤務)Vocal エディット特訓
弊社「BINGO!」既存作家だったTさんが「ソングライターズ・ホーム」に入ってくれての初めての曲。先日の日記で書いたぼくとのコライト曲のミックスがTさんから上がったのだが、ボーカルのメロのラインが合っていない、ピッチの修正が甘い、ので、急遽Zoomを取って、ぼくが実際にボーカルエディットをする画面を見て、勉強していただく。
ボーカルエディットはコンペ曲を仕上げる際の一番大切なポイントだ。「自然」に「正確」にピッチを合わせること。Tさんがなぜ、BINGO!でコンペを出してもなかなか決まらないのかがわかった。メロディのピッチ修正が甘いので、いいメロディに聴こえないのだ。
今回はぼくとのコライト曲なので、ぼくとしても自分の「ハンコ」を押すわけです。完璧になるまで何度もやり直す。ベストを尽くして、終了が午前3時。お疲れ様でした。
名曲できた!
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「ソングライターズ・ホーム」開設から半年、研修生たちの成長ぶりにぼくが一番驚かされています。
「ソングライターズ・ホーム」の強みは、ぼくが主宰する作家事務所「合同会社BINGO!」の作曲家たちのミーティングに参加できること。先輩作家の作品をみんなで聴きディスカッションする。そのミーティングに月2回参加していただきます。「ソングライターズ・ホーム」の研修メンバーも「どの先輩の作品が一番採用に近いか」を考え、意見を発表します。
そして「ソングライターズ・ホーム」もう一つの特徴は、「研修生が作った作品も実際のコンペに出すことができる」こと。楽曲を作ってもらって、足りない部分をぼく達のチームが補います。例えばミックスが苦手ならエンジニアを紹介します。ギターやコーラスが必要ならぼくがやります。研修期間中1曲はぼくと共作をしてもらって、まずは形にします。(その必要がない方は最初から一人で書きます)
もちろん「楽曲ミーティング」で先輩作家たちとの曲と一緒に聴き、意見を交換しあえます。同期の仲間たちがどこまでがんばっているかもすべて可視化されています。
当然そこには成瀬の新作たちも入ってきます。「師と生徒」が同一の擬似コンペでディスカッションされる。ぼくにとっても大変刺激的であります。
「ソングライターズ・ホーム」では、こちらから「カリキュラム」を作って教えるのではなく、実際の研修生の作品に、ぼくが「その場で具体的」に提案をしていきます。メロディのこと、全体のサイズのこと、コードの付け方、歌詞の乗せ方、仮歌のチョイス、打ち込みで行くのか生楽器も混ぜるのか、ミックスダウンの音質調整と音圧のあげ方など。月に3回のZoomセッションで、ぼくの技術や考えをお伝えしています。
令和の現代、ポップス制作は「メロディ」よりも「トラック」が重要になってきているのは確かです。そんな今だからこそ、ぼくは後輩たちに「メロディと歌詞」の大切さを伝えたいと強く思っています。
それが「ソングライターズ・ホーム」を立ち上げた一番の理由です。
ポップスとは魔法。たった数分で人々の心をパッと明るく照らします。
その一番の主役は、永遠に色褪せぬような美しい「メロディ」なのではないか。それがぼくの世界観です。
ぼくとぼくが作った作品たちを信じて「ソングライターズ・ホーム」のドアを叩いてくれたみんなには、すべてをお伝えしています。