2011年6月3日。

 

12:00発の日本航空機で小樽へ向かう。ジブリ映画「コクリコ坂から」とその主題歌「さよならの夏」のプロモーション目的のツアーだ。

 

一行は主題歌を担当した手嶌葵さんにマネージャーのみーちゃん。映画会社のN田さん。そしてジブリから広報のN岡さんは司会などを担当。レコード会社から毎回二人ほど同行するのはCDの販促のためだ。

 

そして、ギタリストである僕。

 

今回の仕事の媒介になってくれたディレクターのJは、つきっきりではないが要所要所で合流する。なにせ忙しい男なのだ。初日ということで、小樽から青森の工程にはJも同行することになった。

 

実はこのツアーの数日前に僕はやや強い耳鳴りに襲われた。この数年前に突発性難聴を発症してから、ストレスがかかると耳鳴りがするようになっていた。手嶌葵さんとジブリ社の映画のプロモーションをする。果たして僕にその大役が務まるのだろうか。

 

 

 

ディレクターJとマネージャのみーちゃん

この頃は街を観光して回る余裕がまだあったのだ

 

前乗りした「コクリコツアーズ一行」は小樽の美味しい魚介の夕食をいただき、翌日からの長いツアーへの英気を養った。

 

僕から見た手嶌葵さんの最初の印象は非常に寡黙な女性であるということ。無駄なことを口にするタイプではないからこそ、時折見せる静かな笑顔は、僕の心を柔らかくとかしてくれた。

 

しかし、ひとたび話題が音楽のことになろうものなら、彼女はとても饒舌になった。ブルースからジャズ、古い映画音楽から最新のアメリカンミュージックまで、驚くほどの音楽の知識を有し、独自の見解を持っていた。僕は驚き、完全に舌を巻いてしまった。この旅で様々な素敵なアルバムを彼女から教えてもらった。それらのいくつかは今でも僕の愛聴盤になっている。

 

 

その音楽への深い愛情が、彼女の歌の説得力を支えているのだな、と僕は腑に落ちた。

 

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お世話になったジブリ社や葵さんに迷惑はかけたくないので、手持ちの写真をあげる際も慎重を期するつもりである

 

基本的にはショッピングモールか映画館の上映前後の公演。毎回三曲と決まっていた。

 

「上を向いて歩こう」「朝ごはんの歌」「さよならの夏」である。

 

「上を向いて歩こう」は映画「コクリコ坂から」でも印象的に使われた。2011年の大震災後に、被災地から自然発生的にリバイバルした国民的名曲である。

 

1964年に米国ビルボードのチャートで1位を獲得。日本人はもちろんアジアまでその範囲を広げてもビルボード1位を獲ったのは後にも先にも「上を向いて歩こう」だけだ。しかも日本語のバージョンそのままで、である。いかに素晴らしい作品であったか。

 

世界中に数多あるカバーの中でも"手嶌葵・コクリコツアーズver."はかなり特筆すべき作品ではないか、と僕は感じていた。どの会場でも、歌い終えた後、一瞬ため息が漏れ、そして大喝采、となった。

 

彼女の横でギターを弾くことが出来たのは僕の一生の宝である。僕は静かに歌う彼女とともに呼吸をすることを心がけ、まるで彼女が弾き語りをしているかのようなバッキングでその歌を引き立てることを考えた。

 

このあまりに素晴らしい「歌」をぜひあなたに聴いてほしい。

 

ツアーのどこかの会場で観客が撮影した動画。撮影は禁止されていたので本来褒められたことではないのだが、今となっては葵さんの「コクリコツアーズ」での歌唱が聴ける唯一のものである。歴史的な資料と考えてリンクを貼る。

 

(続く)

 

 

2019年6月29日(土)
成瀬英樹 レコ発記念スペシャルジョイントライブ 
"The Acoguist" 吉川忠英さんをお迎えして

場所 下北沢 風知空知
出演 成瀬英樹 スペシャルゲスト 吉川忠英
開場17時00分/開演17時30分 
予約 3,000円/当日 3,500円(共に+1drink)
風知空知メール予約(先着受信順整理番号付き) 
予約受付開始:4月1日(月)18時~ 
●メール予約:風知空知 yoyaku@fu-chi-ku-chi.jp
(ご希望公演名、お名前、枚数、電話番号をご明記ください)

成瀬英樹、新しい作品集「HIdeki Naruse with Friends」発売記念として
アコースティックギターのレジェンド中のレジェンド
吉川忠英さんをゲストにお迎えしての一夜です。

吉川忠英さんは僕の憧れの
アコーステックギターの名手中の名手。
そして、シンガーソングライターとして現在も
日本中を旅して歌って回っていらっしゃいます。

参加された作品はまさに「枚挙に遑がない」のです!
むしろ、ヒット曲で忠英さんがアコギを弾いてらっしゃらない曲を
探す方が難しいとすら言えます。

僕が子供の頃から愛聴してきた
名曲の数々も忠英さんのアコギなんです。

忠英さんへの想いはブログに記しました。ぜひご覧ください。
https://ameblo.jp/naruse-hideki/entry-12449940558.html