今思えばだよ、あの頃、本当にもっと毎日を楽しむべきだったよなあ。せっかく貴重な体験をさせてもらえていたのにね。

 

ドラマの主題歌でデビューというプレッシャーに押し潰されて、僕は夜、眠れなくなっていたんだ。きっとそれは、FOUR TRIPSのほかの三人のメンバーも同じだったと思う。非常に繊細な時期だったね。

 

97年4月23日のデビュー日に向けて、僕たちはラジオやテレビ、新聞に雑誌、などあらゆるメディアの取材を受けた。二ヶ月ほどはスター並みの忙しさだった(笑)「人は誰も、生涯で15分だけは有名になれる」と言ったのは、アンディ・ウォーホールだったか。

 

取材はメンバー4人全員で受けることもあったけど、地方都市へのプロモーションは僕一人、もしくは僕ともう一人のメンバーとで動くことが多かった。

 

所属レコード会社のファンハウスのプロモーション・スタッフの皆さんとの思い出は尽きない。皆さん本当に一所懸命にスケジュールを組んで下さった。食事も美味しいところに連れて行ってくれて、親身になって話をしてくれる方ばかりだった。

 

メジャーデビューした事のある人なら同意してくれると思うけど、地方のスタッフやイベンターさんって、アーティストにとって、その都市を象徴する存在になって行くんだ。「福岡に行けば、あの人に会えるな」とか「札幌に行けば、彼とラーメン食えるな」とかね。

 

プロモーションだけで、デビュー前に五大都市を数度回った。今思えば、僕たち相当に期待されたデビューだったんだね。

 

プロモーションの一日の始まりは、まず、レコード会社の一室に入り、担当スタッフからビデオとDATテープの山が机の上に置かれる。全国のラジオ局やテレビへのコメント録りが始まるんだ。

 

「FM〇〇をお聴きの皆さん、こんにちは。FOUR TRIPSの成瀬英樹です、最近僕は〇〇にハマってまして ...云々。それではお聴きください!WONDER!」みたいなね。

 

そして、紙媒体のインタビュアーが来てインタビューを受けたり、こちらから先方に出向いたり、ラジオ局を回って生出演、テレビのコメントや番組収録など、一日中動き回るわけだ。時には、生で弾き語りで歌ったりもしたよ。

 

主題歌に使ってもらったTBSドラマ「友達の恋人」は20代の女性二人(桜井幸子さんと瀬戸朝香さん)と男性(安藤政信さん)の三角関係、つまり間違った恋、を描いた青春ドラマだった。僕らの「WONDER」のサビのフレーズ、♫間違った 恋だった〜♫ を聴いて、「よくあなたたち、これ程ドラマの内容に合わせた曲を作りましたね〜?」みたいな質問が多くてまいったよ(笑)いやいや、これは数年前からありましてね、曲の方が先にあったんですよね、なんて説明をしても、皆さん、腑に落ちない顔をしていたよ。

 

「ドラマの主題歌でデビューする幸運についてどう思いますか?」「バンド名の由来は何ですか?」同じ質問に、できるだけわかりやすく答えて行く。ひとつひとつ丁寧に。メディアの向こう側には、聴いてくれる人たちがいる、聴いてもらえるチャンスがあるのだから。そう思って頑張ったつもりだ。

 

忘れられない光景がある。大阪でのプロモーションを終えて、ホテルの部屋に入った。「友達の恋人」の番宣スポットが初めて流れる夜。「WONDER」が、僕の声、僕らのバンドの演奏が、ドラマの予告シーンにインサートされた。「間違った恋だった♫」。

 

この数年前に、実家の鏡の前で歌の練習をしている時に降りてきたフレーズが全国に流れている。本当に、本当に、怖くなった。何か犯罪を犯してしまったような、世界中が僕を責めているような、なぜかそんな気持ちになったよ。僕は震えていたかもしれない。

 

さあ、いよいよ、メジャーデビューだ。

 

 

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プロモーションを回っている時に、どこかの街でどなたかから、スガシカオさんのデビューシングルのサンプルをいただいた。「ヒットチャートをかけぬけろ」。

 

変わった名前だな。すげえタイトルだな。

 

聴いて、文字通り腰を抜かしたよ。こんな圧倒的な才能が新人としてデビューするような、そんな世界で俺は戦わなきゃいけないのか、と。

 

無理だ!と思った(笑)そりゃそうだよね。今聴いても、凄まじい才気だ。切れ味の鋭いナイフのような音楽だ。

 

 

 

いつもありがとうございます!

なかなか話が前に進まなくてすみません(笑)

成瀬英樹

 

Live Information 

2018年12月1日(土)
成瀬英樹 生誕50祭@大阪
「ただいま!マスター!大ちゃん連れて帰ってきたでー!」

出演 成瀬英樹/白井大輔

場所 5th Street
http://www.5th-street.com
大阪市西区南堀江1丁目1-12 浅尾ビル2階・3階

開場 18:00
開演 19:00

料金 2800円 
当日 3300円  
※(1D別途)

 

 

NEW!!

↓こちらノルマ付き、インディーズの皆様と!なんと持ち時間たったの30分!笑 アウェイの成瀬の苦悶を見に来てください!!

 10月13日(土)新宿:真昼の月 夜の太陽 

出演:ナガオカ智 、夢井みづき 、DELMO 、成瀬英樹、あるはるか 、Lizards get tails open/start 17:15/17:45 前売/当日 2300円(ドリンク別)

 

 

 

NEW!!

■2018年11月10日(土)

白井大輔×ナルソワン(成瀬英樹、SOWAN SONG)
"西の星、東の星と光る夜"
場所 lete
http://www.l-ete.jp
東京都世田谷区代沢5-33-3
下北沢駅南口 徒歩4分

開場 18時半
開演 19時半

料金 2500円 1D別途

 

 

 

2018年12月10日(月)
「成瀬英樹・生誕50祭 / ヒデキ感激!ナルーソニック!」

出演:
成瀬英樹
スペシャルゲスト:
石田ショーキチ
黒沢秀樹
榊いずみ
SOWAN SONG
etc.

下北沢 風知空知
時間:開場18:30/開演19:30
料金:前売り¥2,800/当日¥3300
(共に+1Drink600円)

風知空知メール予約のみ(先着受信順整理番号付き)
●メール予約:風知空知 yoyaku@fu-chi-ku-chi.jp
*ご希望公演名、お名前、枚数、ご連絡先電話番号をご明記の上、お申し込みください。