96年。僕たちFOUR TRIPSに、突然、降って湧いたようにビッグ・チャンスがやってきた。そして、先に結末をお伝えしておくと、そのビッグチャンスは屈辱の歴史的大惨敗への伏線に過ぎなかったんだ!

 

ここ、笑うとこだよ(苦笑)

 

最初に言っておくけど、惨敗の原因は全て、僕の「才能のなさ」にあった。メジャーのフィールドに居た2年間は「なぜ僕はこんなところに来てしまったのだろう」と自問し続けてたよ。ここは本物の才能があるものしか、近づいてはいけないフィールドなんだ、と道の途中で僕は気がついてしまったんだ!

 

ここから数年のちに、まさに唖然とするような突然の空中分解で、一旦僕は音楽業界から完全に放り出されるわけなんだけど、正直なところ、もう無益で不毛な戦いを挑まなくてすむ、と安堵すら覚えたね(笑)しかし、その空中分解は一枚岩だったはずのFOUR TRIPSというバンドの分解をも意味したんだ!

 

 

そう。ここからは、かなりヘヴィな話になる。でもね、なるべく楽しいタッチで語るよ。これは僕から見た、あのドタバタした混乱の日々の記憶だ。そして、このようなストーリーは音楽業界に携わる者にとってはさほど珍しいことではないんだよ。

 

でもね、こうやって僕があなたに語って、あなたがそれを書いて残してくれる。そうすれば、いつ、誰の役に立つかもしれないものね。もしかしたら、出口も見えずに同じように苦しんでいるたった一人の誰かを勇気づけるやもしれない。

 

もしくは、今は10代の僕の娘が、大人になったある日に「ふむふむ」と読みふけるかもしれない。彼女は「パパはバカだねえ」と憎まれ口を叩くのかもしれない(笑)

 

たかだか20年ほど前の話だ。まだまだ「昔話」レベルの年月しか経って居ない。これがやがて「歴史」になるんだよ。ある「平成のティピカルな売れ損ねたバンドマン」の歴史。誰かが残しておいても、悪くないじゃないか。じゃあ僕が生け贄になってやろう!とそう思ったんだ。

 

そして、一つだけ、僕はあなたに約束する。僕から見た事実を覚えている限り、公平にあなたに語ることを。よくある暴露話みたいなことにはならないから、そこは期待しないでね(笑)

 

さあ、チャプターIIの始まりだよ!

 

エルヴィス・コステロじゃないけど、僕は毎日、本を書いている気分だよ。

 

「Everyday I write the book」

 

ロン・セクスミスとコステロ。たまらんな。

 

 

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96年秋、縁あって、ファンハウスレコードのプロデューサー田中さんが、僕たちのライブを大阪まで観に来た。「なかなかいい曲書くじゃん」と褒めていただく。ちょうど、彼の次の展開に相応しいバンドを探していたようで、かなり軽い感じで「俺、FOUR TRIPS、やろうかな」と言ってくれた。「やろうかな」というのは、担当しようかな。デビューさせようかな、という意味なんだよ。

 

 田中さんは国広富之似の、非常に爽やかな方だった。初めて会った時は、カウボーイのような帽子を被っていた。僕は優しい兄のように彼を慕った。彼も出来の悪い弟が出来た気分だったのかも知れない(笑)すべてに親身になって相談に乗ってくれたよ。

 

まず、田中さんは僕らを原宿にあった、今はなき「リトルバッハ」というスタジオに呼んでデモを5曲録った。「WONDER」「FM」「バニラアイスが溶け出す前に」「あきらめない季節」あと一曲なんだったかな。

 

2泊3日で録った。新幹線代は出るわ、ホテルには泊まれるわ。遠足みたいな感じで、無邪気に僕たちは盛り上がった。

 

田中さんと、事務所の社長になる廣瀬さんが、そのデモを持って、あちこちに営業してくれた。そこで、テレビ局のプロデューサーが「WONDER」を聴いて「これをドラマの主題歌で行きましょう」ということになったという。当時人気絶頂だった若き演技派女優が主演のドラマの。

 

僕たちは誰もが彼女の大ファンだった。

 

同時代で「高校教師」の悲運の女生徒役の彼女の魅力に抗うことが出来る世の男性は少なかった筈だ。「高校教師」は文字通り、本当の意味で、社会現象になった。

 

 

その後も彼女は数本に主演し、全て大ヒット。

 

そんな彼女の新作ドラマの「友達の恋人」の主題歌に、僕たちがアマチュア時代から歌っている「WONDER」を使うというのだ。もしあなたが僕なら。そんな大きすぎる話、にわかに信じられるかい?

 

僕たちはそれまでも、うまく行きかけてはポシャる人生だったから、ああそうですか、ありがとうございます、くらいにしか受け取ってなかったんだけど。状況はどんどん進んでいったんだ。「これはマジかもしれんなあ」と。

 

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震災で倒壊していたチキンジョージが復活して、僕たちは神戸でライブを再開した。そして、念願のメジャーデビューが決定した。1997年の4月クールのTBSドラマの主題歌でのデビューだ。

 

いざ、デビューが決まったら、もう不安しかなかった。僕はもう27,8だったし、これで失敗したらもう終わりだ、という気持ちだったね。あまりにもプロジェクトが大きすぎると思っていた。1996年の夏はずっとビールを飲んでいた。不安を消すためにどんちゃん騒ぎをしていた記憶しかない。

 

本当は曲を書きためておかなくてはいけない時期だったのだけど。その夏に書いたたった一曲が「凍えそうな月」だ。今思うと、とても孤独な歌だよね。

 

そして震災で倒壊した阪神高速道路神戸線が620日ぶりに全面復旧した1996年9月30日に、FOUR TRIPSを乗せたトラックは東京へ向かったんだ。

 

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いつもありがとうございます!!

成瀬英樹

 

 

 

Live Information 

 

大阪のライブが決まりました!宜しくお願い致します!!

 

■2018年12月1日(土)

成瀬英樹 生誕50祭@大阪
「ただいま!マスター!大ちゃん連れて帰ってきたでー!」

出演 成瀬英樹/白井大輔

場所 5th Street
http://www.5th-street.com
大阪市西区南堀江1丁目1-12 浅尾ビル2階・3階

開場 18:00  開演 19:00

料金 2800円  当日 3300円

 

 

 

@下北沢、豪華ゲストの皆様のおかげで、座り席が満席になりました!ありがとうございます!立ち見でのご予約をお受けいたします!(キャンセルが出た場合、整理番号順に座席にご案内いたします)

2018年12月10日(月)
「成瀬英樹・生誕50祭 / ヒデキ感激!ナルーソニック!」

出演:
成瀬英樹
スペシャルゲスト:
石田ショーキチ
黒沢秀樹
榊いずみ
SOWAN SONG
豪華な追加ゲストありそうです!!!


下北沢 風知空知
時間:開場18:30/開演19:30
料金:前売り¥2,800/当日¥3300
(共に+1Drink600円)

風知空知メール予約のみ(先着受信順整理番号付き)
●メール予約:風知空知 yoyaku@fu-chi-ku-chi.jp
*ご希望公演名、お名前、枚数、ご連絡先電話番号をご明記の上、お申し込みください。