1994年の秋から95年の年明けにかけてのストーリー。神戸の街。僕は26になろうとしていた。

 

僕たちFOUR TRIPSは伊藤銀次さんプロデュースでのデビューに向けて、曲を書いてはカセットに録音し、東京の銀次さんに送っていた。

 

「銀次ヨットスクール」なんて、ご自身の自伝の中で仰ってるけど、別にね、スパルタというわけではないんだよ。ただ、銀次さんが考えるレベルまで達していないものは容赦なくボツにされるだけだ。容赦なく。

 

銀次さんがウルフルズのプロデュースを引き受けた際に、トータス松本さんが提出した何十の曲デモテープを聴いて「このまま使える曲は1,2曲」といった話はのちに有名になったよね。

 

ただね、いいアイデアが出たらもう、めちゃくちゃ喜んでくれるんだよ。「いいねええええ~!」「これだよ、成瀬!!」そうなったら、ここをああして、こうして、とプロデュースが始まるんだ。

 

 

歌詞を参考にしなさいとおススメしていただいたのがこちら。名曲ですよね。

 

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銀次さんに教えてもらったことで、今でも金言にしていることがいくつかある。

 

「二枚目の男が歌うようなラブソングを成瀬が歌ってもお客さんには伝わらないよ」「青春映画でも一人くらいいるだろう?少しドジだけど愛される三枚目のキャラクターが。そういう視点で歌詞を書いてごらん」

 

「キャッチコピーになるようなタイトルから曲を考えてごらん」

「“ガラスのジェネレーション“ ”君は天然色” みんなそうだろう?」

 

「アイドル歌手でも大人の歌を歌う時代だよ」

「幼いラブソングはやめて、年齢相応の大人の歌詞を書いてごらん」

 

「曲を提出する際はギター一本でデモを作るんだ」

「その際はワンコースだけでいいから、必ず歌詞をつけて」

「ラララ、で作っちゃダメだよ。ラララでいい歌かどうかわかるかい?」

 

そして、「バンドのフロントマンは、他のメンバーと横並びじゃいけないんだ」「横に並んでいるように見えて、精神的には一周先にいるくらいじゃないといけない」「成瀬がブレークする曲を書かないとバンドをデビューさせることはできないからね」

 

 

 

 

↑当時、銀次さんにいただいた本。今でも僕の座右の書です。

 

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銀次さんはFOUR TRIPSの他のメンバー達にはいつも「いいね~!」って声をかけていたけど、僕は褒められたことはほとんどなかった。同じバンドのメンバーなのに、なぜ、僕だけがこんなにダメ出しされるのだろう。すごく悩んだし、苦しんだ。ライブ終わりにも、僕だけが呼ばれて、細かな指摘と提案を受けるわけ。

 

でも、今なら銀次さんの想いはわかるし、今、僕が銀次さんなら同じことをする。フロントマンというのは、そのくらい責任が重い立場なんだよ。

 

後にデビュー曲になる「WONDER」の歌詞も何回も書き直した。「リトル・ヒットラー」はサビの構成を銀次さんにさっと直していただいて、見違えるほど良くなった。歌詞のアイデアもいただいたよ。「大好きさ 君のファシズム」なんてフレーズは銀次さん一流のもの。最高だよね。

 

本当に僕は銀次さんに心酔してた。彼が触れた曲は、目の前でどんどんブラッシュアップされてゆくんだから。めくるめく体験だよ。本当のプロフェッショナルに出会えて僕はラッキーだった。

 

この時期、銀次さんとの共同作業と、週に一度の吉本WA CHA CHA LIVEの出番、もちろんアルバイトもやっていたから時間的にも相当キツかった、毎日、朝まで歌詞を直してバイトして練習して。さらに月1回はチキンジョージでライブもやっていたし。「絶対に売れてやる」って思いがあったから続けられたんだと思う。僕には他にできることもなかったしね。逃げ場がなかったんだ。

 

それでも、少しずつデビューに向かって進んでいる気がしていた。お金はなかったけど、本当に夢だけはあった。

 

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年が明けて1995年。1月10日のチキンジョージのライブに、銀次さんがあるレコード会社のトップを連れてきてくれた。その会社でリリースが出来ないだろうか、とプレゼンしてくれてね。しかし結果は芳しくなかった。「成瀬君、君にはアーティスト性を全然感じないんだよ」ってそのトップの方に言われたよ。うちではやれません、と、そういうことだった。ショックだった。僕も落ち込んだけど、銀次さんも一緒に残念がってくれてね。銀次さん、仕事にはめちゃめちゃ厳しいけど、とても心の温かい、優しい方なんだ。

 

銀次さんの期待に応えられなくて本当に悔しかった。僕は「アーティスト性」ってなんなんだよ、って本当に分からなかったし迷った。オレはオレのままじゃ、だめなのかよ。

 

それでも簡単に諦めることもできず、俺たちに出来るのはいいライブをして、いい曲を作ることだ、と、引き続きやるしかないよな、とメンバーで誓った。銀次さんも引き続き、プロデュースを継続して、一緒にがんばろう、と言ってくれた。心強かった。

 

よし。仕切り直しだ。

 

そして、1995年の1月17日がやって来た。

 

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いつも読んでいただきありがとうございます!
成瀬英樹

 

 

 

 

Live Information 

 

大阪のライブが決まりました!

 

■2018年12月1日(土)

成瀬英樹 生誕50祭@大阪
「ただいま!マスター!大ちゃん連れて帰ってきたでー!」

出演 成瀬英樹/白井大輔

場所 5th Street
http://www.5th-street.com
大阪市西区南堀江1丁目1-12 浅尾ビル2階・3階

開場 18:00  開演 19:00

料金 2800円  当日 3300円

 

2018年12月10日(月)
「成瀬英樹・生誕50祭 / ヒデキ感激!ナルーソニック!」

出演:
成瀬英樹
スペシャルゲスト:
石田ショーキチ
黒沢秀樹
榊いずみ
SOWAN SONG
etc.

座り席が残り少なくなっております!


下北沢 風知空知
時間:開場18:30/開演19:30
料金:前売り¥2,800/当日¥3300
(共に+1Drink600円)

風知空知メール予約のみ(先着受信順整理番号付き)
●メール予約:風知空知 yoyaku@fu-chi-ku-chi.jp
*ご希望公演名、お名前、枚数、ご連絡先電話番号をご明記の上、お申し込みください。