「WA CHA CHA LIVE」とは、吉本興業の心斎橋筋2丁目劇場で93年から開催されていたイベントだ。毎日、若手のお笑い6組とバンド2組が出演してたんだ。僕らはその一期生。

 

オーディションで選ばれたバンドが25組くらい。その中から毎日2組、出演する。出番は「運営」がアンケートなどを目安に決めてた。僕らはオーディションで好感触だったし、レコード会社も二社ほど接触して来ていたから、推されていた方だったと思う。

 

「WA CHA CHA LIVE」の構成は、まず1組目のバンドの演奏が(3曲)あって、それからお笑いが3組、その後2組目のバンドの演奏があって、またお笑いが3組、そして全員によるエンディングという流れだった。

 

出演していた芸人の面々は若手とはいえ、当時「吉本印天然素材」で大人気だった6組(雨上がり、ナイナイ、宮川大ちゃんとほっしゃんが組んでいたチュッパチャプス、FUJIWARA、へびいちご、バッファロー吾郎)がいるわ、尖りまくっていた千原兄弟はいるわ、次世代エースと目されていたベイブルースもいたよ。(河本さん...優しく接してくれたこと忘れません。)

 

 

 

 

僕たちFOUR TRIPSの、初めての出番の司会が蛍ちゃん(蛍原徹)と岡村(隆史)さん。僕は芸人事情に疎かったので、彼らが何者かを今ひとつ理解していなかった。バンドがお笑いのイベントに出るということが、どういうことかも、よくわかっていなかった。

 

2丁目劇場に250人の10代の女の子達が、超満員で居るわけです。もの凄い熱気なわけです。彼女達にすれば、苦労してようやく手にした貴重なチケット。イベントが始まり、岡村さんと蛍ちゃんが舞台に上がると、もうそれは耳をつんざく歓声なわけ。ビートルズマニアの時代の世界中のティーンエイジャーの叫びを想像してもらっていい。大げさじゃなく、彼ら芸人達の人気は想像を絶するものだった。

 

 

 

 

そして僕らの名前が紹介されて、演奏が始まった時の、あの客席いっぱいに広がった冷たい空気を僕は一生忘れないと思う。背筋がゾッとするような感触、約250人の冷めた視線を。無遠慮に席を立つ子達。空いて行く座席。足が無茶苦茶に震え声がうわずった。何を歌ったのだろう。まったく覚えてない。

 

演奏が終了し、蛍ちゃんと岡村さんが再登場。凄まじい歓声。僕とトークをする。ふたりが僕をいじる。大爆笑。このトークコーナーが本当に嫌だった。ボーカルなんかするんじゃなかったと思ったよ。プロ中のプロが容赦なくツッコミ入れてくるんだ。何も返せずに僕は曖昧な笑顔を浮かべていただけだったと思う。初日はアワアワして終わったことしか覚えてない。

 

それでも、週一回くらいの出番は回ってくる。毎回、少女達の冷たい視線と、司会の芸人達の鋭すぎるツッコミに苦しんだ。今でこそステージでMCをするのは好きなのだけど、当時は何を話していいかもわからなかった。例えば、宮迫さんと同じ舞台で、僕に何か面白いことが言えますか?(笑)

 

そうやって出番を重ねて行って、少しずつ僕たちの音楽をお客さんに知ってもらって、メジャーデビューをすること。それが目標だった。僕に生きて行く道は、それだけしか残っていなかった。本当に必死だったよ。