雲の中。 第一章 殺人マンション 4 | 一期一会

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 実家に遺体が戻ってきたのは、昼前になっていた。

 病室にいた瑠実の家族と真野も一緒に移動し、真野が会社に連絡を入れてくれたのか、社員も数人、手伝いに来てくれた。

 通夜と葬式の会場が決まるまで、遺体は家に安置された。

 葬儀場で葬儀を行う場合、予約が取れれば、直接病院から仏様を運ぶ。だが、夜中に亡くなった場合、葬儀場の予約がとれないし、予算や宗教関係の手続きの話もあるので、通常、一度は自宅に運ばれる事例が多い。

 仏様が自宅に戻った間も、近所や親戚、会社関係の人々が挨拶に来るので、大忙しだった。

 結局、隆司は虎之助が危篤の夜も、戻って来られなかった。

 社葬にするかどうか議論に上ったが、副社長である息子の隆司がまだ釈放されない今、なにかと問題も多い。とりあえず、葬儀は親戚を中心に、葬儀場の会場を貸し切って行われる予定となった。

 だが、集まった親戚一同は、瑠美たち家族には冷たかった。

 すでに隆司が警察に連行されているのが、耳に入っているのだろう。親戚から警察沙汰になった者がいるとなると、体裁が悪いようだ。

 瑠実も隆司の事件が気になってはいたが、まだ警察に面会に行く暇もなく、何が何やらわからない。誰も一睡もできず、祖母の薫に至っては、黙って虎之助の遺体に寄り添っているままだ。誰しも疲れ切っていた。

「おばあちゃん、少し横にならんと、身体が保たんよ」

 芳美が心配して声を掛けた。だが、薫は耳に入っていないのか、放心状態で、遺体を見つめている。

「おばあちゃん、私と一緒に寝ようか?」

 たまりかねた瑠実が一緒に寝ようと誘った。それでも薫は、虎之助の横で、びくともしなかった。長年ずっと連れ添った相方の脇から離れたくない様子だ。

「おばあちゃん、聞こえちょっと?」

 瑠実が薫を揺すりながら顔を覗き込むと、目の焦点が合っていなかった。

「おばあちゃん……?」

 様子がおかしい。寝ていないからだろうか。 

 確かに、老体に徹夜は厳しすぎたと思う。けれど、場合が場合だけに、仕方なかった。

 薫も、最愛の夫である虎之助を亡くし、最期を看取りたい気持ちは、よくわかる。

 誰しも薫を労らなかったわけではないけれど、最愛の人を亡くした心の痛みがわかる分だけ、声を掛けそびれたというのが現状だった。

 再び、瑠実は薫に「大丈夫?」と、声を掛けた。それでも、返事がなかった。

 様子がおかしいと思ったが、虎之助の死に直面してショックを受けているからなのだろう。瑠実が半ば強引に薫を連れ、就寝させた。



to be  continued……