コバルトブルー色の兄弟 第二章 ラブレター 6 | 一期一会

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本も人の出会いも一期一会。時々読者、時々物書き。好きな本やコミック感想を中心に、日常のつれづれと共につぶやいていきます。

第二章 ラブレター 


<ルーク・クリフォードside>




   
 帰り道もビリーはずっと無言だった。
 ルークも何も言わなかった。けれど、このまま何もしないわけにはいないだろう。
 三年生が卒業するまであと約半年。このまま手紙の投函が半年も続くとなると、それもうんざりだし、かといってクラブの先輩である男子生徒にも言いづらい。いつかこのまま手紙が来なくなるのを待つしかないのだろか。
 無言のまま、施設に着き、ビリーとルークは自室に入った。
 施設の部屋は二人部屋だった。
 毎年、部屋割は、中学生同士の中でくじ引きをして移動になる。去年までは小学生だったルークは、今年はたまたまビリーとルークは同室だったため、本当は一人きりになりたくても、そうもいかない。
 同室の相手があまり親しくない間柄なら、気にもならないのかもしれないが、あいにく相手は兄弟で同じクラブに所属し、一緒にいない時間といえば、学校で授業を受けている時間と、入浴、トイレに行くぐらいなものだ。ヘタをすると入浴だって大浴場で一緒になるのだから、日中の半分以上は一緒に過ごす相手であった。
「兄さん……どうするの?」
 ずっと黙っていたルークだが、とうとう痺れを切らしてビリーに声をかけた。
「どうも…ないだろ。まさか手紙の相手が先輩だとはな」
 結論はいわなかった。なんとなく歯切れの悪い返事からすると、相手が先輩だから悩んでいるのか、女子生徒だと思っていたのに男子生徒だから悩んでいるのかわからない。ルークは気になってしかたがなかった。
「兄さん、兄さんは何を悩んでいるの? よく知っている先輩だから? それとも女子生徒じゃなかったから?」
「どういう意味だ?」
「どういうって……言葉のまんまだけど」
 ダメだ。止められない。これ以上言って喧嘩になるとわかっているのに。
 ルークの中では、煮え切らないビリーの態度が気になって、八つ当たりだとわかっているのに暴言は止められなかった。いや、八つ当たりというより、これは立派な嫉妬なのだと思う。
 ルークだけが持つ黒い感情に、ちっと気づかないビリーに腹が立つ。
「言葉って。じゃあルークは先輩だからというのはとりあえず置いておいても、女子生徒じゃなかったからってのは、取り方にとっちゃオレが女よりも男の方が好きだとでも言いたいのか?」
「それは……」
 ルークは言葉に詰まった。聞きたいことをズバリと言われて、思わず動揺したからだ。
 ビリーだって同じ歳の女の子にまったく興味がないわけではないだろう。だが、ここでもし、女よりも男に興味があると言われたら、ずっとショックだと思う。
 自分の気持ちを伝えるつもりはないけれど、いつかビリーにも好きな女の子が出来るだろうし、つき合うようになる日が来るだろう。
 中学校でもあれだけ目立ってもてるのだから、いつそんな日が来たとしてもおかしくはない。そうすれば自分の気持ちを封印するきっかけができるだろうし、封印できると覚悟してきたつもりだ。けれど、もしも、ここでビリーが女よりも男が好きだと言ったら――。
 ルークは想像すると、心中穏やかではなかった。
 自分はこの気持ちを一生、封印できるだろうか。同じ性を持つ者として、ビリーが選んだ相手が女性でなく男性だったら、きっと嫉妬して気が狂ってしまうかもしれない。
「オレのことより、自分の心配をしろよ。お前だって、しょっちゅう女の子にラブレターを貰ってるだろ?」
「なんでここでボクの話が出てくるの? 今は兄さんの話をしているんじゃないか」
「オレのことはいい。一人でなんとかするから」
「一人でなんとか出来るの?」
「ああ、大丈夫だ」
「なんで兄さんはいつもそうなの?」
 ああ、まただ。こんな事言いたいわけじゃないのに。後悔と失念だけが心の中に渦巻いてゆく。ビリーはルークと、これ以上顔を合わせたくないのか、手紙を握りしめると、黙って部屋を出て行った。


to be  continued……