第二章 ラブレター
<ルーク・クリフォードside>
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いつものようにクラブが終わって帰宅しようと、ビリーが昇降口の靴箱の扉を開けると、一通の手紙が入っていた。状況からすると、ラブレターのようだ。封筒の裏も確認してみたけれど、差出人の名前はなかった。
「兄さん、帰ろう」
中身を確認しようとしていた所にルークに声をかけられ、一瞬、ビリーは弾かれたように肩を上げた。
「どうしたの?」
手紙らしきものを手にしているビリーを見付けたルークは、すぐに今の状況から事を察したが、特に驚かなかった。同じような経験のあるルークは、「相手は誰なの?」と尋ねた。本来、ルークに隠し事をしないビリーは、正直に返事をした。
「わからん」
「え? わらからないの?」
「差出人名がない」
「中身見たの? 封筒になくても中に書いてあるかもしれないじゃない」
ビリーはルークのいる前で、ビリビリと封筒を破くと、手紙を広げた。
白い無地の便せんに五枚にもわたり、丁寧な文字でビリーに対する気持がつづられているもの、最後まで読んでも名前は一言も出てこなかった。今までに、ラブレターを貰った経験は何度かあるけれど、差出人の名前がないのは初めてだ。
「名前がない。もしかしたら、相手を間違えたんじゃないか?」
「うーん。どうだろう。便せん五枚にも渡って書くくらいの相手なのに? あまりに一生懸命、恋文を書いて、うっかり名前を書くのを忘れちゃったのかなぁ」
ビリーはラブレターを書いた経験がない。ルークのいうように、うっかり名前を書くのを忘れたりするものだろうか。けれど、いくら名前の書かれなかった想像してみても、相手がわからなければ返事のしようもない。
年頃のビリーにとって、女の子が気にならなくもないが、正直、今は女の子と付き合う時間があったら、勉強や好きな研究についてルークと話している方が楽しいと思う。そのせいか、今まで交際を申し込まれたことや、手紙を貰ったことは何度もあったが、全部断り続けていた。
「どうするの? 兄さん」
「どうするって。断るにも相手がわからないんじゃな。そもそも今は女の子と付き合うつもりはないし」
ビリーは、淡々と答えた。
なんだ。それだけか。
ビリーの返事を聞きながら、ルークは心のどこかで、違う心配をしていた。
to be continued……