chapter1:イーグルF22 3
小さくなるミュンホの後ろ姿をミホが見ていると、側にいたアドルフが小さくつぶやいた。
「今日の相手はどんな人なのかな……」
「相手?」
「ここだけの話……と言っても、これはみんな周知の事実ですが、ミュンホさん、かなりプレイボーイらしいのですよ。毎晩会う女性が違うのだとか」
「へぇ」
「まあ、上官のプライベートの時間までうるさく言う人はいませんし、仕事はバリバリやる人だから、誰もその事に対しては文句が言えないんですよ。なにしろ、ここは男ばかりの職場ですからね。あ、すいません。貴方も女性でした」
アドルフは慌てて失言したと、口元に手を持っていったが、ミキは「別に」とその場を濁した。
「貴方が噂のミキさんなのですね」
「噂?」
「ああ……。気を悪くされたらすいません。あんな戦い方ができるのは、もっと熟練パイロットの年長者の方だと思っていたので」
どうやらアドルフは、今までのミキを知っているようだった。
時代によってもエースパイロット(撃墜王)と呼ばれる定義は若干違ってくる。航空機ができたばかりの昔は一度の対戦で、十機以上は打ち落とさなければそう呼ばれなかったけれど、近年になるごとに、レーダーや他の計器の性能も機体進化し、プロペラからジェットへ様変わりしてからはぐっとその数は減った。
地域によっても数の差はあるけれど、通常、五機以上撃墜すれば『エースパイロット』の称号は自動的についてまわるだろう。ミキの場合、戦いに出る度に、敵の機を撃墜する数が通常のエースパイロットが撃沈する数の倍以上に昇るのだから、自覚していなくとも、どこからともなく「何事もおそれを知らない鉄のような心を持つエースパイロット」だと噂されるようになっていたとしても仕方のないことだ。
「若くて、女で悪かったな」
「いいえ。そんなことは。小柄なのはパイロットにとって好ましい体型です。体重が軽い方が機体の負担にならずにすむんです。ミキさんの体型はパイロットとしては理想的なのですよ」
今まで女だとか、小さいとか、軍人なのに小柄な体型に劣等感を持っていたミキは、その言葉を聞いて少なからず安堵した。
to be continued……