悔い改めよ

海に潜ると、僕は周りのものに触るクセがあります。
サンゴ、ナマコ、貝、ウミウシ、イバラカンザシ――
触ることによって、いろんなことが感じられますから。

もちろん、生き物が傷つかないよう気をつけています。
それから、海洋危険生物（オコゼ、カサゴなど）には手を出さないのも当然です。
しかし、僕が指示棒でつんつんしていると、なるは心配になるようです。

というのは、一昨年の夏に、とっても危険な目に遭ったからです。

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相手はオニヒトデ。 サンゴを食い荒らす憎いヤツです。
先ほど、生き物は傷つけないといいましたが、コイツは別。 成敗しても構いません。

ただし、鋭いトゲと強烈な毒を持っているので、ほんとは
僕たちのようなリゾートダイバーは、近づいちゃいけません。 刺されて死んだ例もありますから。

しかし、僕は……。
自分で退治しようとしました。 やってみたかったのです。
オニヒトデのからだの中心に指示棒を刺す！　刺す！　刺す！

トゲには充分注意していたつもりなのですが、手が滑って人差し指にトゲが刺さりました。
やっちまった！　と思うほどなく、糸を引いたように鮮血が吹き出ました。

痛くなってきたのは、陸に戻ってから。 そりゃもう激痛でした。
指先に残ったトゲを抜いて、お酢と40℃のお湯を使って解毒処置を施しましたが、「ほんとに治るの？」 と疑いたくなるほど痛かったです。

完治には１週間ほどかかりましたが、死ぬこともなければ麻痺のような症状も出なかったのは、運が良かったといえます。

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そんなこともあって、なるは心配してくれるのですが……。
人間、なかなか悔い改めることはできないものです。

相変わらず、いろんなものを つんつん しては、なるをドキドキさせているのです。