時代を彩った銘器と名曲 ~LINN DRUM(LM-1&LM-2)~ | 無頼派エレクトロ。

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こんにちは!

今回取り上げるのはコチラ。

 

(Wikipediaより)

 

ハイ、デジタルドラムマシンの銘器、「Linn Drum」ことLM-2であります。

1980年、Linn Electronics社は世界初のデジタルドラムマシン、LM-1を発売。

その後継機として1982年に発売されたのが、写真のLM-2です。

容量の都合でLM-1には搭載されていなかったクラッシュシンバルやライドシンバルを追加し、なおかつLM-1の半額というコストパフォーマンスを実現しました。

半額とはいっても、当時の日本円で100〜200万円くらいはしたんじゃないでしょうか。

デジタルドラムマシンとはすなわち、サンプリング(PCM)音源を搭載したドラムマシンのこと。

サンプリングゆえに、アナログドラムマシンでは到底表現できなかったリアルなサウンドで演奏することが可能になったわけです。

もっとも、そのスペックはLM-1が8bit/27khz、LM-2が8bit/28~35khzと、現在の機種と比べたらかなりローファイなものでした。

しかし、そのローファイさがむしろ味になっているのがLinn Drumの銘器たるゆえん。

単なる生ドラムのシミュレートとは異なる、もう「リンの音!」としか言いようのないオリジナルなサウンドで。

タイト極まりないキックとスネア、マッシブかつ深みのあるハンドクラップやカウベル・・・

Linn Drum自体は80年代半ばに生産終了となりましたが、現代のリズムマシンやシンセにもサンプリングされた音やレイヤーされた音が搭載されていることは、音楽制作されている方ならご存知の通りです。

それは取りも直さず、Linn Drumが「楽器」としての普遍的な魅力を有しているからに他ならないでしょう。

実際、アタック(中高域)の鋭いリンのサウンドは、重低音を強調したダンスミュージックとのコンビネーションが良いんですよね。

かく言う僕も、Native Instruments Maschine等に搭載されているLinn Drumのサンプル音を愛用しています。

(かつてはKAERU KAFEというメーカーのネタCDからサンプリングして使っていました。)

80年代の音楽シーンを象徴する楽器でありながら、まさに時代を超えた銘器と言えるのではないでしょうか。

 

個人的な思い出話をすると、Linn Drumの存在を初めて知ったのは、1983年に放送されたNHK教育テレビの「YOU 」という番組でした。

YMOの御三方が音楽講座を務めた回があったんですよね。

細野さんがEmulator、幸宏さんがLinn Drum、教授がProphet-5を実演していて。

司会の糸井重里さんがLinn Drumのパッドを叩かせてもらっているのを見て、「やってみたい!」と思ったのは僕だけではないでしょう(笑)

音楽に対する好奇心を掻き立ててくれた点で、Linn Drumもまた僕にとっては恩人のような楽器です。

 

 

 

さて、Linn Drumを使用した楽曲ですが、枚挙に暇がない!

エレクトロポップからブラコン、歌謡曲まで、実に幅広く浸透していましたから。

というわけで、ここではとりわけLinn Drumの特性がフィーチャーされている楽曲に絞ってご紹介します。

 

 

 

 

「Don’t You Want Me」

Human League

テクノポップ黎明期を代表する英国シェフィールド出身のユニット、Human Leagueによる1981年の大ヒット曲。

なんと、全米チャート1位を記録!

確かにキャッチーな曲ですが、どちらかというとマニアックな存在だった彼らが、なぜそこまでブレイクしたのか分かりません。

その意味じゃ、Soft Cell「Tainted Love」が全米チャートでギネスブックに掲載されるほどのロングヒットになったのもよく分からないんですけど(笑)

この「Don’t You Want Me」、Linn Drumを使用した曲としては世界的に見てもかなり早かったんじゃないでしょうか。

あくまでも生ドラムの代用というか、オーソドックスな使い方ですけど。

それはLinn Drumが発売されたばかりだったからというより、この頃のHuman Leagueの方向性によるものだったんでしょうね。

フィルで律儀に8分音符を叩いているタムが、なんとも微笑ましい(笑)

個人的にはHuman Leagueってあまり興味なくて、一番好きな曲がJam&Lewisプロデュースによる1986年の大ヒット曲「Human」だったりします。

「Human」はもう、80’Sポップスの良い部分を凝縮したような超名曲!

Jam&Lewisはプリンスファミリー出身ということで、彼らもまた殿下同様、Linn Drumの使い手として有名ですよね。

殿下に関しては、また後ほど。

 

 

 

 

「Blue Monday」

New Order

1983年にリリースされ、イギリス本国でロングヒットを記録したNew Order初期の代表曲。

やっぱり、イントロの「ドッドッドドドド」というキックの連打に尽きるでしょう(笑)

思うに、Linn Drumの鋭角的なキックだからこそ発想し得たフレーズではないでしょうか?

後年、HardfloorがリミックスしたバージョンではTR-909が使用されていましたが、やっぱりこのフレーズはリンじゃないとね・・・

金物類の使い方やシンセパーカッションとの絡みもカッコイイです。

良い意味で、この頃のNew Orderらしいぎこちなさが炸裂していて。

動画はテレビ番組出演時のもので、12インチシングルの音源がそのまま使われています。

Prophet-5、Emulator、Simmonsという組み合わせは、YMO「以心電信」の夜ヒット出演時と全く一緒ですね(笑)

この曲で提示された「16ビートで畳み掛けるドラムマシン+オクターブ・シンセベース」というスタイルは、Dead Or AliveやPet Shop Boys等の後進にも多大な影響を与えました。

ちなみにNew Orderのシングルとしては84年の「Thieves Like Us」でもLinn Drumが使用されていましたが、こちらはHuman League「(Keep Feeling )Fascination」を彷彿とさせる曲調で・・・

パクリ云々を今更取り沙汰するつもりはなく(笑)、当時の若手ミュージシャン同士が刺激し合っていた様子が窺えて興味深いです。

 

 

 

 

「I Would Die 4 U」

Prince

プリンスの存在を日本の片田舎の中学生(オレ)にも知らしめた1984年の大ヒットアルバム、「Purple Rain」からのシングル。

個人的に、プリンスはニューウェーブだと思ってます!

この曲なんてモロにニューロマンティクス風で、スティーブ・ストレンジ(VISAGE)や幸宏さんが歌っていたとしても違和感がないでしょう?(笑)

もちろん、そういう表層的な部分だけではなく、プリンスの既成概念に捉われないGoing My Wayな姿勢は、本質的な意味でニューウェーブと呼ぶにふさわしいものでした。

また、機材やレコーディング技術に関してオタクだったところにもシンパシーを抱かされます(笑)

とりわけ、Linn Drumを愛用していたことは広く知られていますよね。

象徴的な例が、「Purple Rain」からシングルカットされ全米チャート1位を記録した「When Doves Cry」。

Linn Drum主体でビートが構築されているのですが、なんとベースが入っていない!

プリンス自身は「キックがベースの代わりをしているから必要ないんだ」と語っていたとか。

さらにはチューニングを変えたりフランジャー等のエフェクトをかましたりと、偏執的なまでに使い倒していました。

もう、「リンの貴公子」と呼びたい!(笑)

上記の曲以外にも、80年代のプリンスの曲にはテクノ感覚溢れるものが多数あります。

テクノポップやニューウェーブとの関連性からもっと語られてもいいアーティストだと思うんですけど、どうでしょう?

 

 

 

 

「Bring On The Dancing Horses」

Echo&The Bunnymen

ネオサイケの旗手、Echo&The Bunnymenが1985年にリリースしたシングル。

このチョイスは、全くの個人的な趣味です(笑)

しかもLinn Drumを使用していたというエビデンスがないんですけど、この音は間違いないでしょう。

唐突に16ビートを刻み始めるハットやスネアがダサカッコイイぞ!

Human LeagueやNew Orderみたいなシーケンスフレーズも入ってるし(笑)

それにしても、1960年代のサイケデリックロック的なサウンドを志向していたエコバニが、なぜいきなりドラムマシンに手を出したのか?

それは当時、ドラマーのピート・デ・フレイタスがバンドを脱退するしないと揉めていたせいかも知れないし、あるいはKraftwerk等を愛聴していたというボーカルのイアン・マッカロクの嗜好によるものかも知れません。

イアンは後年、808 Stateの楽曲にも客演していましたし。

いずれにせよ、従来のファンからは不評だったようで、その後はあっさり生ドラムに戻ってしまいました。

もっとも、ネオサイケと呼ばれたジャンルの中には、ドラムマシンを使用していたバンドが少なからずあるんですよね。

Cocteau Twins、Clan Of Xymox、Section25、The Jesus&Mary chain、Strawberry Switchblade・・・

いずれも社交的じゃなさそうな人達ばかりなので、「ドラマーを探すより打ち込みでやった方が早い」ということだったのかも知れませんけど。

かく言う僕もその一人なのですが(笑)

 

 

 

 

「Making Of Non-Standard Music」

細野晴臣

やっぱり、Linn Drumを語る上でYMO関連は外せないでしょう!

たくさんあり過ぎてどの曲を選ぼうか迷ったのですが、今回は細野さんのソロを。

細野さんと言えば、日本で最初期のLinn Drumユーザーとしても知られていますよね。

YENレーベルの第一弾としてリリースされたアルバム「フィルハーモニー」の裏ジャケには、LM-1の写真が使われていました。

こちらの「Making Of Non-Standard Music」は、細野さんがYENレーベルの次に立ち上げたノンスタンダードレーベルの第一弾シングル。

The Art Of Noiseを彷彿とさせる、サンプリング主体のインスト・テクノポップに仕上がっています。

YMO時代の細野さんはUltravoxをかなり意識していたそうですが、この頃はトレバー・ホーンだったわけですね。

といっても、「SF映画のサントラっぽい重厚なオケ+トボけたサンプリングボイス」というセンスは、細野さんならでは。

そういや、この曲をバックに細野さんが「重いカルチャーをオモチャーと言う」と呟くファミコンのCMもありましたっけ。

ちなみに、ノンスタンダードレーベルからデビューしたUrban Danceの1stアルバムには、この曲をボーカル曲として改変した「Remaking Of Non-Standard Music」が収録されています。

また、アイドルユニット・少女隊のアルバム「From S」に収録されている「Siam Paradise」という曲も、この曲を再構築(脱構築?)したものでした。

デビュー50周年ということで各方面で盛り上がりを見せている細野さんですが、僕としてはYEN~ノンスタンダード時代の活動にも、もっと注目して欲しいです!

 

 

 

というわけで、Linn Drumとその使用曲をご紹介しました。

メジャーなアーティストの曲ばかりになってしまいましたが、次回はもっと偏った路線に走るかも知れません・・・

ではでは(^-^)ノ~~~