吊るされてから約2時間が経過…。
…それにしても、妙に客が少ない店である。
右をみるとおばちゃん1名がぐるぐるるとパーマを…。
左をみるとおじちゃん1名がバリバリリとバリカンを…。
『え?ここってもしやシニア系の店カニ?』
オジちゃんオバちゃんに対して失礼かとは思うが、
この年齢層の高さに些か不安を感じてしまう。
『ウムム…。これはもしかして、店選び失敗したカモしれんど…。』
…と、もうやっちまったことをブツブツグダグダと考えていた。
エアウェーブの熱にかかり、頭がぼーっとして睡魔が襲ってきた。
あがき疲れて、何だかどうでもよくなってしまった。
そして無になり、身を任せることにした。
zzzzz
zzzzz
ココリコ:『鳴海さん。』
zzzzzz
ココリコ:『鳴海さ~ん。終わりましたよ。』
ねこ:『…む。だいぶ爆睡してたニャ。』
ココリコに呼ばれてモッソリと立ち上がり、シャンプー台へ誘導されるねこ。
そしてシャンプー台へ座った瞬間。
寝てる間、いい具合に忘れかけていた悪の妄想が、
ここでまたモワハハ~ンとカムバックしてきたのだ。
『はぁああ~~~。
そういや髪型、マジどうなってんだか…コワイぜYO~~。』
あまりの自分の妄想の激しさにヘナヘナになりながら、
ヘナヘナ罪で再度席へ連行されるねこ。
席に座らされ、ブオオオーンとドライヤーのスイッチが入った。
数分程して、だんだんとセットされていく自分の髪型を恐る恐る鏡ごしに覗いて見てみると、
ねこ:『あにゃ!?葉◯瀬太郎じゃないゾッ!』
ねこ:『ぅおおにゃ!前髪も米良美◯になってないゾ!』
…てか、むしろ全然イイ感じな仕上がりダっ‼
き、奇跡だべ~~~。
ココリコ:『仕上がり、こんな感じですけどいかがですか?』
ねこ:『はふゥ~。吊るされてヨカッたデス~~ん。』
自分の意思を押し通したい。やりたいことを貫きたい。
と、思っている時こそ、その思いを思い切って捨ててみる。
そして成り行きに身を委ね、あるがままを受け入れることによって、
意外にも探し求めていたものが見つかったりするものだよ。
ということを今回、『吊るされた男』は教えてくれたのでした。
皆さんもタロットでこの『吊るされた男』が出た時は、
無理にあがこうとせず、逆にブラーンと身を委ねてみてください。
その道のりは決して平坦なものとはいえないかもしれません。
モノゴトがうまく進まない時ほど辛く苦しく、時間も長く感じるものです。
しかしそこを乗り越えた後は、
新しい気づきや、一皮向けた自分に出会えたり…など
悟りを開いたような世界がきっとあなたを招待してくれることでしょう。
[12]吊るされた男【完】