ここ10年位でしょうか?男性のファッション業界では「アンコン」仕立てを定着させようと頑張ってきたようですが、まだまだ極一部の「ファッションヴィクテム」にしか浸透していないように思います。
「アンコン」=「アンコンストラクテッド(非構築的)」と言う事で、古くは「アルマーニが流行らせて・・・」という説もありますが、実は私がもっと若かりし時にも既に「アンコン」という言葉は聞いたことがありました。主にトラッド屋の親父さんからですね。(同じ頃「コンポラ」ってのもありましたがw)
実は「アンコン」だけでいうとアメリカントラッドで既に存在し、その後アルマーニが流行らせ、今はナポリスタイルとして推される・・・ という形ですが、それぞれかなりタイプが異なるのが問題なんじゃないでしょうかね。
古くは「一枚仕立て(今で言う「一枚仕立て」とは違います)」と言う、裏地無しで仕立てる夏向けの背広の仕立て方があり、芯地とかパットが丸見え、という物がありました。(私は古着でそういったものを見ていたせいで、服の構造とかを知る事が出来ました。)
まあ見ていただいた方が早いので・・・。それに近い仕様の、前田誠氏の初期GALAMONDのジャケットです。
「お台場」に仕立てていますが裏地は全くありません。芯地も無しです。
但し肩パットはありますので、完全な「アンコンストラクテッド」とは言えない作りです。
また、肩の継ぎ目は大きめにパイピングして保護してあり、表地と共生地で「ひだ」の様な加工があります。これは今で言う「雨降り袖」の様になるのを防ぐパーツでしょうか。
素材はシワ加工された麻55%綿45%の物です。ジャケットと同素材のパンツでセットアップにできる商品でした。
(当時俳優の小西博之氏が刑事役(!)の際にこれをスーツにして着ていたとの情報を得ていますが、バブル期は何でもありでしたね…。)
当時のアルマーニ系とは一線を画し、ウエストもしっかりシェイプされ前田さんらしいシルエットです。
今の「ナポリクラシコ」系のアンコンと比較すると、若干肩パッドに時代を感じてしまうのは否めませんが、軽く、涼しく、しかしカジュアルに流れすぎない、盛夏の逸品と思っています。
なお、一枚襟で、襟裏はバイアスに取った共生地という、初期の仕様もそのままです。