デザイナー 前田誠 氏のスタイル | NARUのブログ

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このブログは「前田誠」という私の敬愛するデザイナーの魅力を、同じ愛好家の皆さんと分かち合いたいと言う事で始めたのですが。

 

自分的には前田さんの事を書いていくのにあたり、自分なりの客観的な切り口として「仕立て」というキーワードを設定していました。

しかし、やはり難しいですが「デザイン」についても語りたい・・・ とは思っていました。

 

ただ、洋服と言う性質上、気に入った物は「着倒してしまう=傷んでしまう」と言う事もあり、良い状態で手元に残っている物は少ないのが現状です。

また、見ていただくのも、ちゃんと着こなした状態の画像があげられればより良いのですが、なかなかそれも難しく。

ハンガー吊の状態でどれだけわかっていただけるかは心配ですが、試みてみます。

 

この2点は実は時期的にはどちらも前田さんの後任の野間口氏のデザイン時期にあたります。

但し、左の物はほとんどのディテールに前田さん期の特徴を残しており、前田さん期のパターンを使用している物と考えています。

 

右側の物はより着丈が短く、肩幅が広く、ウエストシェイプの少ない、極端な「ボックスシルエット」となっています。ディテールの仕様から見ても、野間口氏になってから、新たにデザインされた物と思われます。

画像でどこまで伝わるかは疑問ですが、いわゆる「時代を感じる」シルエットで、ちょっと今着るのは憚られます。(バブル紳士っぽさを演出するなら別ですが)

ただ、当時はどのブランドもこういったシルエットでした。バルビッシュ・ギャルソンのオムドゥ・イン&ヤン・BARREAUXも・・・。

 

しかし、前田氏のデザインセンスが残る左の物は、肩幅はジャストサイズ、着丈は長く、ウエストはしっかりとシェイプされ、控えめなサイズのラペル。ゴージラインが少し上がってさえいれば、ほぼ現在でも通用するといって良いデザインです。

 

もう一つはこちら。 どちらが古い物かわかりますか?

右は近年復刻された某ブランドの物ですが、内容は有名無実で・・・。いわゆる「スーツ量販店」の独自企画のデザインと思われます。

ややゴージラインが高く、ウエストがシェイプされ、着丈は短め、パンツはノータックという近年の標準と言ってよいシルエットの物です。

しかし左の「GALAMOND」の商品は、既に30年近く(!)前の物にもかかわらず、ジャストな肩、よりシェイプされたウエスト、より長い着丈、「シングル+控えめなピークドラペル」のスタイル、チェンジポケット等々・・・。時代を超えた個性が今も薫るものです。

 

実際、先日見かけたユナイテッドアローズかビームスの、最新の広告で取り上げられていたジャケットも、ラペルのRとゴージラインは違いますが、「シングル+ピークドラペル+チェンジポケット」という仕様は全く同一だったのが印象に残っています。

 

最近の傾向としてはもっとゴージラインが上がり、昨年辺りから着丈は長くなって来ている様に思います。

では、そういう商品と並べてみましょう。

 ・・・どうでしょうか。

 

着丈が揃ってしまいました。ポケットがスラントになっているせいもあってさらに違和感がない。前合わせのカットが裾に向けて強めのテーパーになっているところも良く似ています。

 

上の画像の物ですが、ファブリックも比較して見ましょう。

色は違いますが、シンプルゆえにいつの時代も違和感の無いベーシックな物です。

しかもGALAMONDの物は伊「Policarpo」社のファブリックを使用しています。

 

繰り返しますが、左の物は「ほぼ30年前」80年代終盤と思われる製品です。

 

また、現在これ以上に極端にトレンドを追った物というのも存在しますが、逆にそこまで「時代に流されてしまう」と、先の「ボックスシルエット」と同様にいずれ色褪せてしまう、と言うのが世の常かと思います。

 

「時代を超えてなお光る、前田誠氏のセンス」と言うものは本当に稀有なものだと感じています。

 

ちなみに下のジャケットのタグは、筆記体のいわゆる「旧ロゴ」なのですが、実はこれは初期物ではなく、西武デパートの渋谷「SEED館」で展開していた、「SEED by Makoto Maeda」のシリーズの物なのです。

当時のSEED館はデザイナーの「SEED(種)」を育てる、と言うコンセプトで、ワンフロア全部に当時気鋭のデザイナーによる「SEED by ○○」を展開していました。

あくまでも「SEED by Makoto Maeda」のフロア展開であり、「GALAMOND」ではないという位置づけから、ロゴを区別していたのだと思われます。

 

前田さんの他にはパシュの細川伸氏とか、イン&ヤンの村岡氏もあったように記憶しています。

その頃のSEED館はまだまだ新進のヴィヴィアン・ウエストウッドやキャサリン・ハムネット、そろそろメジャーになっていたゴルチエにも力を入れている、尖った、ある意味では早すぎたと言われる店ではありました。

雑誌で話題の、日本ではまだほとんど手に入らないデザイナーの物が「SEED」にはある、と言うイメージでしたね。

「SEED by」とコンセプトの近い、伊勢丹の「解放区」が大成功するのは1994年の事です。

 

SEED館は当時の「ウールマーク協会」(現:ウールマークカンパニー)とのコラボでのキャンペーン等も行っており、一時期「SEED by ○○」の全ての商品に「ウールマーク」が付いたりと言う珍事(?)もありました。

このジャケットはまさにその時の物ですね。