さて、やっとスーツの「仕立て」について。
そうとう以前からですが、「お台場仕立てが至上のものである」というような風潮が、主にメンズファッション誌の記事では顕著にあると思います。
「良いスーツの見分け方」として、「お台場仕立て」である事を目安とするような。
ただですね。「お台場仕立て」にも色々あります。
本当の、「生地も多く使うのでコストも高い(から高級)」と言うのは、前身頃の裏を一枚の生地で仕立てる、いわゆる「R台場」だけです。実はこれはあまり見かけないんですよね。
↓「本台場」あるいは「R台場」と呼ばれるものです。継ぎ目が有りませんよね。
メリットとしては身頃に芯地だけでない厚みと一体感が出ます。当然型崩れもしにくいですし、暖かさも増しますね。
デメリットとしては重くなる事と身頃に固さが出てしまう事です。そして夏場は暑いです。
意外にも英国ではそれほど一般的ではなく、日本ではかつて裏地が痛みやすく、裏地にポケットを仕込まない為「裏地の交換がしやすい」メリットから「長年愛用いただくスーツ(=高級品)」に採用された。
イタリアでは柔らかい、繊細な生地と仕立ての為「型崩れを防ぐ為に普及した」等々・・・。
諸説有ります。
現在のほとんどの商品は「継ぎ台場」と呼ばれる、一枚仕立てで無いもの。
生地を多く使うと言っても、端切れを継ぐだけですので、材料費コストはそんなに上がりません。少々手間は増えますが。
そして「継ぎ台場」の中では最も一般的なのが、「剣先台場」「切り台場」「三角台場」等々・・・の名で呼ばれる仕様です。
これはお台場と言っても本来のメリットはほとんど無く、「ポケット周囲の補強」程度の意味合いしかありません。
逆にデメリットである「固さ」等もそれほどはありませんし、コスト的にもさほど上がらないですが。
個人的には、現在の裏地等の素材の品質が向上した事や、日本の気候を考えると、いずれにしても「本来の意味合い」は失われ、あくまでもスーツの「装飾」のひとつ、でしかないという認識です。
さて、それでは私の敬愛するデザイナー、前田誠氏の手掛ける「GALAMOND」ではどうでしょうか?
はい、お台場にしてないですね。パイピングですっきり仕立ててます。
しかし、冒頭に書いた「お台場のメリット」である、「暖かさ」や「型崩れのしにくさ」等が生きる、カシミア混のチェスターコートにはしっかりと「本台場」を採用する。しかもパイピングまで。
http://ameblo.jp/papillon-monica/entry-12255876053.html
(またしてもPapillon氏のブログにリンクさせていただきました)
その適材適所といえる、仕様の使い分けが素晴らしいと思います。
(ネットからの借り物画像ですが・・・。前田さん離脱後のBERGMANでは、スーツは台場にパイピングというのが基本仕様になってました。個人的にはこれだとちょっと過剰な感じがしますね。)