1977年
「江本さんを目標にがんばります」阪神は九日午前、大阪・梅田の球団事務所でドラフト6位指名・豊原経久投手(18)=日大藤沢186㌢、75㌔、右投げ右打ち=の入団を発表した。背が高く、足も長い。エース江本とスタイルがそっくりさんで昨秋までは捕手をしていたという変わりダネ。球団側では「江本といわず、目標はもっと高くもってもらいたい」と将来性を高く買っている。契約金七百万円、年棒百五十万円(推定)ドラフト入団第一号。まるでバスケットボール選手のように背が高い。ジャンボ工藤より1㌢高く、江本には2㌢だけ及ばないというノッポさん。体つきも江本そっくりで、これで捕手をやっていたというから驚きだ。「足の使い方とか、腕の振り方は江本さんのピッチングを見て勉強しました。ハイ、江本さんを目標にがんばります」ちょっぴり緊張の入団発表。詰めエリの側にくっついた二つの耳が赤く染まった。代わりに胸を張ったのが小林チーフスカウト。「腕のバランスが非常にいい。本人は江本を目標にするといっているが、もっと望みは大きく持ってもらいたい。二、三年先、うまく育ってくれれば相当な選手になる素質がある。下半身をみっちり鍛えると楽しみですよ」中央球界では無名の存在だが、ロッテ、ヤクルトあたりも触手を伸ばしていたという。投手転向の理由がふるっている。昨秋のある日、バッティング投手をやっていたところ、二十分以上も投げていてケロリとしていたとか。その間他の投手は二人、三人と交代。当時の監督は改めて地肩の強さを再認識。急きょ投手転向を命じたものだった。現在はストレート一本やり。粗削りには違いないが、それだけに未知の魅力を秘めているといえるだろう。