1995年
秋季キャンプで一番速い球を投げているのが、フランシスコ・デラクルーズ投手(22)だ。来日は二度目。ドミニカ共和国カープアカデミー出身の期待の星である。デラクルーズの魅力は何といっても直球。190㌢の長身から投げおろす球は、常に140㌔台をマークする。球威にかけては主力級といえる。今年のドミニカ・サマーリーグで挙げた好成績(11勝1敗)も、力のある速球から生まれた。腕の長さも見逃せない。右腕は86㌢もあり、球は弓のようにしなって投げ込まれる。投球練習場では、スピードガンを手にした三村監督も思わず目を細めた。自慢の球は「二種類のファーストボール」という。球の縫い目の握り方を変えることで、一つはストレートに、もう一つは投げてみないと、どう変化するか分からない球になる。変化の仕方は球が揺れて左右に落ちていく。ただ、一軍の戦力としてはもう少し時間がかかりそう。実戦経験の少なさに加え、下半身の弱さから制球力がもう一つないためだ。野村監督も「いいものを持っている。でも、下半身が弱いんだよ。どんどん鍛えていきたいけど、急にやるとついて来られない」とじっくり育てていく方針だ。素材は文句なし。デラクルーズは輝きを持つ楽しみな原石である。

広島の日南キャンプでデラクルーズが200球の投げ込みをした。投げるスタミナづくりが狙い。残り30球ぐらいからは「ナイスボール」の声がかかる中、1球1球、力を振り絞るようにして投げた。最後の1球が捕手のミットに納まると、見守っていた三村監督、川端コーチから拍手がおきた。デラクルーズは「疲れなかったよ。ファストボールばかり投げた。終わって監督が拍手してくれたのがうれしかった」初めて経験した投げ込みは、いい思い出になったようだ。

 

1996年 

 

アストロズのアカデミーに在籍しメジャー挑戦の経験持つ。コントロールに課題はあるが140㌔台後半をコンスタントにキープする速球は魅力。今季一軍登録の可能性もあり、第2のチェコと期待も大きい。