1968年
巨人の前川スカウト担当、沢田スカウトは、ドラフト会議で巨人が三番目に指名した全常盤炭鉱・矢部祐一三塁手(22)獲得のため、十五日会社側に交渉権獲得のあいさつをするとともに、本人、父親百尾氏(52)=雑貨店経営=と会って初交渉をした。矢部をはじめ周囲が巨人に好意をもっているところから、巨人入りは時間の問題とみられる。前川スカウト担当と沢田スカウトは午前十一時、まず福島県いわき市常盤湯本町の常盤炭鉱磐城営業所に全常盤炭鉱・出沢監督らをたずね、獲得交渉開始のあいさつ。矢部選手もまじえた約一時間の話し合いで巨人側は、力のある若手内野手を求めているチーム事情を説明、出沢総監督も「ウチにもっといてもらいたい選手だが、本人の将来のことも考えれば、巨人に指名されたことしが一番いい機会だと思う」とプロ入りに賛成する考えた方をのべた。このあと前川スカウト担当、沢田スカウトは、会社にあいさつするだけというはじめの予定を変更、矢部選手を伴って、実家のある福島県田村郡小野町へ直行。午後二時すぎから町内のかっぽう若嶋屋で父親百恵氏と初交渉を行なった。「交渉権獲得のあいさつと、チームの内情説明がほとんど」(沢田スカウト)で、条件面まではいかなかったが、本人が子供のころから長島選手にあこがれており、百恵氏も巨人ファンであることから、約一時間半の話し合いはスムーズに運んだようだ。来週から沢田スカウトが条件面の話し合いのほか、会社関係者などの了解をとる本格的な交渉を行なう。
前川スカウト担当「交渉をはじめるあいさつをした。本人も周囲も巨人に好意をもってくれているようだ」
父親百尾氏「プロ入りについては会社側と本人の意思を尊重する方針だが、巨人に指名されて光栄に思っている」
矢部選手「いろいろな球団から会社を通してプロ入りの打診を受けていたが、一番好きな巨人に指名されたのは非常にうれしい。出沢総監督や、会社でお世話になった方々と相談してきめたい」