1966年

それほどスピードがあるわけでもないが、ていねいにていねいに、と攻めるのが三浦のささえになっている。その軸が他の投手ならカウントかせぎに使うスライダー。これが東映にやっかいなきめ球になっている。「去年ほどシュートがズバリときまる威力がない」(三浦)のがスライダーを多投する理由のようだ。それも「ほとんどの投手が投げるのとは段違いに曲がり方が大きい」と別当薫氏はみた。「これでは右バッターなら右翼へ流すのがうまくないととても打てない」という。三浦は二回、坂崎、種茂、佐野、西園寺から四本の長短打で2点をとられた。「リキんだうえに、堅くなっていた。どんな球を投げたのかわからない」痛打を浴びた球の種類には首をふっていたが、四人の東映打者は「カーブ」「オレのはシュートだ」といいスライダーはだれの口からも出てこなかった。東映は、三浦をKO寸前まで追い込みながらきめ球を打ち込めなかったために、立ち直られてしまった。「バックがいっぺんに5点もとってくれたからずいぶん楽になった。それでも調子は悪かったね。まっすぐははずれすり、野村さんがうまくリードしてくれたからよかっただけです。後半スピードをかえたスライダーをまじえたのがよかったかな」カーブとかわらないほど大きくすべるスライダーに東映は打つ手がなかったのだろうか。この疑問は宮沢スコアラーが解いている。「同じスライダーでも、この夜の三浦は違った。いまでは低めばかり攻めていたのに、ガラッと切り替えて高めばかりに持ってきた。ちょうど手が出そうなところへ持ってきて打たせていた」パイを握っても、大きく降り込むポカはないという三浦の読みが、東映を上回っていたのだろう。「毒島、張本の三、四番の前で途切らせるように、ずいぶん気をつかった。二人は当っているだろう。だから走者をおかないように、毒島の前で断ち切ったのがよかったんやな」この二つの読みが成功したのに、三浦はまだ先の計算をしているのか「東映さんがとくにスライダーに弱いわけではない」といった。右手の指はふつうサイズ。10勝目をかせいだ大きいスライダーの秘密はどこに隠されているのだろうか。