1971年

「からだのやわらかさ、すばらしいバネ、足の速さ、ものおじしない性格。投手としての条件をすべて持っている」稲川コーチは、こういって大洋のルーキー鵜沢達雄投手の素質に目を細める。大洋のファームにはこれといった選手がいないだけに着実に力をつけている鵜沢の成長が目を引く。七月下旬に行われた巨人、ヤクルト帯同の北海道遠征で、はじめて先発に起用されたが、二試合とも四回までに打ちこまれてKOされ、黒星を重ねた。しかし、ヤクルトとのオープン戦(七月二十五日・様似)で完投勝ちし、大器の片りんを見せた。これまでのところ3敗と勝ち星に恵まれないが、北海道遠征でもっとも力を伸ばした選手といえる。千葉県成東高からドラフト四位で入団した右腕の本格派。六月の末からスリークォーターのフォームをオーバーハンドにかえて球速を一段と増した。「速いときには平松と同じぐらいのスピードボールを投げる」(稲川コーチ)「広島の外木場に似たタイプ」(島田コーチ)と各コーチは口をそろえて将来を楽しみにしている。だから、大洋の首脳陣は、あわてず、二、三年先を目標にじっくり育てる方針だ。「勝ち星がないのは、それだけのチャンスを与えていないからだ。目先の勝敗にこだわらずに恵まれた素質を十分に伸ばす方が大切だ。しかし、これからはどしどし先発させて、経験を積ませたい」と山田二軍監督はいう。「もともと大学に行くつもりだったから、あせった気持ちはない。一軍にあがったら二度と二軍落ちしないようにがっちり基礎を作っておきたい」と鵜沢にもあせりはない。早く勝ち星をあげることと、69㌔の体重をもう四、五㌔ふやすことが、当面の目標だ。合宿でも五本の指にはいるほどの大食いだというが、体重は思うようにうえない。「ヤセの大食いというんですかね・・。ピッチングの方はボールが走るようになった。今度は大丈夫」と登板の日を心待ちにしている。首脳陣の期待と思いやりを受けて鵜沢はのびのびと成長している。