お久しぶりです、リハビリ程度に短め。
全て玉井目線。
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真っ暗で真っ直ぐな道を、1人で走る。
どこへ続いているのだろう。
周りからは不気味な笑い声が聞こえてくる。
だんだんと息が切れてきた。
視界も黒く染まっていく。
不気味な笑い声がだんだん大きくなって。
誰かから追いかけられている気がした。
「はっ!!」
体を思い切り起こした。
隣で眠る夏菜子を見て、あぁ、夢だったのか。と納得した。
久しぶりに怖い夢を見てしまったせいで、変な汗をかいているし、心臓はまだバクバクしている。
なんとなく深呼吸を数回して、またベッドに寝っ転がると、夏菜子の腕がにゅっと伸びてきた。
「ごめん、起こした?」
「んー?」
夏菜子は目を閉じながら返事をして、私を抱き寄せた。
すると何も言わずに、私の背中を規則正しくトントンと優しく叩いてきた。
それは幼い子どもを寝かしつける優しいお母さんの手のようで。
「だいじょうぶだいじょーぶ」
耳元で優しく囁かれる夏菜子の声に、なんだかとっても安心した。
私が怖い夢を見たことも、きっとこの人にはお見通しなんだろう。
「うん…ありがとう、夏菜子」
「ん」
短く返事をして、私のおでこに軽くキスをしてくれた。
でも私の背中を優しく叩くのはやめなくて。
「もういいよ、夏菜子」
「いいからいいから…」
そう言いながら半分寝そうじゃん。
だんだんと私の背中を叩くペースが不規則になって、力も弱くなってきた。
「おやすみ、夏菜子」
「……怖い夢、見たんでしょ?」
やっぱり、分かってたんだ。
「うん」
「そっか」
今度は私の頭を優しく撫でてくれた。
「でも、もう大丈夫だよ夏菜子、寝よ?」
「そうだね」
目を閉じたけど、夏菜子は私の頭を撫でるのをやめなかった。
また次第に優しくトントンと私の背中を叩くようになった。
しばらく経っても止まる気配がない夏菜子の手を不審に思って目を開けると、ばっちりと夏菜子と目が合った。
「どした?また怖い夢見た?」
「えっ、いや…」
不思議そうにこちらを見つめる夏菜子。
「夏菜子、寝ないの?」
「んー?寝るよ」
「寝てないじゃん」
「寝るってば、詩織が寝たらね」
「…なんでよ」
夏菜子はまた私の頭を撫で、次に耳を撫で、頬に手を添えてきた。
「怖い夢の続きを見ないように」
「かな…」
「続き見ちゃってもすぐ側に私がいるから、ほら、寝よう?詩織が寝たら私も寝るから」
「…うん…」
私はゆっくりと目を閉じて、眠りについた。
眠りにつくまで夏菜子は優しく背中を叩いてくれていた気がする。寝てしまったから分からないけれど。
翌朝、いつも以上に気持ち良く起床できた。
これはきっと、昨晩の夏菜子のおかげだろう。
「ありがとう、夏菜子」
今度は私が夏菜子の頭を優しく撫でたら、夏菜子がふわりと微笑んだ気がした。