ご褒美 | ももたまい妄想奮闘記

ももたまい妄想奮闘記

キモいオタクが書くももたまい小説

2人は同棲中。
全て百田目線。
いつもより短編です。


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やっと家に帰れる。
ここ2週間、仕事で家から離れていた。
詩織と一緒に暮らすようになって、毎日顔を合わせるのは当たり前になっていた私にとって、この2週間は正直に言えばとっても寂しかった。
ま、詩織には言わないけどね。
寂しかったんだよ。

玄関の扉を開けて、明るさに目を細めた。

リビングに入ると、詩織は私の元へと駆け寄ってきた。

「おかえり、夏菜子」

穏やかに笑う詩織の顔を見るのも久しぶりで、自然と頬が緩む。

「ただいま、詩織」
「そろそろ帰ってくる頃だと思ってたんだ〜」

詩織はそう言いながら私の持っていた荷物を受け取った。

「ご飯は?もう食べてきた?」
「うん、大丈夫」
「お風呂沸かしてあるから、好きな時に入って」
「ありがと」

詩織は私の荷物を寝室に片付けに行った。

うーん…このまま詩織とじゃれあいたい気もするけど、まずはお風呂に入るか。


お風呂から出て髪の毛を乾かした後、リビングに入ると、詩織は洗い物をしていた。

「しーおりっ」
「なぁに?夏菜子」

振り向く詩織を体ごとこちらに向けて抱きつく。

「ただいま」
「…おかえり?」

詩織の背中に手を回して少し背の高い肩に鼻を擦り付ける。もうお風呂に入ったのだろう、同じ匂いがした。

「私、手濡れてるよ?」
「いーよ、そんなん」

詩織の手が自分の背中に回されて、ギュッとくっつく。そんな感覚ももう久しぶりで。

「んー、ただいまぁ」
「なに?どしたの?」
「やっと帰ってこれたと思って」
「ふふっ、なにそれ」

きっと相当自分は疲れていたんだろう。
詩織とこうしてくっついてるだけで、ここ2週間の仕事の疲れが落ちていく気がする。

詩織の肩から顔を離して触れるだけのキスをした。

「ねぇ、私がいない間寂しかった?」

そう聞くと詩織は少しだけ固まって、

「……別に」

とだけ答えた。
嘘つけ、素直じゃないの。
いっつも夏菜子は素直じゃないって言われるけど、詩織だって同じようなもんじゃん。

こうなったらこっちから言ってやる。

「え〜、私は寂しかったんだけどな」

わざとらしく眉を下げてそう言ってみせた。

それでも詩織は何も言わないから、また肩に顔を埋めた。

「ねー、本当に寂しくなかった?」

と顔を上げて聞くと、詩織は少しだけ顔を背けてしまった。
なーんだ、言ってくれないのか。
今日は寝ようと思って離れようとした時に、詩織の腕に少しだけ力が入った。

「…私も……寂しかった」

小さな声だったけれど、私にはしっかりと聞こえていて。

「最初からそう言ってよ」

嬉しくて嬉しくて、詩織の唇に、頬に、首に自分の唇を重ねていった。
そして耳たぶにキスをした時、詩織の体が少しだけ震えた。

「ちょ、夏菜子、疲れてるんでしょ?」
「そうだよ?だから癒して」
「癒してって……」
「ご褒美ちょーだい」

そう言ってにっこり詩織に笑いかけると、少しだけ怒られて両肩を押し返されそうになる。
でも、この熱を逃すわけにはいかない。

詩織の首に噛みつくくらいの勢いで唇を這わせる。そのまま音を立てて吸い付けば、真っ赤な跡を残す詩織の首が愛おしくて。それが自分の仕業である事が余計に私を掻き立てる。

「ご褒美は別にいいや」
「んっ、えっ?夏菜子?」
「寂しいの我慢して2週間も待っててくれたご褒美あげないとね」
「な…!何言って」

言い終わらないうちに詩織の唇を塞ぎながら手を引いて、寝室の扉を勢いよく開ける。

ベッドに押し倒した時にはもう、詩織もその気になっていて。それはきっと気のせいなんかじゃない。

「2週間も私がいない間、何してた?」
「何って…私も仕事してた」
「でも家帰って私がいなくて?」
「夏菜子がいなくて…?」

あぁ、もう。
寂しくて寂しくて仕方なかったのは私だけなの?
なーんかつまんないな。
詩織の体から離れて横に寝そべった。
額に自分の腕を乗せて深い溜息を吐いた。

「か、夏菜子?」
「私はさ…」
「……」
「寂しかった」
「え?」
「寂しくて寂しくて…」
「……うん」

そのまま静寂が続いた。
すると唇にいつもの感触が降ってきて。
驚いて自分の腕を退けて目を開いた。

「だから、それは私もって言ったじゃん、ばかなこ」
「あぁ…うん」
「ご褒美、くれるんでしょ?」
「嫌ってほど、あげてあげる」


翌日寝坊したのは言うまでもない。