国会議員の定数、歳費について | 大人のための政治教室

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近年、国会議員の定数や歳費(給料)を減らすべきであるという考えが目立っております。

 

結論から書きますが、私はこれらの意見には反対です。

 

1.国会議員の定数について

まず、世界の主な国の下院(衆議院・庶民院)の定数と、人口(2019年)と人口比率(人口に対する国会議員の割合)を紹介します。

 

日本 議員定数:465議席  人口:1億2427万人  人口比:0.037%

中国 議員定数:2987議席  人口:14億3932万人  人口比:0.021%

韓国 議員定数:300議席  人口:512万人  人口比:0.586%

アメリカ 議員定数:435議席  人口:3億3100万人  人口比:0.013%

イギリス 議員定数:650議席  人口:6788万人  人口比:0.096%

ドイツ 議員定数:709議席(法定議席は598議席)  人口:8378万人  人口比:0.085%(法定0.071%)

フランス 議員定数:577議席  人口:6751万人  人口比:0.085%

オーストラリア 議員定数:150議席  人口:2550万人  人口比:0.059%

 

ドイツ連邦議会の定数は選挙結果によって変動しますが、最低でも法定議席数の598議席になります。現在の議席数は709議席です。

 

これを見ると、日本よりも国会議員の割合が低いのは日本より人口の多い中国とアメリカだけで、日本は決して国会議員の人数が多い国ではないことがわかります。

 

 

2.議員定数が減るとどうなるか

まず、国会議員の仕事についてかつてまとめたのでこちらをご覧ください。

 

要約しますと、内閣は行政権という大きな力を持っていますから、内閣が暴走しないように監視することが国会議員の大きな仕事です。

具体的には、内閣が作った予算案や法案の審議だけでなく、内閣が不正行為を行っていないかどうか調査し、証人の出頭や記録の提出を求める権利が国会にはあります。(憲法62条)

 

国会議員は内閣を監視することが仕事ですから、国会議員が減ると当然として内閣が暴走しやすくなり、内閣の思い通りに事を進めやすくなります。国会が完全に機能しなくなったらナチスドイツのような独裁国家となりますから、国会議員が減るとそれだけナチスのような国になりやすくなるということです。

 

ですから、私は国会議員の定数を減らすことに反対しています。国会議員を増やせとまではいいませんが、衆議院で450以上の議席は必要であると考えています。

 

 

3.議員歳費について

国会議員の年収の平均は2200万円です。

しかし、国会議員という仕事は激務であり、秘書や事務員を雇う必要があります。

公設秘書という税金で雇うことができる秘書は2名までと決まっており、それ以外の私設秘書や事務員の給与は国会議員が出さなければなりません。これらの維持費は平均して年1100万円と言われています。つまり、現在の国会議員の年収の約半分は秘書や事務員の維持費として使われているのです。

一時的に歳費を数%減らすだけであれば問題ありませんが、例えば国会議員の歳費を半額にすると、全額維持費に回り、国会議員の生活費がなくなります。

また、国会議員という身分は不安定で、参議院でも6年、衆議院ならば最大でも4年で、いつ解散があるかわかりません。選挙に落ちれば無職になりますから、無職になった後の一定期間の生活費がなければいけません。次の選挙を目指すのであれば数年分の生活費を貯金しなければならないのです。

 

こうしたことから、国会議員の歳費は決して高くないと考えます。

そして、国会議員の歳費を大幅減額させると、議員以外としての収入が大きいお金持ちしか立候補できなくなります

国会議員がお金持ちしか立候補できないのであれば、お金持ちのお金持ちのお金持ちのための政治となり、お金を持っていない人のための政治は行われなくなります。

 

以上のことから、安易に国会議員の定数を減らしたり、議員歳費を減らしたりすることには反対します。