憲法改正とは | 大人のための政治教室

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政治や社会のことを書きます。私の考えや、皆様に知っておいて欲しいことを書いています。

5月3日は憲法記念日です。今回は憲法改正について書きたいと思います。

写真は、国立公文書館で保存されている日本国憲法の原本です。

 

 

過去に憲法とは何かというタイトルで書きましたので、憲法は何かというタイトルで書きましたので、そちらも合わせてご覧ください。

憲法とは何か | 大人のための政治教室 (ameblo.jp)

 

1.憲法改正と新憲法制定

憲法改正とは何か。一般的に、「自民党は憲法改正を目指している」と言われますが、自民党が目指しているのは憲法改正ではなく、新憲法制定です。まず、憲法改正と新憲法制定の違いについて説明いたします。

 

・憲法改正とは、

まず、憲法改正という言葉は、現行憲法を元に細かい部分を加筆、修正することを意味する言葉です。

国民主権、平和主義、基本的人権の尊重という憲法の基本理念は変わらないことが前提です。これが憲法改正です。具体的には、基本的人権にプライバシーの権利を加えることや、憲法99条の憲法順守義務に罰則を与えること、国会議員の任期を変えることなど、新しいことを加えたり、これまでのことに若干の変更をしたりすることであり、世の中が劇的に変わるということではありません。

 

・新憲法制定とは

新憲法制定とは、現行憲法を完全否定し、新しく憲法を全てつくり直すことです。

現行憲法を全否定しますから現行憲法の原則が変わる可能性もあります。憲法とは国家そのものなのです。

現行憲法が否定されて新憲法が制定されると革命が起こることと同じなのです。つまり、新憲法を作るとはこれまでの日本国が消滅し、日本に新しい国が登場することに他なりません。かつての大日本帝国憲法が日本国憲法になったときに大日本帝国が日本国に変わったように、これまでの国家ではなくなります。

 

・新憲法制定でできること

憲法改正は、加筆修正だけですので、憲法改正でできることというものは限られています。

しかし、新憲法制定は何の制限もありませんから、基本的には何でもできます。あくまでも一例ですが、新憲法が可決されて施行されれば、以下のことでさえも可能となります。

 

天皇主権または天皇制の廃止、貴族制度の復活、選挙制度の廃止、侵略戦争、私有財産の否定、私権の否定、転職・転居の禁止、宗教の強制、奴隷制度の復活などなど

 

もちろん、ここまで酷い新憲法を作ろうとしても否決されるでしょうが、理論上は可能なのです。だからこそ、憲法については国民ひとり一人が慎重に考える必要があるのです。

 

2.諸外国の憲法について

諸外国では戦後何度も憲法改正が行われています。例えば、ドイツ(旧西ドイツ時代を含む)では戦後50回以上の改正が行われています。これは、あくまでも憲法改正が行われた回数であって、新憲法制定の回数ではありません。つまり、基本理念を変えずに細かい部分だけ改正された回数が50回以上という意味です。主要国で戦後新憲法制定が行われた例はほとんどありません。新憲法制定がされた例としてはフランスがあります。

フランスは1946年に戦後の新憲法が作られましたが、12年後の1958年に植民地問題のこじれで軍部から圧力がかかり、新憲法を制定せざるを得なくなりました。フランスの歴史では、1949年~1958年は第四共和政と呼ばれ、1958年から現在までを第五共和制と呼ばれます。フランス第五共和政はフランス第四共和政の後継国家ではありますが、法律上は別の国家です。

ちなみに、アメリカ合衆国は1788年に合衆国憲法制定以来、改正されたことはありますが、これを否定して別の憲法が作られるということはありません。

 

3.マスコミの調査について

大手マスコミによる憲法改正のについての世論調査が行われますが、多くの場合、「憲法を変えることに賛成ですか、反対ですか」という質問がなされます。これについては「答えようがない」というのが私の意見です、

なぜなら、賛成を選ぶと内容に関わらず賛成、反対を選ぶと内容に関わらず反対という意味になるからです。大事なことは内容であり、変える内容によっては賛成になったり反対になったりすることが一般的であると思います。内容に関係なく賛成、反対は暴論です。

 

 

憲法改正と新憲法制定の違いを明確にすることが政治家にもマスコミにも求められます。

また、単に賛成か反対かを問うのではなく、例えば、「憲法に国防軍を明記することについて賛成ですか、反対ですか」のように各条文の改正案についての賛成か反対かを問う質問をすべきです。そうでなければ答えようがありません。

 

憲法は国家そのものであり、国のあり方そのものです。

国民ひとり一人が真剣に考える必要があります。

 

そして、永遠に同じものを使い続けることはできませんが、どのようなタイミングでどのように変えるかということを考えるべきですが、すくなくとも私は今すぐに何かを変えなければならないとは思いません。