彼の地っ子 | 「しょっぱいブログ」

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えっ?そろそろアラフィフ?
KAKUTA団長・成清正紀のしょっぱーいブログ
まっだまだーっ!!

昨年の「荒れ野」が終わった頃から、妻が「彼の地2」の脚本執筆・演出作業に入った。
いったん一つの世界に没入すると、その作品の色にべったり染まる。生活と引き換えに、と言ってもいいかもしれない、じっとりべったりそれが数ヵ月続く。大変な作業だ。
北九州に滞在する今も、連日半べそで稽古についての相談や、脚本などを送ってくる。
作家というのは、とても孤独な仕事だ、と思う。

僕はいつも、書く前にプロットあげるまでの相談と、出来たものをいちばんに読ませてもらうということをさせてもらっている。妻が脚本を書きはじめたころからなので、もう15年以上の大切な僕の役割だ(読むだけだけど)。
ベッドやソファでのたうちまわる妻に向かって
「戯曲に結論なんていらないって。」とかなんとか偉そうなことも言う。
「簡単に言わないでーーっ!!」
と怒られるが、僕も観たことのないものが観たいのだ。そして、彼女はいつも僕の期待以上の戯曲を読ませてくれる。結局、僕は連載を待つファンでしかない。

そしていま妻は「彼の地2」一色だ。
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ナイスミドルもいらっしゃるけど、みんな若いソーヤング。だから戯曲もピッチピチ。昨年の「荒れ野」とはずいぶん違うな。わはは。
桑原の得意とする青春群像劇、それを街が主役の「街演劇」として組み立てる。
演出を含めて、この「街演劇」っぷりがとても面白い。小倉、門司、八幡など北九州各地方をぐるぐる回る。
映像なら容易にできようが、これは演劇だ。とてもアナログな方法で、観ている者の想像力を借りながらぐるぐる変化していく。
前回の「彼の地」も観たら小倉行きたい!って思う充分な「街演劇」だったけど、今回は戯曲構造の時点で相当なチャレンジをしている。
「イケイケ!桑原!」だ。
すっごく面白い。
今まで観たことがないので、どれとも比較しようがないし、キャストのみなさんは特に迷うかもしれないが、ほうぼうにアンテナを張り巡らして、みんなで成し遂げれば味わったことのない興奮が身体中を駆け巡るに違いない。
未知との遭遇、だ。役者冥利だ。どこぞのマネなどやりたくはない。
1日だけだけど稽古休みに小倉へ行ってきた。
半分を越える役者さんはすでに知り合いだ。

僕の家に居候させて(劇団から宿泊費出せないから!)KAKUTAに出演してもらった寺田くんや上瀧くんには特に並みならぬ親近感があるし、多田ちゃんはもちろん岡田くんや竜史くんはKAKUTAメンだ。それに旧彼の地メン、甘い丘リーディングメン、KAKUTAワークショップメン。

桑原の演出を何度も受けているメンバーがたくさんいる。だからこそ、新しい挑戦もできる。
東京でなく北九州でこういう座組が組めること自体が奇跡であり、それはやはり大小に関わらず演劇を大切にしてくださる北九州芸術劇場の日頃からの取組みのお陰だ。
とても瑞瑞しい、現場だった。
自分が読んでイメージしていたキャラクターと目の前で呼吸している役者をすりあわせる。
僕が知るみんなより、目の前のみんなの方がイキイキしてた。
う、う、うらやましい。僕も交ぜてほしい!がやめておこう(実はジャージを持って行ってた・・)。
彼の地で、彼の地へ、馳せる思いは、人それぞれだろう。
故郷がないひと、帰りたくないひと、すぐにでも帰りたいひと、そこにとどまりひどくつまらないと思っているひと、みんなそれぞれの「彼の地」が必ずあるはずで。
彼の地が自分にとってどんな街であるのか、同じ海があなたにはどんなふうに映っているのか、どんな匂いがして、どんな風が吹いて、どのひとが嫌いなのか。

「あなたに何が見えているのか。」

役者としてそれはすっごく大切なことだけど、「彼の地」ではそれをとくに感じてみたいと(勝手な思いか)。

北九州の匂いを全身で受け止めて、豊橋や池袋にイキイキとばらまいてほしい。
きっとお客さんは味わったことのない角度から、急に吹きつけてきた風に、胸をしめつけられるはずだ。
帰りの新幹線で、かしわめしをトクホのお茶で流し込みながら、みんなの演技を思い出しては遠い目をするのだった。


「彼の地2」楽しみでならない。




【成清稽古中】
オフィスコットーネ「夜、ナク、鳥」2/17→吉祥寺シアター
平日がオススメ。