『皮膚病黴毒図譜』  | ひふみのへや ~narimasu-hifuka~皮膚科専門医の備忘録〜

ひふみのへや ~narimasu-hifuka~皮膚科専門医の備忘録〜

皮膚科専門医(皮膚診=ひふみ)です。日々の診療で患者さんたちから学んだこと、主に「肌」・「皮膚」(ときどき「推し」)をテーマに綴ります。溢れる情報に溺れそうな時代ゆえ、信頼性の高いサイトも紹介します。
必要に応じ加筆/訂正することがあります。

昨日のブログで紹介した

土肥慶蔵先生

日本の皮膚科医の間では

”神”として崇められし存在

 

 

 

ドイツに留学中

外科を学んでいたのに

文部省から

やっぱり皮膚科も勉強してきてね

と言われて

ウィーンではカポジ先生(こちらも神!)

から皮膚科

ランゲ先生からは梅毒を学び

パリでは泌尿器科学を学ばれました

(留学期間1893年×月~1898年1月)

 

帰国後は泌尿器科「推し活」

の一環として(?)

皮膚科泌尿器科という

皮膚科だけでなく

オタク道としても”神”と言える人に進化した

(といってもゆるしてくれますよね?) 

土肥先生が

日本の皮膚科界にもたらした

「遺産」は莫大です

 

なかでも私が好きな「遺産」は

 

『日本皮膚病黴毒図譜』

”ムラージュ”

です

 

今回は紙面の都合上

『日本皮膚病黴毒図譜』

ご紹介します


『日本皮膚黴毒図譜』

 第100回日本皮膚科学会総会の

開催の記念品として配布されました


 数あるお気に入りから

いくつか紹介

ラブ

帯状疱疹

皮疹の特徴や分布が完璧です。

腕への広がり方をみても

画家の鋭く正確な観察力に

畏敬の念を抱きます。

着物の生地感もすごい!



(頭部)白癬 頭皮の水虫です

こんな模様のTシャツあったら 欲しい❣️


 黴毒性薔薇疹

梅毒の一期疹


 蜜柑とか南瓜とか食べたら

手足が黄色くなるあれです

写真ではないのですよ〜!


いかがでしたか?


世界中でまだ

白黒写真しかなかった時代

無彩色では伝わらない

皮膚の症状を

土肥先生と同郷の画家

伊藤有氏

が鮮やかに描きます

土肥先生の解説も!

 

もとは1903年に発行されたものの

間もなく絶版となってしまった

幻の本です

 

その後図譜そのものも散逸してしまい

復刻は困難だと思われていましたが

1990年代のはじめごろ山形市郷土館に

保存状態の良い一揃えが

残されていたことが判明し

1993年にはほぼ実物に近いものが

復刻されたそうです

 

繊細かつ詳細なイラストです

今見てもその表現力に

何よりも見る人に

皮膚の様子をひたすら正確に誠実に

届けたいという気迫が

柔らかで美しい筆致にも関わらず

ビリビリ伝わってくる様子は

ちょっと他の本では味わえません

ウインク

本を開くたびに

驚かされ

感動のため息をついております

ラブ

 

スマホ、デジカメ、ビデオ、3Dプリンター

が当たり前の現代に生まれた若者たちには

ピンとこないかもしれません

ショック

地球の反対側に住む人と

リアルタイムに通信できる世の中

スマホがあれば

かなりのことができてしまう世の中

コピペや画像処理が

簡単に楽にできてしまう世の中

では

「きれいなもの」を

実に簡単に要領良く

作り出せてしまいますが

心から

「うつくしい」

と思う物に出会える機会は

減っているような気がします

ショボーン

人生100年

とは言われていますが

砂を噛むような

味気も彩もない

日常はまっぴら御免

グラサン

無謀な反抗をし続け

現代の濁流に飲み込まれそうな時は

この本をはじめ

様々な本にすくいあげてもらって

おります

お願い

この本は

大切に大切にしたい本の

ほんの一部です

ラブ