砂糖は人を殺せるのか!? “悪魔の粉”の危険性に警鐘を鳴らす映画が話題に! リンク より引用

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 砂糖の過剰摂取による心理的・身体的な依存症を指す、「シュガー・ブルース」という言葉を聞いたことがあるだろうか。もともとは1919年に作られた曲のタイトルだったが、1970年代に出版されたウィリアム・ダフティによる同名書籍(邦題「砂糖病 甘い麻薬の正体」)がこの言葉に新たな意味を与えた。これは、砂糖(精製糖)の危険性を初めて警告した本だといわれている。

■砂糖税導入は肥満リスクの抑制の救世主になるか
 2015年、WHO(世界保健機関)は肥満や虫歯対策として、1日の摂取カロリーのうち砂糖を5パーセント未満に抑えるよう呼びかけるガイドラインを発表した。また、イギリス政府は砂糖の摂り過ぎによる子どもの肥満を減少させるために、2018年から100mLあたり5g以上の砂糖を含有するソフトドリンクに課税する方針を固めた。
 すでにフィンランドやフランス、メキシコなどで同様の課税が行われており、メキシコではすでに過半数の消費者が砂糖入り飲料の摂取量を減らすようになったという結果が出ている。
 このように、肥満や虫歯と砂糖の関係をWHOや各国政府は重視しているが、7月23日公開の映画『シュガー・ブルース 家族で砂糖をやめたわけ』では、各専門家や活動家が「砂糖摂取は、2型糖尿病や時には死に至るさまざまな病気までも引き起こす」と主張している。
 本作は、アンドレア・ツルコヴァー監督自身が妊娠型糖尿病と診断されたことをきっかけに、砂糖の秘密を探るため世界8カ国を巡り、医師、研究者、政治家、啓発活動家などに取材を敢行したものである。
 ここで「砂糖」と呼ばれているのは、糖蜜を分離して甘さの源のショ糖のみを精製した分蜜糖(上白糖、グラニュー糖、三温糖などの精製糖)だ。精製時には甘さを追求するためにミネラルやビタミンが除去されているという。
 監督は「専門医の多くが砂糖と2型糖尿病の関係を否定している」と前置きしながらも、砂糖原因説を前面に押し出す。ニューヨーク市立大学心理学教授のリチャード・ボドナーは、「精製糖は吸収が早く血糖値を急上昇させる。その結果、膵臓からインスリンが大量に放出され血糖値が急激に低下するため、すぐにまた甘いものが欲しくなり、それが続くと2型糖尿病を招く」と説明。
 実際この因果関係に関しては、2015年に「砂糖入り飲料を習慣的に摂取すると、肥満の有無に関わらず2型糖尿病発症リスクが高くなる」という英国・ケンブリッジ大学の調査 結果がBMJオンライン上で発表されている。

■うつ、ADHD、統合失調症を引き起こす可能性も?
 映画に登場する研究者は、砂糖がADHD(注意欠陥・多動性障害)、アルツハイマー、統合失調症など、さまざまな脳疾患の原因にもなることも指摘する。こうした意見には相反する考え もあり、なかでもADHDに関しては、米国立衛生研究所(NIH)も砂糖との関連性に懐疑的な姿勢を示している。
 さらに、「非感染性疾患による死亡者のうち喫煙が原因だったのは約14%で、残りのほとんどは砂糖が原因」、「砂糖は殺人の第一容疑者」というジャーナリストたちのコメントも紹介。徹底的に砂糖及び砂糖業界の罪を追及する。
 世界中に多量の精製糖を含む食品が氾濫しているのは確かなことだ。だが、監督はそれらの「過剰摂取」に対する自己責任や食生活への管理能力に関しては、あまり言及しない。一方では、自分の子どもに「SUGAR CAN KILL」(砂糖はあなたを殺す)というシールを店の商品箱に貼らせるなど、行き過ぎた行動に出る。
 ただ、この作品の矛盾性や過激性には、結果的に「砂糖の危険性」に目を向けさせる力がある。専門家の意見が分かれる中、「砂糖は本当に悪魔の粉なのか」「そんなに多くの病気をもたらすのか」を自分なりに調べ、判断するよいきっかけになるのではないだろうか。