コロナ禍をきっかけに、おうち時間が増え、高級食パンの売り上げやホームベーカリーのための小麦の購入が増えている。その中で海外産の小麦に含まれるラウンドアップ(グリホサート)の危険性への関心が高まっている。東京大学の鈴木宣弘教授は、日本のほとんどの食パンからグリホサートが検出され、日本人は世界で一番たくさん摂取していると警鐘を鳴らしている。

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長州新聞より引用( リンク )

●米国人が食べないものを日本に送るのか~日本人は家畜ではない
 米国の穀物農家は、日本に送る小麦には、発がん性に加え、腸内細菌を殺してしまうことで様々な疾患を誘発する除草剤成分グリホサートを雑草でなく麦に直接散布して枯らして収穫し、輸送時には、日本では収穫後の散布が禁止されている農薬のイマザリルなど(防カビ剤)を噴霧し、「これは〇〇(日本人への蔑称)が食べる分だからいいのだ」と言っていた、との証言が、米国へ研修に行っていた日本の農家の複数の方から得られている。

 グリホサートについては、日本の農家も使っているではないか、という批判があるが、日本の農家はそれを雑草にかける。それが問題なのではない。農家の皆さんが雑草にかけるときも慎重にする必要はあるが、いま、問題なのは、米国からの輸入穀物に残留したグリホサートを日本人が世界で一番たくさん摂取しているという現実である。

 農民連分析センターの検査によれば、日本で売られているほとんどの食パンからグリホサートが検出されているが、当然ながら、国産や十勝産と書いてある食パンからは検出されていない。【表⑪参照】

 しかも、米国で使用量が増えているので、日本人の小麦からのグリホサートの摂取限界値を6倍に緩めるよう要請され、2017年12月25日、クリスマス・プレゼントとして緩めた。残念ながら、日本人の命の基準値は米国の必要使用量から計算されるのである。

 また同じく、米国農務省タープルトラ次官補は「実際、日本人は一人あたり、世界で最も多く遺伝子組み換え作物を消費しています」とのべている。「今さら気にしても遅いでしょう」というニュアンスである。

 小麦も、牛肉も、乳製品も、果物も、安全性を犠牲にすることで安くダンピングした「危ないモノ」は日本向けになっているが、命を削る安さは安くない。日本では、まさか小麦にグリホサートはかけないし、乳牛にrBST、肥育牛にエストロゲンも投与しない。コロナ・ショックの教訓とともに、得られるメッセージは単純明快である。国産の安全・安心なものに早急に切り替えるしかないということである。

●コロナ禍 豊かに暮らせる社会 鍵は無理しない農業
 これからは、国民が日本全国の地域で豊かで健康的に暮らせる社会を取り戻さねばならない。そのためには、地域の基盤となる農林水産業が持続できることが不可欠だ。それは、小規模な家族農業を「淘汰」して、メガ・ギガファームだけが生き残ることや、オトモダチの流通大手企業などが虫食い的にもうけることでは実現できない。それでは地域コミュニティが維持できないし、地域の住民や国民に安全安心な食料を量的に確保することもできない。

 安いものには必ずワケがある。成長ホルモン(これだけで4割安くなる)、残留除草剤、収穫後農薬、遺伝子組み換え、ゲノム編集(現在ゲノム編集トマトを家庭菜園向けに無償配布して後代交配で広げていこうとしている)などに加えて、労働条件や環境に配慮しないソーシャル・ダンピングやエコロジカル・ダンピングで不当に安くなったものは、本当は安くない。
 本当に「安い」のは、身近で地域の暮らしを支える多様な経営が供給してくれる安全安心な食材だ。国産=安全ではない。

 本当に持続できるのは、人にも牛(豚、鶏)にも環境にも種にも優しい、無理をしない農業だ。自然の摂理に最大限に従う農業だ。経営効率が低いかのようにいわれるのは間違いだ。人、生きもの、環境に優しい農業は長期的・社会的・総合的に経営効率が最も高い。不耕起栽培や放牧によるCO2貯溜なども含め、環境への貢献は社会全体の利益だ。地域の農林漁家から農地や山や海を奪い、「今だけ、金だけ、自分だけ」の一部大手企業に地域を食いものにさせるようなショック・ドクトリンとは対極にある。

 消費者も単なる消費者ではなく、国民全体がもっと食料生産に直接かかわるべきだ。自分たちの食料を確保するために、地域で踏ん張っている多様な農林漁家との双方向ネットワークを強化しよう。地域の多様な種を守り、活用し、循環させ、食文化の維持と食料の安全保障につなげるために、シードバンク、参加型認証システム、有機給食などの種の保存・利用活動を強化しよう。それらを支援し、育種家・種採り農家・栽培農家・消費者が共に繁栄できる公共的支援の枠組みも提案していこう。