奈良雪田の書道作品集です。書道に興味関心を持っていただければ幸いです。
徳を養い育てる。徳をはぐくむ。「古代文字墨場必携・甲骨文編(木耳社)」を参考にした。「育」は、母が子を慈しむ様子を表した。左右の線質の違いに目をやっていただきたい。「徳」では、上部の2本の縦画と「育」の左側の縦画に目をやっていただきたい。今回は、「徳」の右側の横画を下げて上部の縦画を強調した。前回は、2/11。
深い趣があり余情豊かなこと。「幽」では、表情豊かな2つの「幺」を比べていただきたい。「玄」では、どっしりと安定感のある3本の横画と2つの三角形に目をやっていただきたい。
「風」の甲骨文字で、羽毛の長い鳥が冠をかぶった形。冠は尊貴の象徴で、神格化された鳥である鳳凰を表す。殷代には、鳳凰が風を司ると考えられていた。今回は、細めの張った線で白を多くとった。速度の変化を中心に見ていただきたい。風を感じていただければ幸いである。
「鳥歌花舞」より。これは、鳥が歌い花が舞い散る春の風情を表す。「花」では、左右の縦画を比べていただきたい。また、上下の疎密にも目をやっていただきたい。「舞」では、上下の縦画と横画を比べていただきたい。また、潤筆と渇筆の疎密にも目をやっていただきたい。
「鳥歌花舞」より。これは、鳥が歌い花が舞い散る春の風情を表す。「鳥」は、梅の枝などにとまってさえずる小鳥がうかんでくる。横画と点の変化に目をやっていただきたい。「歌」は、地面に群れだって餌をついばむスズメがうかんでくる。「へん」と「つくり」のころころとした変化を見ていただきたい。
こころよい。たのしい。たのしむ。木に糸を張ったさまにより弦楽器、音楽、ひいては「たのしむ」意を表した。他の説では、「松」を表し、上部は「まつぼっくり」を表しているという。松の葉や枝は油分を多く含んでパチパチと勢いよく燃える。その火を囲んで踊ったり、歌ったりする様子を表しているというもの。そんな楽しい雰囲気が今回の作品を見ていると浮かんでくる。前回は、1/7。
「花紅柳緑」(かこうりゅうりょく)より。この意味は、春のきれいな景色の形容。転じて、色とりどりの装いの形容。また、人の手を加えていない自然のままの美しさの形容。「花」は、スイセンを連想する。上部は白と黄色の花、下部は緑の葉や茎といったところか。しなやかに伸びた縦画を見ていただきたい。「紅」は、梅を連想する。「へん」の上部は梅の花、下部と「つくり」は枝や幹というところか。特に、縦画の「そり」や「しなり」に目をやっていただきたい。前回は、2024/9/26。
我欲・私心のないこと。無心であること。今回は、北魏のごつごつした力強い楷書をイメージして書いた。「無」では、4本の縦画と4つの点のリズミカルな動きを見ていただきたい。「我」では、2画目の横画の始筆と「そり」を「無」の3本の横画と比べていただきたい。
草木を成長繁茂させる暖かな風、南風、君主の恩恵の喩え。「惠」は、草木の芽がまっすぐ伸びる様子を表した。疎密と白に目をやっていただきたい。「風」は、寒さが和らいできた様子を表した。線の傾きや「ゆれ」、黒に目をやっていただきたい。前回は、1/28。
大いなる名器はなかなかできあがらない。できあがってしまうと形が定まり、用途も限られ、大器でなくなる。いつまでも完成しないところに、大器としての特色がある。(老子40)「大」は、横画の右側が長く下に下がり、左払いも大きく伸びたので、右払いは途中で止めた形になった。その影響は、後の3文字に出たようだ。「器」では、4つ目の「口」を縦長にした。「免」では、8画目の横画を右に伸ばした。「成」では、左側の下方に白をつくり、右側の左払いを伸びやかに書いた。
日々新しくなる。「日」では、内部の2つの白と3本の横画の変化を見ていただきたい。「新」の左側は、「木」と「辛」を重ねたもの。斜めの画の変化や疎密を見ていただきたい。右側は、斧の象形の「斤」。細く鋭い線と左側とのバランスを見ていただきたい。前回は、1/29。
「慶雲昌光」より。この意味は、めでたき雲に美しい日の光。瑞祥(めでたいしるし)のこと。めでたいさま。「昌」では、上下、左右の黒白に目をやっていただきたい。また、上下の「白」の線質の変化も見ていただきたい。「光」では、上部の点による2つの白と下部の疎密を見ていただきたい。左側に余白を多くとって、部屋に差し込む光を表した。
どんな困難にぶつかっても、意志を貫くこと。「不撓不屈」より。「不」は、円。3画目の「はね」や4画目など、前日の「不撓」の「不」と比べていただきたい。「屈」は、横長。しめて書いた「口」に対する豪快な左払いや、「出」の2本目の横画の「うねり」を見ていただきたい。前回は、2024/5/11。
どのような困難にあっても屈しないこと。「不撓不屈」より。「不」は、横長。腰を落として攻撃を受け止めるようすを表した。特に、力強い1画目の横画や4画目を見ていただきたい。「撓」は、四角。特に、「へん」をぐっと押し返すような力強い「つくり」を見ていただきたい。前回は、2024/5/10。
めでたいことの起こる前兆とされる雲。「慶」は、果物がいっぱいのった高坏のよう。特にしめて書いた堅固な下部を見ていただきたい。「雲」は、悠然とたなびく雲である。上部や下部を「慶」と比べながら見ていただきたい。前回は、20240207。
「一陽来復」より。この意味は、冬が終わり春が来ること。また、悪いことが続いた後で幸運に向かうこと。「来」では、上下の黒、特に上下の左払いや縦画のしなりと終筆を見ていただきたい。「復」では、「日」の部分の白と下部の太さを見ていただきたい。再出発の意気込みを込めた。
「七十にして心の欲するところに従えども矩 (のり) をこえず」(論語)より。「従」は、「へん」の縦長、「つくり」の横長。「へん」と10画目のボリュームを見ていただきたい。また、しめて書いた9画目にも目をやっていただきたい。「心」では、点に目をやっていただきたい。2画目の縦画部分を点のように書いた。さらに、横画部分を短くして3・4画目の点を強調した。
「一陽来復」より。この意味は、冬が終わり春が来ること。新年が来ること。また、悪いことが続いた後で幸運に向かうこと。「一」では、気張ることなく、ゆるやかな線のシンプルさと「陽」とのバランスを見ていただきたい。「陽」では、まず甲骨文字のような「へん」に目をやっていただきたい。「つくり」は、「一」の横長に対して縦長を強調した。上部をしめて下部の伸びやかさを見ていただきたい。
自らを研究する、磨き修める。「自」は、「鼻」の象形。線の太い細い、潤筆と渇筆、どっしり感を見ていただきたい。「琢」は、まさかりの象形と豚の象形「豕」。安定感のある左と動的な右を比べていただきたい。
1日に何度も自分の言行をふりかえってみて、過失のないようにすること。「古代文字墨場必携・甲骨文編(木耳社)」を参考にした。「三」は、横画の傾きと黒白などを見ていただきたい。「省」は、「生」と「目」からなり、「生」の下部が「目」と重なっている。細くアンテナのような上部と、太く「心」のような下部を比べていただきたい。また、左上の黒と右下の白にも目をやっていただきたい。前回は、1/25.