「サンソン」終演 | 奈良坂潤紀オフィシャルブログ「Narasaka Sacas」Powered by Ameba

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「サンソン」激動の幕が下りた。

半分以上の公演が中止。
個人的にも様々な困難とぶつかった4ヶ月間。

「サンソン」のパンフのプロフィール欄に
自分の好きな映画を一つあげるという設問があった。

僕が選んだのは『さらば、わが愛/覇王別姫』

1993年の中国の映画。
日中戦争や文化大革命などを背景として時代に翻弄される京劇役者の小楼と蝶衣の目を通して近代中国の50年が描かれる。

レスリーチャンの京劇の美しさに圧倒されるが、ただただ舞台に全人生をかけているだけなのに、時代が変わるたびあまりにも翻弄される2人。

芸術は不滅であるとでも語るように要所で登場する刀で幕を下ろす。
そう舞台は不滅だ。

いつの世も役者はただただ舞台に全人生をかけているだけなのに、時代が変わるたびに翻弄され続けるもの。

この作品の登場人物も時代の流れに翻弄されるが、この公演も世の中の流れに翻弄され続けた。

しかし役者はどんなに辛くても今日のお客様を前に最高のパフォーマンスをするだけ。

それはどこか3000もの首を刎ね続けた死刑執行人の姿と重なる。

確か東京公演初日にこの内容のツイートをしたのだが
座長の稲垣吾郎さんに久留米公演の休憩中に
「このツイートを見て僕も同感です。」というお言葉を頂いた。

コロナ禍で常にマスク、会話も必要最小限という環境でほとんど会話を交わす機会は限られてしまったがご主人様役の座長の暖かい言葉に大変感動した一時だった。

私の役は主人のサンソンと共に貴族でも、民衆でもない、どの群れにも属さない絞首刑人の家系の助手。

人に蔑まれようと、心が壊れようと粛々と任務を粛々と遂行する。
それが国家のためである限り…

その苦悩と繊細さが一挙手一投足からありありと伝わり
こちらも言葉は交わさずとも自然と心が動く素晴らしいご主人様。
そして暖かい座長でした。

散々稽古してきたクライマックスシーン。
心を鷲掴にする先輩方の断頭台での散り際のお芝居。
そしてその生き様を誰よりも間近で受け止め続けてきたこの日々は自分の役者人生に残る尊い時間だったと今でも噛み締めています。

配信をご覧頂いた皆様もありがとうございました
僕も配信を観て今さらながらこの舞台の全貌を知る…。
舞台はまさに一期一会。
でも今回失った20公演と今さらながらの反省とリベンジの為にいつかまたこの作品に出会えますように!
コロナ禍はまだ続くけどその日まで刃を研ぎ続けよう

そう心は抑えるものでは無く、動かすためにあるのだから


この作品に関わって頂いた全てのスタッフ
キャスト、そしてお客様
本当にありがとうございました
「サンソン」助手役 奈良坂潤紀