『生物 大量絶滅』
第1回
1回目の大量絶滅
(オルドビス紀末)
(4億4400万年前)
(三葉虫)
オルドビス紀(4億8540万年前~4億4380万年前)
オルドビス紀中期、陸地のほとんどは南半球にあったゴンドワナ大陸でした。
大陸の周辺には浅く平坦な大陸棚が広く続き、浅く温かい海にたくさんの生物がいました。
極地に氷はなく温室気候のおかげで海水は心地よい暖かさを保っていました。海岸線では苔類に似た植物や多数の脚を持つ節足動物がゆっくりと陸地へ進出し始めており、海の中では多様で奇妙な生命であふれていました。
オルドビス紀初期はカンブリア紀から引き続いて気温が高く、海洋温度は40℃を越えていたと考えられています。
この時代、陸上に生物は存在しておらず、ほとんどの生き物はまだ海で暮らしていました。
ウミユリは見た目は植物に似ていますが動物です。ウニやヒトデも含まれる棘皮動物というグループの仲間です。花のように見える部分は触手で、プランクトンなどを捕まえて食べていました。ウミユリの多くは古生代のうちにほとんど絶滅しましたが、現在も深海に住むウミユリの仲間が生存しています。
大きな目をしたコノドントは、体長は5~50cm。特異な円すい状の歯を持ち、現代のヤツメウナギやメクラウナギの祖先と推定されています。
現在のところ最古といわれる魚アランダスピスは、ヒレがなく泳ぎはヘタクソ。アゴの骨が無いので、水底を這って小動物や有機物を口に入れていました。
オウムガイを代表とする軟体動物や三葉虫のような硬い殻を持つ節足動物、半索動物と呼ばれる生物が海の主役でした。軟体動物のオウムガイはカンブリア紀にあらわれ、オルドビス紀に全盛期を迎え多様化しました。オウムガイはアンモナイトの祖先にあたる生物で、白亜紀の大量絶滅でアンモナイトが絶滅したにも関わらず現在でも生き残っています。、大きな環境変化の影響が少なかった深海に住んでいたのが幸いしたのではないかと推測されています。長さ5mにもなる尖った殻を持つ巨大なものもいたオウムガイは、貝殻を持っていますが実は頭足類の仲間でイカ・タコに近い生き物です。貝は付いていますが触手部分はイカ・タコと似ています。
この時代、陸上に生物は存在していないとされてきましたが、約4億7000万年前(オルドビス紀中頃)の陸上の地層から節足動物の足跡化石や植物の胞子の化石が見つかりました。見つかった胞子化石には陸生植物特有の特徴が見られるため、藻類やコケ植物などの何らかの植物が、陸へ進出したと考えられています。
さまざまな奇妙な生物が繁栄していた「オルドビス紀の生物大放散事変」はカンブリア爆発と連続的であったと考えられるようになりつつあります。
大量絶滅(4億4400万年前)
現在知られている5つの大量絶滅のなかで2番目に大規模なこの出来事は、オルドビス紀とシルル紀の境目となる「O/S境界(Ordovician–Silurian boundary)」で起こりました。
2020年に中国科学院南京地質古生物研究所は、雲南省永善県でオルドビス紀とシルル紀の地層が完全に連続している境界面を発見しました。この研究によれば、大量絶滅は4億4310万年前から4億4290万年前までの20万年の間に発生していたとされています。
地質学的にはごく短い時間のうちに、超大陸ゴンドワナに広大な氷床(氷河)が形成され、海面が大きく低下して広大な浅海域が失われました。オルドビス紀前期が終わる頃には気温が短期間で急激に低下し、43℃ほどだった海洋温度は現代と変わらない23℃前後にまで下がりました。オルドビス紀後期かけて氷河が拡大すると、気温はさらに下がりましたが末期に再び気温が急上昇しました。
この大量絶滅は、オルドビス紀末期のヒルナンシアン期(4億4520万年前から4億4380万年前)の間に起き、絶滅のピークは2つに分かれていました。一度目の絶滅事変はヒルナンシアン期の初頭に起こり、氷床の形成に伴う海退とその時期が一致しています。二度目の絶滅事変は中期に起こり、氷床の融解に伴う海進と時期が一致しています。一度目の絶滅事変ではフデイシが、二度目では腕足動物といった底性生物が打撃を受けました。
この大量絶滅では、海洋生物全体では49%から60%の属が絶滅し、種レベルでは85%が地球上から姿を消しました。
三葉虫(半減)、ウミリンゴ、筆石、コノドント、サンゴ、シャミセンガイのような腕足動物(2枚の殻をもつ生物)などの暖かい海にすむ海洋生物が最も大きな影響を受けました。
腕足類のシャミセンガイの仲間はこの絶滅を生き残り、現代では11種を見ることが出来ます。生き残った理由としては、干潟のような外敵の少ない場所に生息していたことがあげられます。
大量絶滅の原因
大量絶滅の原因はよくわかっていません。それを知る手がかりは大陸の移動によって深く埋もれ散逸してしまったからです。
どの要因も原因と結果の相関関係だったり、複合的に発生した可能性は高いのです。
他の大量絶滅現象と同様に、絶滅の過程には火山活動やそれによる光合成や生物生産性の低下・食物連鎖の破壊・海洋無酸素事変を伴っていた。大気中の二酸化炭素を消費する陸生藻類や微小植物プランクトンの出現と繁栄は、温室効果を減少させて気候システムの氷河期時代への移行を促進するという、この時期に特有の役割を果たした。
●ゴンドワナ大陸の移動
オルドビス紀の気温の乱高下は、南半球に集中したゴンドワナ大陸の移動によるものと考えられています。冷たい海流を遮断するような大陸配置と、南極で発達した氷河で冷やされた海流が循環する大陸配置が繰り返されたことによるものです。さらに、大陸移動による活発な火山活動からの温室効果によるものとされています。
オルドビス紀末、大陸氷河の増大でました。浅瀬にすむ生物は生息地の寒冷化と縮小により大打撃を受けました。この寒冷化により大陸では氷床が発達し、世界的に海面は数十mも低下しました。すると広大な大陸棚が陸化し、四放サンゴや床板サンゴからなる生物礁や、そこを住処としていた三葉虫、腕足類、筆石、コノドントなどが大打撃を受けました。
ところが、寒冷化はすぐに終わってしまったのです。
今度は氷河が解け出すと海面が再び上昇し水没や気温の上昇、さらに大気組成の変化などが起きて、せっかく生き残った種も死に絶えてしまいました。
●火山噴火
大量絶滅は火山噴火による地球寒冷化によるものという説があります。
火山の大噴火で、マントルにあった水銀とともに二酸化硫黄ガスが大量に放出されて成層圏で亜硫酸ガスに変化しました。この硫酸が浮遊微粒子(エアロゾル)になって太陽光を遮断し、寒冷化して大量絶滅に至った、というシナリオです。
火山の大噴火が起こると一時的に寒冷化が進み、しかしその後は大量に放出された温室効果ガスにより温暖化が進行します。
2017年に、東北大学大学院などの研究チームにより、火山噴火による地球寒冷化が原因ではないか、という研究発表がされました。高温でのみ生成されるコロネン(カルパチア石)が発見されています。
近年、オルドビス紀末の大量絶滅に関連したのは、中国の揚子江(長江)流域に厚く堆積した火山灰であることが指摘されました。これら火山灰の噴火年代がオルドビス紀末の約4億4400万年前であることが分かったからです。
火山灰にはリンや鉄などの栄養素が多く含まれており、海洋に流れ込むと植物プランクトンの爆発的増殖が引き起こされます。オルドビス紀末に植物プランクトンは光合成によって大気中の二酸化炭素を吸収し、その結果として地球の気温を急激に低下させました。また、オルドビス紀後期に噴火し、現在のアメリカ中北部やスウェーデンに堆積している火山灰も海に流入し、寒冷化を促進させました。残存する火山灰は軽く富士山の体積の10倍は超えており、年間に1km3を超える火山灰が海に流入したと推測されています。
●金属汚染
フランス、リール大学などの研究チームが学術誌「Nature Communications」に発表した。高濃度の鉛、ヒ素、鉄などが、古代の海で繁栄していたプランクトンに似た微生物に重度の奇形を生じさせたということです。海洋の酸素が減少したことにより海底の有害金属が水中に溶け込んだ可能性も指摘されています。リビア砂漠に掘られた深さ2000メートルの穴から採掘した化石を分析した結果、この化石からは予想より100倍も多くの奇形の例が見つかり、重金属濃度は最大で予想の10倍に達しました。
有毒金属は食物連鎖の下位の栄養段階にある生物を死に至らしめ、個体数の減少を引き起こし、その結果として食物連鎖の上位に位置する摂食生物の餓死をもたらした可能性があります。
中国とアメリカ合衆国に分布するO-S境界付近の地層から高濃度の水銀が検出されており、大規模な火成活動で水銀が大気中に放出されたと推測されています。
●ガンマ線バースト
地球が6000光年以内に起こった超新星爆発によるガンマ線バースト の直撃を受けたためという説もあります。
大きな恒星が最後を迎えるとき超新星爆発を起こします。そのときに爆発する恒星から光速に近いスピードで強いガンマ線が放出されます。これがガンマ線バーストと呼ばれる現象で、宇宙でもっとも強力なエネルギーとされており、何十億光年先までその影響が及ぶほどです。
2005年、「1回目(オルドビス紀末)の大量絶滅は、地球近辺で起きた超新星爆発によるガンマ線バーストが数十秒間にわたって地球を襲って、地球大気のオゾンの半分が即座に剥ぎ取られ、惑星の光合成に携わる生物を含む地表生物の多くが高レベルの極端紫外線放射を浴びただろう。」という仮説をNASAとカンザス大学の研究者が発表しました。
しかし、このようなガンマ線バーストが地球の近くで起こったという証拠は、今のところありません。
大量絶滅後
氷床が融解して海水面が上昇すると再び絶滅のピークが訪れましたが、それが安定すると絶滅事変も収束を見せました。
そして次の時代(シルル紀)には節足動物やサンゴが繁栄します。
全球凍結や大量絶滅などの過酷な環境変化の後には「大適応放散(だいてきおうほうさん)(adaptive radiation)」というものが起きて、生物が生き残るための適応性を増大させるといわれています。適応放散という現象は、単一の先祖が多様なニッチ(空き)に適応して行くことで、それぞれが別の種に分かれていったことによるものと考えられています。一般に大きくニッチが生じるのは何らかの理由で大規模な撹乱を受けた場合であるとされています。
具体的には三畳紀末の大量絶滅で空いた偽鰐類のニッチを恐竜が、白亜紀末の大量絶滅で空いた恐竜のニッチを哺乳類が埋めたのでした。
なおこの大量絶滅によって、生命が進化の方向性を変えることはありませんでした。このとき存在した形態(脊椎動物の祖先も含む)は、数百万年後にほぼ元通りに回復していました。
絶滅は原因がどのようなものであれ、生物の進化にとっては非常に大きな影響を与えるもので
あり、一面では「絶滅は進化の原動力である」とも言えます。
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(担当B)
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