『生物 大量絶滅』 第1回 1回目の大量絶滅(オルドビス紀) | 奈良の鹿たち

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『生物 大量絶滅』

第1回

1回目の大量絶滅

(オルドビス紀末)

(4億4400万年前)

 

 

 

 

 

 

 

<オルドビス紀>

 

オルドビス紀中期、陸地のほとんどは南半球にあったゴンドワナ大陸でした。

古生代はカンブリア紀-オルドビス紀-シルル紀と続きます。

オルドビス紀初期は、極地に氷はなく、カンブリア紀から引き続いて気温が高かった。大気中の酸素濃度は約13%で現在より低く、二酸化炭素濃度は現在の8〜14倍で温暖な気候が維持されていました。

陸の周辺には浅く平坦な大陸棚が広く続き、そこにはサンゴ礁やたくさんの海洋生物がいました。海洋温度は40℃を超えていたと考えられています。

生物多様性はカンブリア紀からさらに拡大し、特に海洋生物の進化が目覚ましく進みました。

海岸線では、多数の脚を持つ節足動物がゆっくりと陸地へ進出し始めていました。この時代、陸上にはまだ生物は存在していませんでした。

この生物大繁栄は「オルドビス紀の生物大放散事変(GOBE)」とよばれています。

 

全長2mを超える巨大なウミサソリ(節足動物)(下図)がこの時期に登場しました。この強力な捕食者は、当時の海を支配し、小さな生物たちは彼らから逃れるためにさまざまな進化を遂げたと考えられます

このころ、無顎類(むがくるい)(下図)と呼ばれる原始的な魚類が出現しました。文字通り顎(あご)がなく、皮骨で覆われ、泳ぎはヘタクソでした。

大きな目をしたコノドント(下図)は、体長5~50cmで特異な円すい状の歯をもっていました。

無顎類はこの後、顎が発達し軟骨魚類(サメやエイ)や硬骨魚類(一般的な魚類)に進化していきました。

無顎類 コノドント

軟体動物のオウムガイ(下図)はカンブリア紀にあらわれ、オルドビス紀に多様化し全盛期を迎えました。オウムガイはアンモナイトの祖先にあたり、白亜紀の大量絶滅でアンモナイトが絶滅したにも関わらず現在でも生き残っています。

 

オルドビス紀は「三葉虫の大繁栄時代」といわれ、形態も立体的になりトゲをもつようにもなりました。三葉虫(下図)は、最初に視力を持った動物のひとつと考えられています。

カンブリア紀(5億4200万年前)から繫栄し、3億年の間繁栄していました。1万種以上が知られる多様なグループで、化石も多産し「示準化石」に指定されています。

三葉虫

ウミユリ(下図)は、見た目は植物に似ていますが棘皮動物(ウニやヒトデ)です。花のように見える部分は触手で、プランクトンなどを捕まえて食べていました。ウミユリの多くは古生代のうちにほとんど絶滅しましたが、現在も深海にウミユリの仲間が生存しています。

 

<O-S境界 第1回大量絶滅事変>

現在知られている5つの大量絶滅のなかで2番目に大規模なこの出来事は、オルドビス紀とシルル紀の境目となる「O-S境界(Ordovician–Silurian boundary)」で起こりました。

オルドビス紀最終期であるヒルナント期(4億4520万年前から4億4380万年前)にあたります。

2020年、中国、アメリカ、オーストラリアの研究チームは、オルドビス紀末の大量絶滅が4億4310万年前から4億4290万年前までの20万年の間に発生したとの見解を発表しました。

この大量絶滅で、それまで繁栄していた三葉虫は半減し、腕足類(貝に似た生物・シャミセンガイ)、ウミリンゴ、筆石、コノドント、フデイシの大半が絶滅しました。海洋生物全体では49%から60%の属が絶滅し、種レベルでは85%が地球上から姿を消しました。

オルドビス紀の大量絶滅のピークは二段階で進行しました。

第一段階は、ヒルナンシアン期の前期が終わる頃で、温暖気候からごく短い時間のうちに急速に寒冷気候へ移行しました。南極域にあった超大陸ゴンドワナに広大な氷床(氷河)が形成され、世界の海水準は最大で100mも急激に低下して広大な大陸棚海が失われました。43℃ほどだった海洋温度は現代と変わらない23℃前後にまで下がりました。

第二段階は、ヒルナンシアン期の中期で、第一段階の氷河時代は地質学的には短期間で終わり、気候が再び温暖化に転じると、大陸氷床は急速に融解しました。これにより、今度は急激な海水準の上昇が起こり、干上がっていた大陸棚が再び水没しました。

 

<大量絶滅の原因>

大量絶滅の原因はよくわかっていません。それを知る手がかりは大陸の移動によって深く埋もれ散逸してしまったからです。

どの要因も原因と結果の相関関係だったり、複合的に発生した可能性が高いのです。

一般的には火山噴火が主原因だといわれています。

(原因1)ゴンドワナ大陸の移動による気温変動

オルドビス紀末期の気温の乱高下は、ゴンドワナ大陸の移動によるものと考えられています。

南半球に集中していた冷たい海流を遮断するような大陸配置と、南極で冷やされた海流が循環することが繰り返されて、ゴンドワナ大陸の氷河(下図)が増大しました。世界的に海面は数十mも低下しました。全球的な気温の低下は、温暖な環境に適応していた熱帯域の生物にも深刻な寒冷ストレスを与えました。広大な大陸棚が陸地化し、サンゴ類からなる生物礁や、そこを住処としていた三葉虫、腕足類、筆石、コノドントなどが大打撃を受けました。

ところが、大陸移動による活発な火山活動によって寒冷化はすぐに終わってしまったのです。

今度は温室効果で気温が上昇、さらに大気組成の変化で氷河が解け出すと海面が再び上昇しました。温暖で酸素が乏しい海水が広がり、寒冷化に適応した海洋生物は姿を消しました。

海水準の低下と上昇の2回が確認されていますが、海水準変動をもたらした環境の変化と大量絶滅との関係は不明です。

(原因2)火山噴火

大量絶滅は火山噴火による地球寒冷化によるものという説。

「火山の大噴火で、マントルにあった水銀とともに二酸化硫黄ガスが大量に放出されて成層圏で亜硫酸ガスに変化した。この硫酸が浮遊微粒子(エアロゾル)になって太陽光を遮断し、寒冷化して大量絶滅に至った。」というシナリオです。

火山の大噴火が起こると一時的に寒冷化が進み、しかしその後は大量に放出された温室効果ガスにより温暖化が進行します。

2017年に、東北大学大学院などの研究チームにより、「火山噴火による地球寒冷化が原因ではないか。」という研究発表がされました。高温でのみ生成されるコロネン(カルパチア石)(下図)が発見されています。

近年、「オルドビス紀末の大量絶滅に関連したのは、中国の揚子江(長江)流域に厚く堆積した火山灰である。」と指摘されました。これらの火山灰の噴火年代が、オルドビス紀末の4億4400万年前であることがわかったからです。

火山灰にはリンや鉄などの栄養素が多く含まれており、海洋に流れ込むと植物プランクトンの爆発的増殖が引き起こされます。オルドビス紀末に大量の植物プランクトンは、光合成によって大気中の二酸化炭素を吸収し、その結果として地球の気温を急激に低下させました。また、オルドビス紀後期に噴火し火山灰が海に流入して寒冷化を促進させました。残存する火山灰は軽く富士山の体積の10倍は超えており、年間に1㎦を超える火山灰が海に流入したと推測されています。

(原因3)有害金属

「高濃度の鉛、ヒ素、鉄などが、古代の海で繁栄していたプランクトンに似た微生物(珪藻類)(下図)に重度の奇形を生じさせた。」という論文を、フランス、リール大学などの研究チームが学術誌「Nature Communications」に発表しました。海洋の酸素が減少したことにより海底の有害金属が水中に溶け込んだ可能性が指摘されています。リビア砂漠に掘られた深さ2,000mの穴から採掘した化石を分析した結果、この化石からは予想より100倍も多くの奇形の例が見つかり、重金属濃度は最大で予想の10倍に達しました。

有毒金属は食物連鎖の下位の栄養段階にある生物を死に至らしめ、個体数の減少を引き起こし、その結果として食物連鎖の上位に位置する摂食生物の餓死をもたらした可能性があります。

中国とアメリカ合衆国に分布するO-S境界付近の地層から高濃度の水銀が検出されており、大規模な火成活動で水銀が大気中に放出されたと推測されました。

珪藻類

(原因4)ガンマ線バースト

「地球が、6000光年以内に起こった超新星爆発によるガンマ線バースト(下図) の直撃を受けたため。」という説もあります。

大きな恒星が最後を迎えるとき超新星爆発を起こします。そのときに爆発する恒星から光速に近いスピードで強烈なガンマ線が放出されます。これがガンマ線バーストと呼ばれる現象で、宇宙でもっとも強力なエネルギーとされており、何十億光年先までその影響が及ぶほどです。

2005年、「オルドビス紀末の大量絶滅は、地球近辺で起きた超新星爆発によるガンマ線バーストが数十秒間にわたって地球を襲って、地球大気のオゾンの半分が即座に剥ぎ取られ、惑星の光合成に携わる生物を含む地表生物の多くが高レベルの極端紫外線放射を浴びただろう。」という仮説をNASAとカンザス大学の研究者が発表しました。

しかし、このようなガンマ線バーストが地球の近くで起こったという証拠は、今のところありません。

 

<大量絶滅後>

氷床が融解して海水面が上昇すると再び絶滅のピークが訪れましたが、それが安定すると絶滅事変も収束を見せました。

そして次の時代(シルル紀)には節足動物(下図)やサンゴ(下図)が繁栄しました。

全球凍結や大量絶滅などの過酷な環境変化の後には「大適応放散(だいてきおうほうさん)(adaptive radiation)」というものが起きて、生物が生き残るための適応性を増大させるといわれています。適応放散という現象は、単一の先祖が多様なニッチ(生態的地位:空き)に適応して行くことで、それぞれが別の種に分かれていったことによるものと考えられています。一般に大きくニッチが生じるのは何らかの理由で大規模な攪乱を受けた場合であるとされています。

具体的には三畳紀末の大量絶滅で空いた偽鰐類のニッチを恐竜が、白亜紀末の大量絶滅で空いた恐竜のニッチを哺乳類が埋めたのでした。

なおこの大量絶滅によって、生命が進化の方向性を変えることはありませんでした。このとき存在した形態(脊椎動物の祖先も含む)は、数百万年後にほぼ元通りに回復していました。

 

絶滅は原因がどのようなものであれ、生物の進化にとっては非常に大きな影響を与えるもので

あり、一面では「絶滅は進化の原動力である」とも言えます。

 

 

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次回は 第2回「2回目 の大量絶滅(デボン紀)」

 

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(担当B)