『宇宙の歴史』第1回 宇宙創成~ビッグバン | 奈良の鹿たち

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『宇宙の歴史』

第1回

「宇宙創成~インフレーション~ビッグバン」

 

 

宇宙の初期状態を論じる時、宇宙論に量子論が組み合わさった考え方が必要となりました。

 

⦿ 宇宙創成

宇宙は最初、この世の物質をつくる最小の粒々「素粒子」(100京分の1m=10-16)よりも小さかったと考えられています。これからの宇宙創生の話は、なかなか想像の難しい量子的大きさの中での出来事です。

ビッグバンの始まりは宇宙のすべての物質とエネルギーが集まって、非常に高温で高密度の状態でした。このような火の玉の状態から核反応で、すべての元素がつくられたと考えるのが「ビッグバン宇宙モデル(理論)」です。

「ビッグバン宇宙モデル(理論)」によると、物質の生成される前の宇宙は真空でした。素粒子・量子の理論では、真空とは、何もない空間ではなく、エネルギーが生成したり消滅したりするいわば量子論的「無のゆらぎ」ともいうべくダイナミックな空間でした。

ここからインフレーションが始まります。

無のゆらぎの中では、宇宙全体の温度が下がって行く相転移※の段階で、エネルギー状態が移動します。この時エネルギーの高い真空(偽の真空)と低い真空(真の真空)とが混在していました。

※「相転移」:物質の状態が水蒸気から水、水から氷と物質の状態が変わる現象も相転移です。宇宙論では4つの力(電磁気力、強い力、弱い力、重力)の分岐も、宇宙を占める物質の構造変化も相転移といいます。相転移によって、違う状態に遷移するとき、必ずしも全体が同時に次の状態に移るわけではない。空間的に取り残された領域が残ることがあり、その境界を位相欠陥といいます。

  

アインシュタインの重力場の方程式※で、この状態を解くと、エネルギーの差があれば宇宙が膨張するという答えが出てきます。普通の物質空間ならば、体積が膨張すればエネルギー保存の法則でエネルギーの密度が下がるが、真空の場合はそうはならずに一定のままになります。方程式はアインシュタインの宇宙項Λがあるモデルと同じになり、宇宙全体が指数関数的に急膨張を続けることになります。

※「アインシュタイン方程式」: 重力場を記述する場の方程式

Guv +Λguv = kTuv (Λ:宇宙項)

左辺は時空がどのように曲がっているのか(時空の曲率)を表す幾何学量であり、右辺は物質場の分布を表す量です。おおざっぱに言えば、星のような物質またはエネルギーを右辺に代入すれば、その物質の周りの時空がどういう風に曲がっているかを読みとることができる式です。空間の歪みが決まれば、その空間中を運動する物質の運動方程式(測地線方程式)が決まるので、物質分布も変動することになります。(「Wikipedia」より)

 

 

宇宙が急激に、光の速さ以上に膨張すれば、現在我々が観測できるすべての領域が、ひとつの小さな量子的ゆらぎから一気につくられたことになります。また、量子ゆらぎがひとつひとつ急膨張すれば、それぞれが泡のように広がっていくはずです。当然ながら、泡同士が衝突することもあるでしょう。衝突が起これば運動エネルギーが熱エネルギーに転嫁され、その状態がビッグバンの始まりになったと考えることが出来ます。衝突のような激しい状況では、状態は完全に一様になるはずもなく、ゆらぎを持つことが十分に考えられます。

要するに、「インフレーション宇宙モデルinflationary cosmology 」は、1つの小さな量子的なゆらぎが大きい宇宙になった、とするシナリオです。

 

⦿”無”のゆらぎ⇒トンネル⇒インフレーション⇒ビッグバン

 

「”無”から宇宙は誕生した」という仮説は、ビレンキン博士(Alexander Vilenkin)やホーキング博士(Stephen William Hawking)らが唱えたもので、彼らは一般相対性理論と量子論を合わせて考えることで、宇宙が”無”から生まれる可能性があることを示しました。””とは、物質も空間も時間さない状態です。しかし、物理学的には「””=真空とは、全く何もないということではなく、わずかな真空エネルギーのゆらぎが、誕生と消滅を繰り返している状態」ということになります。すなわち、宇宙創成の”無”のゆらぎとは、未知のエネルギーが、無と有の両方の世界を同時にある確率をもって存在している状態を指し量子論の確率的存在になります。そして、その状態から量子学的「トンネル効果Quantum tunneling」で突然パッと宇宙が生まれたと考えられています。

 

ビレンキン博士

「われわれの宇宙は、宇宙の卵がトンネル効果を使って山を抜け、はかない運命の宇宙から急膨張する宇宙に転じて生じたものだ」

 

~虚数時間の無境界で”ゆらぎ”が発生し、トンネル効果により宇宙が生まれた~

 (ホーキング博士「無境界説」 ビレンキン博士「無からの宇宙創生」より)

 

「ビッグバンの前にインフレーションがあり、その前は無の状態だった」

「爆発して10の何十乗分の1秒後に素粒子が出来、100秒後に原子が出来た」

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しかし、このような「インフレーション理論inflationary cosmology」や「ビッグバン理論Big bang theory」は机上の理論であり、証拠の痕跡すらなく観察されてもいないので、仮説に過ぎません。厳密にいえば、どちらもビッグバンそのものに関しては何も語っておらず、「ビッグバンの後に起きたことだけを記述しているだけだ。」という学者もいます。

さらに未解決の問題も提議されるようになりました。

例えば「何故、CMB(宇宙マイクロ波背景放射)は全天で、一様に近い温度分布なのか?」「星が生まれるための「ゆらぎ」はどうやって生まれたのか?」「何故、宇宙には物質だけが存在して反物質は存在しないのか?」「時刻が0のとき、宇宙の密度が無限大の特異点になることを物理的に説明できるのか?」「我々の住む時空は、何故、4次元なのか?」などです。

 

 

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次回は 『宇宙の歴史」第2回「ビッグバン」

 

 

 (担当 P)

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