『宇宙の歴史』第2回 ビッグバン~星の誕生 | 奈良の鹿たち

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『宇宙の歴史』

第2回

「ビッグバン~星や銀河の誕生」

⦿ビッグバンの「直後の3分間」

インフレーション時代が終わり、ビッグバン直後の約3分間。それは,すべての物質の素が生み出された時間でもあった。宇宙論と量子論が組み合わさった考え方が必要となった。

 

          (宇宙の年齢)

そして10-34 秒後、インフレーション膨張は終了し、ビッグバンが始まります。

ビッグバンとは量子サイズだった宇宙が、インフレーションで米粒ほどの大きさになり、さらに銀河サイズにまで1秒もかからないうちに拡大した出来事です。

 

①素粒子に質量が生まれる

10-38  ⇒10-11 秒後の間で温度が1029  ⇒1015度にまで下がった頃、ビッグバン直後の超高温の中では、素粒子はすべて光速で飛んでいましたが、膨張で宇宙が冷えてくると真空の性質が変わり(相転移)、その中に満ちていたヒッグス粒子という素粒子が、他の素粒子に抵抗を及ぼすようになり、素粒子に質量が生じました。

 

           (ヒッグス粒子)

②4つの力が分岐する

10-38  ⇒10-11 秒後の間で温度が1029  ⇒ 1015(1000兆)度にまで下がった頃、4つの基本相互作用が分離しました。すなわち、元々は一つに統一されていた力が、現在知られている大統一理論の4つの力(重力、強い力、弱い力、電磁気力)に分かれたのです。

 

 

③物質・反物質が生じ、消滅する

そして10-33 秒後、インフレーション膨張は終了しました。

10-4 秒後、ここまでの過程で物質と反物質のつりあいに小さなズレが生じました。

元々は、物質と反物質は同等に存在したはずですが、CP 対称性の破れ(反物質の寿命がわずかに短かった)により、ほんのわずか物質の方が反物質より多くなり、結局現在の宇宙を物質の世界へと導いたのです。

 

④元素が誕生する

10-6 秒後、素粒子のクォークが集まって陽子と中性子が結合して水素原子核がつくられます。

また10秒後には、陽子と中性子が対消滅して光が誕生します。

100~180秒(3分)後、温度109度(10 億度)になると、重水素Dが分解されないで残ることができるようになるので、それを種とした核融合反応が進み始め、ヘリウムHe、リチウムLi、ベリリウムBeと言った軽い原子核がつぎつぎと合成されます。このとき生まれた原子核は、質量では水素75%,ヘリウム25%でしたが、原子の総数では92%が水素、残り8 %がヘリウムでした。(元素誕生)

宇宙が膨張によって温度を下げ、膨張速度も緩やかになると、これらの物質は重力によってだんだん凝縮を始める。

  

 

⑤ビッグバンの残照 宇宙マイクロ波背景放射(CMB)が発生する

1964年に宇宙背景放射が偶然に雑音として発見されました。

それからの研究で、宇宙背景放射は、その最中のものではないが、ビッグバン発生の約38万年後、宇宙の温度が下がり、水素イオンが電子と再結合して光が直進できるようになった時代(宇宙の晴れ上がり)の残照が光(電磁波)で観測できるようになった。

ビッグバン直後の宇宙は、素粒子が縦横無尽に飛び交うプラズマ状態だったと考えられ、光子も他の素粒子とぶつかり合い直進できない状態だった。しかしその後、宇宙が膨張し、温度が下がるにつれ、だんだんと素粒子自身の運動も収まり、ビッグバン後、38万年たったころから光は直進できるようになった。それが宇宙マイクロ波背景放射として観測できたことになる。

その後、米国航空宇宙局(NASA)のCOBE衛星(1989年~1996年)、WMAP衛星(2001年~2010年)や欧州宇宙機関のPlanck衛星(2009年~2013年)の観測で、背景放射はより精密なデータをもたらし、背景放射は極めて一様だが10万分の1程度の温度の「むら(ゆらぎ)」があることが分かりました。宇宙が膨張するに従って背景放射の光子は赤方偏移を受け、宇宙のスケール長に比例して波長が延びマイクロ波となり放射は冷えてきました。当時の宇宙の温度は約3000K(ケルビン1K=-272.15度)でしたが、宇宙の膨張によって冷え、現在は1/1100の2.7K(=マイナス270度)になりました。

ビッグバンという状態があったという重要な証拠であり「ビッグバン宇宙論」が確立しました。

  

最新のPlanck衛星で分かったおもな宇宙論パラメーター(2015年)

・CMBの温度は2.72548±0.00057K

・CMBは、宇宙誕生後37万7700年の光である

・宇宙の年齢は137.99億年±2100万年である

・ハッブル定数はH0=67.74±0.46(km/s/Mpc)

・宇宙構成要素 ダークエネルギー69.11%、ダークマター25.89%、バリオン(通常物質)4.86%

 

宇宙の暗黒時代が始まる

宇宙の晴れ上がりのとき(宇宙年齢37万年)から、宇宙で最初の天体が誕生する時期(宇宙の再電離が始まるまで)までの間の宇宙にあるガスや暗黒物質が漂い、わずかにビッグバンの名残の電磁波が行きかう文字通り暗黒の時代をいう。星や銀河などの光を放つ天体は存在していない時代である。宇宙の暗黒時代は、宇宙で最初の天体であるファーストスター(最近の研究でビッグバンから1億8千万年後)や銀河(ビッグバンから数億年後)の出現によって終焉となる。

 

星や銀河が誕生する

宇宙が膨張によって温度を下げ、膨張速度も緩やかになると、水素・ヘリウムは重力によってだんだん凝縮を始める。そして1~2億年後に最初の星ファーストスターが誕生したのです。

こうした恒星のほとんどは爆発し、超新星となった。そのときの衝撃波によって、質量の重い元素が宇宙全体に行き渡った。

ビッグバンから数億年後には銀河も誕生したと考えられます。

銀河の誕生説は確定していませんが、一つの説は、ビッグバンで宇宙空間にまき散らされた元素を素材として、多くの星雲がつくられました。重力によって、これら星雲の濃い部分に中心となる恒星が出現しました。最初は比較的少数の恒星からなる原始銀河が構成されたと思われます。原始銀河どうしの重力作用からさらに大きな銀河へと成長しました。まず銀河が生まれて、その中で密度の高いところで銀河群や銀河団が出来たというボトムアップ説です。もう一つの説は、まず大規模構造となる巨大なガスの塊が出来、銀河団ー銀河群ー銀河と順に小さい構造が生まれたというトップダウン説である。

 

<宇宙初期には既にブラックホールが存在した>

宇宙誕生直後は、高密度で密度の偏在がありました。その密度の高いところが原始ブラックホールと言われるものになりました。初期原始ブラックホールは素粒子ほどで極めて小さく、ほとんどが蒸発しました。その後(宇宙誕生から10秒後)には、太陽100万個分の質量にまで急成長しました。

最近の研究で、ビッグバンから6億9千万年後には、太陽の8億倍の質量をもつ原始超大質量ブラックホールが100個ほど存在していたといわれています。

宇宙は138億年前に誕生しましたが、宇宙の晴れ上がりからファーストスターが誕生するまでの2.5億年~3.5憶年の宇宙の夜明けが訪れるまで、恒星などはなく、その間いわゆる宇宙の暗黒時代が続きました。

では、どのようにして宇宙創造から数億年という短期間で、これほどの巨大ブラックホールが100個もつくられたのでしょうか?

研究では、初期宇宙はガスの濃度が高かったので、それらガス雲が集まって星や銀河を短い期間でつくり上げ、その後、超新星爆発を連発して中間質量のブラックホールが出来、それらが合体して超巨大ブラックホールをつくりあげたのではないか、と言われていますが、そうとは言い切れない理論的問題点も多いのです。

 

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次回は 『宇宙の歴史」第3回「星や銀河の一生」

 

 (担当 P)

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