『相対性理論』 第9回 一般相対性理論で起こる現象① | 奈良の鹿たち

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『相対性理論』

第9回

 < 一般相対性理論で起こる現象①>

 

 

科学の進歩で観測や実験が進むと、ニュートン力学では矛盾が生じたり説明できないということが出てきました。一般相対性理論によって、様々な現象について理論的に説明がつくようになりました。

 

1.重力レンズ効果

「重力は空間を曲げる」という一般相対性理論から、重い星の近くでは空間が曲がって直進する光でさえも曲げられます。そのため、恒星や銀河などが発する光が、途中にある天体などの重力によって曲げられます。

重力レンズとは、その結果として複数の経路を通過する光が集まるために凸レンズ効果で明るく見えたりする現象のことです。光源と重力源との位置関係によっては、複数の像が見えたり、弓状に変形した像が見えたりします。

●重力レンズの原理(凸レンズ効果)

●重力レンズ効果の天体現象

 

皆既日食で太陽の周りの星の位置がずれることを観測で証明した>

通常の星空の写真と比べて位置がズレていたということは「太陽の重力によって星の見かけの位置がズレた」ということになり、「相対性理論は正しい」ことが立証できました。

「重力が空間(光)を曲げる」に関しては、実際に太陽の周囲で光が曲がる現象が観測されています。

 太陽はかなりの質量があるので、その周りでは、わずかに空間がゆがんでいるはずです。 もし一般相対性理論が正しければ、太陽の向こう側にある星から来る光は、太陽の重力によってゆがめられ、 実際の星の位置とは違う位置に、星が見えるはずです。 普段は太陽が明るくて観測できないが、日食の時なら、観測は可能です。そして、実際に観測した結果、星の位置がわずかにずれている事が分かりました。 本当にあるべき位置よりも、若干、太陽から遠い場所に、その星が観測できました。この時、本当に一般相対性理論の計算通りに光がゆがんでいました。(イギリスの天文学者アーサー・エディントン)

物理学の世界で有名だったアインシュタインを、天文分野でも世界的に有名な存在にしました。

 

2.天体運動の歪み

「重力は空間を曲げる」という一般相対性理論から、質量をもった物体があると、その周囲の空間は歪みが生じます。直線運動をしている物体にとって、時空が歪んでいると「直線」の定義自身が物体の方向に向かって曲がることになります。

 

<水星の近日点移動>

水星の近日点(軌道上で最も太陽に近づく位置)は時間の経過とともに移動することがわかっていますが、その要因の大部分は他の惑星による重力で、2番目に大きな影響は太陽の重力による空間の歪みが原因であることがアインシュタイン方程式(重力場の方程式)で分かりました。

 

3.重力波

時空の歪み(重力場)の変動が伝播する現象。

アインシュタインは、電磁波と同じように重力も波として伝わることをアインシュタイン方程式(重力場の方程式)から解析しました。原理的には、質量のある物体が加速度運動をすれば発生するのだが、太陽程度の天体が光速に匹敵するほどの速さで回転しなければ、重力波は観測可能にはならない。しかも、波の振幅は波源からの距離に比例して減少するので、天体スケールのものでも観測は非常に困難になります。弱い重力波の伝播速度は光速である。アインシュタインによる予測の発表から100年目の2015年に、アメリカの重力波観測装置LIGO(ライゴ)により直接観測されました。

 

<LIGOによる重力波検出>

アメリカの西側と東側に建設された一辺が4kmのL字型の巨大な重力波観測装置

 

2015年9月14日にLIGO(ライゴ)が捉えた重力波。

地球から13億光年先の太陽質量の36倍と29倍の質量のブラックホールが合体したことで重力波が発生しました。その後、中性子星どうしの合体で生じた重力波も検出されました。

4.膨張宇宙

空間が一様な物質でみたされていると仮定すると、一般相対性理論の式はその時空が膨張あるいは収縮するような解となることを示します。これは、宇宙全体が膨張あるいは収縮することを意味しています。アインシュタインを含め、当時の多くの学者は,宇宙は未来永劫不変のもの、と考えていました。ハッブルやルメートルによって遠方の銀河が遠ざかっていくこと(宇宙膨張)が発見されるのは、1920 年代の終わりです。実際に宇宙膨張が発見されるまで、アインシュタインは、静的な宇宙ができるように自身の方程式に宇宙項と呼ぶ修正項を加えて解決しようとしていました。

<ハッブルの法則>

当初、アインシュタインは宇宙が時間的に変化しない静的なものであるという仮定を立てていたが、後年、学問上の「最大の失敗」だったと言っていました。

「宇宙は膨張している」ことを観測的に示したのがアメリカのハッブルです。彼は 1928年、遠方の銀河までの距離の測定から、「遠方の銀河ほど速く遠ざかっている」ことを発見した。

これがハッブルの法則です。

 

 

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 次回は 第10回(最終回)「一般相対性理論で起こる現象②」

 

 

(担当P)

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