『量子』第1回
「量子とは?」
(Quantum)
量子論(量子力学)は相対性理論とならぶ現代物理学の土台です
1.量子の仲間
物質を作っている原子そのものや、原子を形作っているさらに小さい電子・中性子・陽子といったものが代表選手。 光の粒子である光子やクォーク、ニュートリノ、ミューオンなどといった素粒子も量子に含まれます。
量子の世界は、原子や分子といったナノサイズ(1nm =1mの10億分の1= 10-9m)あるいはそれよりも小さな世界のことをいいます。(電子:0.1nm、DNA:2nm、分子:10nm)
2.量子の性質
● 「波と粒子の二面性」
「波」の性質と同時に「粒(子)」の性質をも持っている。
◉ トーマス・ヤングThomas Young(イギリス)(1807年)
:二重スリットで光は波である
◉ マックス・プランクMax Planck(ドイツ)(1900年)
: 電磁波の粒子(量子)はとびとびのエネルギーである。 「量子仮説」
◉ アインシュタインAlbert Einstein(ドイツ・アメリカ)(1905年)
: 光子は波と粒の二面性をもつ。「量子仮説」
◉ ド・ブロイDuc de Broglie(フランス)(1923年)
: 光だけでなく電子も二面性がある
● 「重ね合わせ(状態の共存)」
一つの物が同時に複数の状態をとることができということです。
すなわち、同時に複数の場所に存在することができるということです。
粒子として現れる確率があります。(発見確率)
◉ シュレディンガーRudolf Schrödinger(オーストリア)(1926年)
: 電子の波を数式化「シュレディンガー方程式」
◉ ボルンMax Born(ドイツ・イギリス) (1926年)
: 電子の発見確率を始めて提唱
◉ ハイゼンベルクWerner Heisenberg(ドイツ)(1927年)
: 電子の位置と運動量を同時に決めることは出来ない。「不確定性原理」
◉ ボーアNiels Bahr(デンマーク)(1927年)
:粒子の波は発見確率である。 (コペンハーゲン解釈)
● 「量子もつれ」quanum enanglement
量子を二つに分裂させると、双子の量子が生まれます。
量子にはもともとスピンとよばれる回転運動が備わっています。双子の量子は、片方が上向き回転ならばもう片方は下向き回転をするという特性があります。 これを「量子もつれ」といいます。双子の量子は、片方の粒子がどこに位置していても、片方に何らかの変化があれば、どんな連鎖性もなくても同時に他方の粒子に物理的影響が及ぶのです。そこには何の媒体もなく伝達の痕跡もありません。
粒子の情報をもう一方の粒子に送ることを量子テレポーテーションといいます。
◉ アインシュタインEinstein・ポドルスキーPodolsky・ローゼンRosen
: EPRパラドックス(1935年)
<量子論での不思議>
ここでまず確認しなければならないのは、現象が起きているのは想像もつかないナノサイズnm(1nm =1mの10億分の1= 10-9m)以下の世界での論理であることです。非常に微細な領域で発生する現象であるため、我々が直接知覚することはできません。また、古典力学では説明することができず、量子力学により取り扱う必要があります。
もう一つは、量子論の現象で波の状態や重ね合わせの状態というのは、「現象」の出来事なのです。「物質」の出来事ではないので、「波と粒子の二面性」や「重ね合わせ」や「量子もつれ」などのことが起きる可能性があるのです。
量子論を語る時に、我々の世界の出来事や物質をイメージして「有る無い」「分かれる」「すり抜ける」「影響を及ぼす」などといった言葉や図を使うと、論理を歪める原因となります。しかし、今のところ他に表現方法がないので、やむを得ずマクロ的物質的表示をしています。
量子論では、われわれが今まで当たり前と思っていたことや、「えっ」と驚くことが出てきます。
・「電子は原子核の周囲をまわっていない」
一般的な原子の絵では、電子が原子核の周囲をまわっているイメージですが、実際は”電子の雲”が取り巻いているといった方が正しいのです。すなわち、1個の粒子はぼんやりとした雲のように同時にいろいろな場所に存在しているのです。
・「量子は壁をすり抜けることができる」
電子は壁をすり抜けて、壁の反対側に現れることがあります。
「トンネル効果tunneling effect」といいます。
・「量子は相対性理論を超える」
量子にはもともと自転運動する性質があり、一つの量子から生まれた双子(ペアリング)の量子が媒介もなしに同期して、片方は上回転もう片方は下回転するというような状態を起こします。
「量子もつれ エンタングルメント Entanglement」とか「量子のからみ合い」とか呼ばれます。量子もつれのある双子の量子は、観測した瞬間、お互いどんなに離れていても(何光年離れていても)、量子が何であっても(電子と中性子)、片方に何らかの変化が生じれば対象に触れずにどんな連鎖もなく、瞬時に他方に物理的影響をおよぼすというものです。
(距離や時間の観念は存在しない。相対性理論の枠外の現象)
・「真空とは空っぽの変化のない空間ではない」
一般的には真空は何もない変化のない無の空間であると考えられていますが、量子論では真空中では物質が生まれたり消えたりしていて何らかのエネルギーが存在しているのです。
・「宇宙は「無」から誕生した」
無とは物質・空間がない状態ですが、量子論では真空のエネルギー(無のゆらぎ)とトンネル効果でビッグバン宇宙が生まれたという仮説があります。
・「宇宙は多数ある」
量子論を進めていくと、宇宙は並行していたり泡のようにたくさんあって、われわれの宇宙はその一つに過ぎないという仮説にいたります。
マルチバースとよばれています。
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次回は 第2回「量子の振る舞い①」
(担当 P)
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